第十三話 不釣り合いな僕
ふと辺りを見渡すと、一部始終を見ていた人達が驚愕の表情を浮かべ、僕に疑いの眼差しを向けている。
何故そんな表情で見られているかは、立花さんが言った『そのままの意味だから』に関係しているのかもしれない。
兎にも角にも、立花さんは僕との会話で怒ってしまったのだから、今は考えるよりも追いかけなくちゃ、と思い席から立ち上がると、一部の人が教室後方を見ている事に気付いた。
その視線を追い、目を凝らすと扉の隙間から立花さんがジト目で僕を見ていた。
目が合った瞬間『逃げた』、僕は深い溜息をついて追いかける、あの表情を読み解くと恐らく『なんで追いかけてこないの?』が正解なんだろうなと考えながら。
昇降口まで走るとようやく追いついた、ってよりも待伏せされたが正解のような気がする。
辺りを見渡して、誰も居ないことを確認してから僕は話し始める。
「立花さんすいませんでした正直、人とコミュニケーションを取ったりするのが苦手で、知らずのうちに嫌な思いをさせてしまったのだと思いますそれに、怒らせてしまったのはなんとなくわかるのですが、理由がわからないんです差し支えなければ教えて頂けませんか?」
走って追いかけてきて、息は切れてる割にはしっかり喋れたのでは?と思った束の間。
「告白したのに伝わらなかった、から怒ったで理解できる?」
「あうっ⋯⋯なるほど⋯⋯、つまり立花さんは恋愛的な意味で、僕とお付き合いしたいと?」
あれは告白だったのか、だったとしても教室で皆が見てる前でする事なのか?と疑問に思ってしまう。
「何度も言わせないで」
「初めて告白されたので、実感が沸かないと言うか信じられないと言うか」
「私も初めてよ」
そう言って頬をほのかに赤くする立花さんがやけに綺麗に見えた。
「そうですか、お聞きしても宜しいですか?」
「なによ」
そう言って、立花さんは腕を組み仁王立ちをして僕の話を聞き始めた。
「一般的に僕と立花さんには雲泥の差があると思うんですよ」
「どういうことよ」
美女と野獣は言いすぎなような気がする、美女とニュウドウカジカくらいの差はあると思う、いやそれすら失礼な例えかもしれない。
「言い方回りくどかったですね、スタイル抜群で、学校一綺麗と囁かれている立花さんがなんで僕なんかを選ぶんですか?」
「落とされたからよ」
なに言ってんだこの人。
「いまいち理解できません、そもそも不釣り合いな僕がどうやって付き合うんですか?無理に決まってるじゃないですか」
立花さんは僕の気持ちとか考えたのだろうか、これは俗に言う告テロなのでは?
「御託が長い、それはつまり付き合えないってこと?」
「ですね、付き合えません」
そう伝えると僅かに体を震わせて、呆れ顔で話し始めた。
「理由をいいなさい」
「理由は単純に出会ったばかりで立花さんをよく知らないですし、絶対に立花さんに僕は不釣り合いだと思うからです」
素直にそう思った。だから伝えた、なのに何その表情はなに?『ハァ〜ッ』と深い溜息をついて私と付き合わないなんてあり得ないとでも言いたげな表情をして。
「今日の放課後、買い物付き合いなさい」
「いやです」
僕がそう伝えると、満面の笑みで話しを続ける。なにが嬉しいのかは全くわからないけど。
「私を理解しなさい、私は二階堂くんを理解するから、釣り合わない?じゃ釣り合うようにしてやろうじゃないの、だ、か、ら、放課後付き合いなさい」
「僕に拒否権は?」
「なにそれ?」
「横暴です」
「クーックックッ」
学校一の美女は鋼の心臓も持ち合わせているようで、いや違うか、恐らく僕の話を聞くつもりはないのだろう。
こうしてまた逆らうことのできない状況に身を任せる事にし、悲愴感を漂わせながら教室に戻る事にした。
『テレテレッテッテッテー』
もういいって。




