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第五話 蒼視点

 ──────入学式が終わり緊張が解けたのか、みんな携帯を操作したり、近くの人と話したりと各々やりたい事をやっている。


 そんな中私は、席に着いてる二階堂くんの後ろで仁王立ちをして、腕を組んで見下ろしていた。


 なんでって?二階堂くんが入学生代表として挨拶文を読み上げていたからだ。


 もしかすると二階堂くんって、頭良いのと首を傾げ疑問符を浮かべる。


 んーーーっと悩ましげに、更に首を傾げて二階堂くんを眺めていると、何やら嬉しそうに携帯を操作している。


 なになに?なんかエッチはものでも見てるんじゃないの?と思い覗き込んでみた。

 

 携帯の画面に数え切れない漫画のタイトルがならんでいる♪それも私が読みたかった漫画まである!


 「あぁぁぁぁ!この漫画読みたかったやつ!なんで持ってるの見たいみたい」


 テンションが爆上がり、抑えきれず声が漏れ出てしまう。

 

 その瞬間、私の瞳は子供が宝物を見つけた時のように輝き、今すぐ読みたいと欲求に駆られてしまったのだ。


 「これも、これも!私が読みたかったやついっぱいあるよ!二階堂くんなんでこんなにもってるのー?」


 二階堂くんの背中越しに携帯の画面を指さした。

 

 もうこの感情は抑えられない!抑えるつもりなんて毛頭ないけど。


 「なんでと言われましても、僕漫画大好きなんです⋯⋯」


 「まじ?私も大好き」


 二階堂くんはそう言って、体を後ろに向けようとしてきた。


 ちゃーーんすッ!私はその隙をついて二階堂くんの手元にあった携帯を抜き取り即座に席に着いた。


 もう無理、マジ無理!どれから読もうかなぁ?


 嬉しくてたまらなくなり、鼻歌混じりに携帯を操作する。

 

 「ふんふふーんっ」


 「すいません、それ僕の携帯です」

 

 知ってるー!ん?これって、アカウントIDとパス知ってれば私の携帯でも読めるんじゃね?そう思いニターッと顔が破顔する。


 「二階堂くん、パス教えて」

 

 「なにのですか?」

 

 「WEBコミックの」

 

 「なんでパス教えないといけないんですか?」

 

 「いいから早くぅ」

 

 もう焦らさないでよ!そう思って私は上目遣いでお強請りをした。


 「✕✕✕✕ ✕✕✕✕です⋯⋯」

 

 「りょ!」


 よっしゃーー!これで家でも読める!たまらなく嬉しくなり、目にもとまらない速さでパスを入力して、自分の携帯と二階堂くんの携帯を左右にそれぞれ持って突き出した。


 「ねぇねぇ、WEBコミック共有しよ」

 

 「いや、それもう共有してますよね?」


 あ、バレた?


 「クーックックッ」

 

 「横暴です」


 横暴って⋯⋯少し?ほんのちょっぴり悪い事しちゃったかな?そう思って、ジュースでも奢ってやるか?と考え声をかけた。

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