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第三話 立花 蒼(たちばな あおい)視点

 わかっている事は運命値とやらが一定数ある男女が出逢うとホログラムディスプレイが現れてLOVE♡GAMEが始まる。


 テレビのニュースを私(立花 蒼(たちばな あおい))は食い入るように見ていた。


 難しい事は全然わからないけど⋯⋯なんか面白そうじゃん?誰かに出逢えばいいのかな?ディスプレイ現れないかなぁ?などと軽率に考えを巡らせていた。


 「あおい〜がっこうは〜?」

 

 「⋯⋯うっそ、もうこんな時間じゃん、ヤッバ」

 

 時計を見ると、全力で走っても遅刻してしまいそうな時間を指していた。


 急いで立ち上がり玄関に向かい、靴を履き替え、勢いよく扉を開けた。


 「いってきま〜す」


 「行ってらっしゃい」


 もう絶対に遅刻だよね?と想いつつ桜並木のある通学路を走っていた。


 暖かい風が吹き桜が舞う、ひらひらと舞った桜が私の周りを囲むと、まるで劇場のワンシーンみたいに思えて、ウキウキと心が躍り顔が自然と綻んでしまう。


 そんな桜並木を見上げながら走っていると『ドンッ』と衝撃が走り一瞬目の前が暗くなった。


 「いったぁぁぁぁぁぁぁい」

 

 「すいません、完全に不注意です」


 気付くと尻もちを着いていた。

 別に怪我は無いみたいだし大丈夫かなと腰を擦りながら声の主の方を見上げると。


 なにこれ?右目前方にホログラムディスプレイが浮かび上がっていた。


 これ今朝のニュースで言ってたやつだよね?自然と心臓の鼓動が速くなっていくのがわかった。


 運命値一覧が点滅してるけど、お、押していいよね?と右手を伸ばそうとした瞬間、目の前の人が心配そうにこちらを覗き込んで、右手を差し出してきたので、驚き視線が彼へと移った。


 「大丈夫ですか?お怪我は無いですか?」

 

 「大丈夫、こっちも不注意だったごめんね」


 そ、それどころじゃないんだけどー!と思い、ディスプレイに伸ばそうとした手で、差し出してくれた手を静止させた。

 

 「怪我とか無くて良かったです。すいません急ぐので失礼します」

 

 「うん、こっちこそごめんね、バイバイッ」


 一瞬の出来事でまだ頭が整理できてないけど運命値一覧押しちゃお♪と微笑を浮かべ押してみると。



ーーーーーー

二階堂 景 運命値 100



ーーーーーー

 

 「う、運命値ひゃ、100〜?」


 心臓が跳ね上がった、100?100ってMAX?カップルでゲームセンターに行って相性占いしたら結果100みたいな?遺伝子的にバッチリって事?占い師に占ってもらった結果今すぐ結婚しなさい的な?


 【奇跡的相性】て事なの?ちょっと待って!ヤバ、めちゃくちゃヤバ!冷静にヤッバ!


 ふと我に返って立ち上がり乱れた髪と制服を整え、追いかけなくちゃと思って、前を向き走り出した。


 そもそも制服はうちの高校のやつだったはずだし、走れば追いつけるはず、そう思って全力で走る。見つけた!背中が見えた。


 今まさに校門を通り過ぎる辺りに彼はいた。こんなに全力で走ったのはいつ振りだろうか?ちょっと待って、追いついてなんて声かけるの?


 少し走るスピードを落として、距離を取る事にし俯き考えた。目と鼻の先に奇跡的相性がいるのに気の利いた台詞が思い付かない。


 そんな事をぼんやり考えながら、昇降口に入ると彼は靴を履き替えている所だった。


 私も一拍置いて、靴を履き替え彼の後ろを付いて行った⋯⋯ん?え?1-A組?同じクラス?奇跡的相性!?


 扉を開けようとしている少し後ろで、顎に手を当て彼を観察した。

 身長大きいなぁ、何センチあるんだろ?眼鏡に前髪掛かってるけど前見えてるのかな?


 『ガラッ』

 

 「入学早々仲睦まじく遅刻とはいい度胸だな?」


 (いやぁ、仲睦まじくだなんて、私まだ彼の事詳しく知らないんですよぉ〜)


 少し照れて頬を掻いていたら、彼が振り向いてきた。ヤバ!どうしよう!


 「さっきはごめんね」


 咄嗟に謝ってしまった。

 

 「さっきですか?」


 さっきだよ、さっき会ったじゃん?


 「曲り角でぶつかったじゃん?覚えてないの?」


 あぁ、これ覚えてないやつだ。彼の顔に少し曇りが見える。


 「すいませんでした、本当に怪我はありませんでしたか?」

 

 まじありえねぇ〜忘れんなよ!運命値100だよ?忘れられちゃ困るんだけど。


 「怪我は無いよ、てか覚えてないのかよ!」

 

 「し、失礼しました」


 「そこの二人喋ってないで早く席に着きなさい。立花さんは窓際一番後ろ、その隣が二階堂さんね」


 「「まじ?」」


 奇跡的相性!席も隣とかありえんくない?もう無理、まじ無理♡ハァハァハァ落ち着け私、一旦席に着こう。


 席に着き頬杖を付いて外を眺めた。

 そもそも冷静に考えたら、運命値が100だからって必ずしも付き合うって決まったわけじゃないじゃん?


 「立花 蒼?100?」


 ビクッ、微かに聞こえた声に反応しちゃった。バレてないよね?てか今運命値見たの?なんかめちゃくちゃハズいんだけど⋯⋯背中に一筋の汗が流れたのがわかった。

 

 「全員廊下に並びなさい、体育館に行きますよ」


 入学式が始まるのか長谷部先生が全員廊下に並ぶようにと促してきた。


 うーん、難しい事考えてもわからないし同じクラスで席が隣なら何かしらキッカケはあるでしょー!と軽率に考えながら式に向かう事にした。

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