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第四話 レベルアップでトゥンクトゥンク

 入学式も無事に終わり、ホッと胸を撫で下ろし携帯を操作していると。


 WEBコミックから一通通知が届き、気になって開いてみる。漫画の新刊が発売される通知だった。自然と笑みが溢れてしまう、ずっと読みたくて楽しみにしてたんだよ!待ってましたと興奮を抑えられず本棚を開いた。


 「あぁぁぁぁ!この漫画読みたかったやつ!なんで持ってるの見たいみたい」


 背後から突然、僕よりも興奮気味の声が聞こえ驚愕してしまう。


 「これも、これも!私が読みたかったやついっぱいあるよ!二階堂くんなんでこんなにもってるのー?」

 

 その問いに僕は戸惑いながら答える。


 「なんでと言われましても、僕漫画大好きなんです⋯⋯」

 

 「まじ?私も大好き」


 後ろから覗き見なんて、趣味悪く無いかと思いながら振り向くと、その瞬間僕の手から携帯は忽然と姿を消していた。


 「ふんふふーんっ」


 隣の席を見ると、僕の携帯を上機嫌で鼻歌交じりに操作する立花さんと目が合う。


 「すいません、それ僕の携帯です」


 立花さんは目をキラキラ輝かせながら僕を見ている。


 「二階堂くん、パス教えて」


 「なにのですか?」


 「WEBコミックの」


 この人は言ったい何を言っているんだと疑問符が浮かんだ。


 「なんでパス教えないといけないんですか?」


 「いいから早くぅ」

 

 頬を少し赤く染め上目遣いで訴えてきた。なんだろうこの逆らう事のできない表情は?僕はついつい小声でパスを言い漏らしてしまう。


 「✕✕✕✕ ✕✕✕✕です⋯⋯」

 「りょ!」


 立花さんは、物凄い速さでパスを入力し、次の瞬間僕の携帯と自分の携帯を左右の手に持ち、僕の前に突き出してきた。


 「ねぇねぇ、WEBコミック共有しよ」


 「いや、それもう共有してますよね?」


 僕はそう一言伝えて自分の携帯を取り返した。


 「クーックックッ」


 「横暴です」


 立花さんは、悪代官が小判入りのお菓子箱を開けた時の様な高笑いをしている。

 

 抗うことのできない状況から僕は、最悪パスを変えればいいかと、自分なりの最適解を出した次の瞬間。


 『テレテレッテッテッテー』


 次から次とへとなんだ?

 てかこの効果音あれだよね?絶対に使っちゃいけないレベル上がった時の音だよね?


 僕は咄嗟にディスプレイに視線を移す。

 スキルとステータスが点滅している、今回は間髪入れずステータスを押した。


ーーーーーー

ステータス一覧


レベル2


HP 23

MP 14

筋力 7

知力 82

魅力 9

俊敏 6


恋愛経験値 5 次のLvまで10


ーーーーーー


 「ふうぅーッ」


 僕は深い溜息をついて、机の上で頭を抱えた。

 息つく間もなく、問題が押し寄せてくるこの現状に嫌気が差してきた。


 一先ず整理しよう、このゲーム?ゲームで合ってるか分からないけど、レベルが上がるようだ。


 通常のゲームならダンジョンに潜りモンスターを倒す、もしくは、フィールド上でエンカしたモンスターを倒し経験値を得てレベルが上がっていく、大抵の人が知っているであろう話だ。


 でだ、恋愛経験値ってなんだ?僕は眉間に皺を寄せそれを摘み考えた。


 一般的に考えれば、彼氏彼女が日々のデートなどで、成功や失敗重ねて得られるものだと思うが、僕と立花さんはまずそういう関係では無い。


 では何故経験値が貰えてレベルが上がったか?これに関しては立花さんと特定の行動があったからと考えるのが妥当な気がする。


 次に、まだ点滅してるスキル⋯⋯押してみるか。

 

 僕は覚悟を決めて押してみた。


ーーーーーー


使用できるスキル

無し


覚えられるスキル


トゥンクトゥンク

スキンシップ(小)

壁ドンッ

番号の交換

顎クイッ

デートに誘う


ーーーーーー


 「ふうぅーッ」


 僕は怪訝な表情でディスプレイを眺めていた。

 

 スキルとは、冒険を有利に進めたり、戦闘を有利にする為のものと思っていたが、ここに羅列されているものは、そのどちらにも当てはまらないのではないかと僕は疑問符を浮かべた。


 そもそも、番号の交換なんて直接本人に聞けばいいことだし、デートだって直接誘えばいいと思う。


 ん?まさか?僕はここで一つの疑念を抱いた。

 直接誘えないように制限か何かかけられているのか?でもそれを確認する手段が無い、立花さんとは友達でもなんでもないからだ。


 それより気になっているのはこのトゥンクトゥンクだトゥンクトゥンクってなんだ?気付いたら僕は無意識に腕を伸ばしていた。


ーーーーーー


使用できるスキル

トゥンクトゥンク


ーーーーーー


 

 うわぁぁぁっ、間違えて覚えちゃった!僕は一瞬取り乱して、腕を振り回してしまった。


 「あっ」


 手が間違いなくトゥンクトゥンクに触れた。焦って机に突っ伏し横目で立花さんを見ると。


 変化は特段無いように見える⋯⋯あれっ?立花さんの顔と耳が徐々に紅く染まっていく、体をモジモジと捩らせて、両手を太腿と太腿の間に挟み込み始めた。


 その妖艶な仕草が僕の目を釘付けにする。


 いやこれは道徳的にだめでしょ、と僕は顔を左右にブンブンっと振り、自分を戒めてスキルの解除方法が無いかとディスプレイに視線を戻した。


 解除方法は見当たらなかった。

 だが、スキルの下に効果時間残り二秒と見えあと少しで効果が消えると安堵し胸を撫で下ろして立花さんに視線を移した。


 よ、よかった!まだ俯いているけど、顔と体は普通に戻っている。


 そして僕は決意をした。

 二度とこのスキルは使わない、封印しようと⋯⋯

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