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第十五話 買い物デート!?

 全ての授業に、終わりを告げるチャイムが鳴り響く、今日一日を頑張った者にはさぞかし至福の鐘に聴こえただろう。


 僕も頑張った一人のはずだったのだが⋯⋯正直チャイムの音を聞きたくなかった。

 

 これから、立花さんと約束した買物に行く事を考えると、どうしても憂鬱な気持ちになり、肩が落ち、猫背になってしまう。


 「二階堂くん行くよ」


 そう言うと、左目をウィンクさせ、グッドサインをした右手で、『クイッ』と教室の扉を指し、踵を返して教室を出ていく。


 「ちょ、立花さん今日はどこに行くんですか?(賑やかな所苦手なんだが)」


 僕は鞄を肩に掛けて、急いで立花さんの後を追いかける。


 「まずは駅ナカにある服屋かな?」


 立花さんに追いつき、肩を並べゆっくりと昇降口に向かう。


 「服屋ですか?(服とか滅多に買わないんだけど⋯⋯)」

 

 「そう、てか二階堂くんて、普段どこで服とか買ってるの?」


 そう尋ねられて、普段服を買いに行かない僕は、戸惑いながら答えた。


 「買いに行きませんよ」

 

 「はっ!?服買わないの?」


 立花さんが眉根を寄せて、首を傾げる。


 「強いて言うなら中学時代のジャージです」

 

 「え?なんかの冗談だよね?」


 立花さんの顔が、みるみる青褪めていく。


 「あ、そもそも外出しないので、私服は必要無いです!」

 

 「あ〜あ〜〜なるほどね」


 なんか軽蔑するような眼差しを向けてきているけど、私服ってそんなに重要なのか?と疑問しか浮かばない。


 そんな会話をしているうちに服屋に到着する。真ん中を境に右がメンズ、左がレディースに分かれており、ダウンライトの照明が、薄暗い店内をお洒落に照らしている。


 陳列棚に畳まれている服も、もちろんお洒落で、今流行っていそうな服を、うまく着こなしたマネキンが、やけにカッコよくみえた。


 第一印象は『僕に不釣り合いなお店』この一言に尽きる。


 「立花さん、ここで何か買うのですか?」

 

 「うん、パーカーが一着欲しいんだよねー」


 そう言って、物色を始めた立花さんの横に、恐る恐る近付くと。


 「パーカーってコスパいいんだよ、制服にも合うし私服としても着れるし」

 

 「そうなんですか?(買わないとゆう選択が、僕にとって一番コスパがいいんだが)」


 「うん、あ、これなんて良さげ、二階堂くん黒と青どっちが好き?」

 

 「黒ですかね?(汚れ目立たなそうだし)」


 「てか、二階堂くん身長何cm?」

 

 「180ジャストです」


 「じゃ、これ着てみよ」


 渡されたのは、左胸にメーカーのロゴプリントが小さくある、青色のパーカーだった。色を聞かれた意味はあったのだろうか?と思い、訝しげな表情で立花さんを見ると。


 「え?なに?わたしの顔に何か付いてる?あ、更衣室ならあっちだよ」 


 そう言って、立花さんが指さした方向を目で追いかける、確かに更衣室みたいな部屋があったが、そういう事じゃない。


 僕は間違いなく黒と言った筈なんだ、なんで伝えた色と違う服を渡されたんだ?わざとかそれとも天然なのか⋯⋯いや、立花蒼に限って天然はないかと考えながら更衣室に入った。


 「二階堂くんどんな感じ?」


 カーテン越しに立花さんの声が聞こえる。

 

 「急かさないで下さい」


 そう答え急いでパーカーに着替えて、鏡をみると、着慣れていないせいか、いまいちしっくりこない。


 「二階堂くん、は、や、く〜」


 その声と同時に『シャッ』とカーテンが開けられた。


 「ちょ、待って下さいよ」


 びっくりして振り向くと、立花さんが顎に手を当てジーッと見ている。


 「思った通りいいわね、二階堂くんそれにしなさい(てかめちくちゃ似合ってるんだけど)」

 

 「そうですか?僕はなんだかしっくりきてないんですが⋯⋯」


 「絶対間違いない、ハンマープライス」

 

 「いや、別にオークションやってるわけじゃないんですけど⋯⋯」

 

 「クーックックッ」


 始まったよ、こうなった立花さんを止める事は出来ないと思って、渋々買うことを決意した。


 更衣室を出て、レジでお会計を済ませようとしていると、後方から声をかけられた。


 「景!?」


 不意に呼ばれびっくりして、振り返ると、茶色のスクールブレザーとチェックのスカートを身に纏った、黒髪ボブで紅眼の女の子が立っていた。

 

 「朱里?」

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