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第十七話 二階堂景【小六】

 時は小学六年生、二学期の蒸し暑い夏まで遡る。今では考えられないが、唯一できた勉強のおかげで、クラスの中心的存在⋯⋯とまではいかないけれど、その頃の僕には友達がそこそこいた。順風満帆な小学生ライフを満喫していたと思う。

 

 小学生なのに満喫するってのはおかしいかもしれないが、毎朝幼馴染の朱里が迎えに来てくれたりと本当に楽しい日々を謳歌していたんだ。


 そんなある日、僕の人生を変える、思い出すと吐き気がするような出来事が起きた。いつものように朱里が迎えに来てくれて、学校までの通学路を他愛もない話で盛り上がり、あっと言う間に昇降口に到着する。


 上履きに履き替え、二人で教室に入るとクラスメイトから『おはよ〜』と声をかけられ、僕達もそれに挨拶を返しそれぞれの席に座る。


 教室のそこかしこから、話し声や笑い声が聞こえてくる中、熱視線を感じその方向を見ると視線が交わる。


 あれは確か朱里の親友の────



◆◇◆◇◆◇



 「ねぇねぇ朱里、二階堂君と付き合ってるの?」


 席に着くと同時に親友【雪菜】の放った言葉に心臓が飛び跳ねる。


 「え、なに急に?びっくりしたー、付き合ってないよどうして?」


 雪菜に景との関係を訊かれ、額にジワリと汗が滲む。なんか胸騒ぎがする⋯⋯


 「いつも仲良く登校しているから、付き合ってるのかと思ってさ」

 

 「あ、あれは家も近くで、親同士仲が良いからだよ(傍から見ればそうみえるの?)」


 最近、うちの周りでは、そういうのに興味を持ち始める友達が増えてきていた。特に女の子は成長の早さからか、好きだの恋だのに敏感になってきている気がする⋯⋯ま、うちもだけど⋯⋯


 「二階堂君ってカッコいいよね?彼女いるの?」


 はい確定!雪菜絶対に景のこと好きでしょ?


 「さ、さぁ、どうだろう?聞いたことないよ」と言って、一旦はぐらかしてみる。

 

 「ふーん、で朱理はどうなの?」

 

 「どうってなに?」 

 

 うちは景が好き⋯⋯でも、その時のうちは親友と景を天秤にかける事なんてできない!そう思って、なんとか逃げ道がないかと『もじもじ』していると、「あっそ、じゃ私いってもいいよね?」と雪菜が呟いた。


 「いくってなに?」


 うちのハッキリしない態度に嫌気がさしたのか?机を『バンッ』と叩いた勢いで立ち上がり、真っ直ぐ景の元へ向かっていく。


 「ちょっ、雪菜」


 正直、景は女の子に人気があった。それがわかっていたから、景の好意や視線、言動がうちに向いてる時だけが至高の瞬間で、誰にも渡したくない⋯⋯とそう思ってしまった⋯⋯


 だから、その好意や視線が、自分にだけ向いている事を証明させるために⋯⋯うちだけの物にするために⋯⋯うちの優越だけのために⋯⋯⋯⋯

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