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第二十一話 勉強ってなに?

 立花さんの姿が見えた瞬間、日下部君は「またな」と言って一目散に去って行ってしまった。


 僕は控えめに右手を上げながら、日下部君を見送り、視線を立花さんへと移して、すぐさま身構えた。


 またいつも通りの挨拶と言う名の、攻撃がくると思ったのだが。(あ、あれ?何もこない?)


 僕は警戒を解いて立花さんを見ると、明らかに様子が変?まるでゾンビみたいな歩き方をしている。


 それに体中から、悲愴感って文字と一緒に黒いもやが漂い溢れ出ている。


 僕は見て見ぬふりをした。


 「ねぇ二階堂くん?」

 

 「は、はひ!?」


 恐る恐る振り返ると、腕組みしながら仁王立ちしている立花さんがいた。


 「あなたの事が大好きな女の子が、ゾンビみたいな歩き方をしながら、悲愴感を漂わせて黒い靄を出しているのに、声一つかけないってありえなくない?」

 

 「は、はぁ〜(わざとやってたんだ)」


 力ない返事に立花さんは深い溜息をつく。


 「まぁいいわ、で?」

 

 「はっ?」


 待ってくれまじでわからない、何をご所望ですか?


 「察しなさい」

 

 「いや無理です」


 立花さんは体を微かに震わせてから、僕を指さして、「勉強って何?」と尋ねてきた。

 

 「勉強とは、知識を習得するだけでなく、未知の課題を解決し、自己成長の機会を得る行為です」そう僕が答えると、立花さんは『ツカツカ』と歩き始め自分の席に着いた。


 「そういうことじゃない、私に勉強を教えなさい」

 

 「え、普通に嫌です(嫌な予感しかしない)」


 そう言うと立花さんは『ブハッ』と吹き出し笑いながら話を続けた。


 「今日から二階堂くんの家通うから、勉強会よ」

 

 「僕の話聞いてました?」


 「クーックックッ」

 

 「横暴です」


 難を逃れようと必死に考えたが、たぶん何を言っても無駄だろう、と思い諦めて肩を落とした。


 「じゃ、学校終わったら二階堂くんの家に集合ね、行く前にコンビニでお菓子いっぱい買って行くけど、何か欲しい物ある?」

 

 「ホームパーティーする訳じゃありませんよね?」そう僕が訊くと、立花さんは大きく頷き、目を輝かせて僕を見る。


 「赤点回避する為の勉強よ」

 

 「え?」


 赤点回避と聞いて目が点になってしまった。そもそも立花さんはどれくらい勉強ができるのだろうか?と思い簡単な問題を出してみる。


 「立花さん、江戸幕府を開いたのは誰ですか?」

 

 「あ、うん、さ、坂田◯時?」


 それを訊いた瞬間、『サーッ』と血の気が引いて行くのがわかった。そ、それ銀◯だよね?


 「い、因数分解って知ってますか?」

 

 「ごめ〜ん、私科学は全然わからないんだ」立花さんがそう言って、首を傾げて、自分の頭に『コテッ』と拳を当てる。


 いったい何を分解したのだろうか?僕は掌で顔を覆い、項垂れながら真剣に考えた。これどうすればいいの?と。


 「二階堂くん、勉強会めちゃくちゃ楽しみだねー」

 

 「は、はい⋯⋯」

 

 その後、どうやってテスト範囲を立花さんに教えようかと頭を悩ませていると、気付いた時には全ての授業が終わっていた。

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