第50話
スライム(英:slime)とは、ファンタジー作品などにおける、主にゼリー状・粘液状の怪物のことである。単細胞生物なのか多細胞生物なのかすらも不明であるばかりか、液体金属や溶岩のように無機的な組成の体を持つものまである。(出典 ウィキペディア)
「これでで合ってる?」
前世の地球上では、未発見の架空の生物なのに、ほとんど共通認識なのが凄いよね。
「うん。よく勉強してるね」
アビエルから、お褒めの言葉いただきました。実在の魔物らしい。
リアルスライムかー。ちょっと楽しみだ。
実は前世地球にも、この世界の人が転生とか転移してたりして。
ちなみに、冒険者ギルドにあった魔物辞典には、スライムは載ってなかった。
フィールドでは見たことないし、この辺ではダンジョンにしか生息してないのかも。
「物理攻撃はあまり効かないから、魔法で攻撃してね」
アビエルが戦闘時におけるアドバイスをくれる。うん、想定通り。
「雷で良いの?」
「何でもいいよ。…あ、火だと燃えると臭いから、なるべく火以外がいいかな」
「わかったー」
臭いくらいならいいけど、人体に有毒なガスだったり、燃えすぎて酸素無くなったりしたら困るから絶対やめておこ。
外なら大丈夫でも、ダンジョン内は換気悪いし。てか、私、火の攻撃魔法なんて使ったことないよ。
それにしても、いつのまにダンジョン攻略することになったんだっけ?
見てみたいとは思ったけど、攻略したいとは考えてなかったはず。
だいたい、こんなに簡単に入れるなんて思ってなかったし。
何気にアビエルにのこのことついてきたらこうなったのか。アビエルめー、いつのまに。
まあ、そのアビエルもいるんだし、そこまで危険てこともないんだろう。
「たぶん、結界の外にそれなりにいると思うから気をつけてね」
アビエルはここで待機するんだね…。
たしかに誰かを守りながら戦うより、いない方がいいかもだけど。でも、うーん。
「行くぞ」
レオンはいつもどおり淡々と魔物狩りという任務を遂行しようとしている。
相変わらずオトコマエめ。
いつまでも私だけ拗ねていてもしょうがないので、雷魔法の準備をしつつ、結界をくぐる。
途端、悪夢が始まる。
どこからともなくゼリー状の何かが、ふよふよと近づいてきて、ひと塊りになっている。
思ってたのより移動速度が速い。すごく速い。そしてぴょんぴょん飛び跳ねる個体もいる。
どうやって跳んでるの?
そして合体しながら大きくなって、あっという間に、ダンジョンの通路を埋め尽くした。
あ、これヤバイやつだ。
飲み込まれたら、息出来なくなって速攻死ぬよね。てか、多いよ!それなりとかじゃないよ!
「リリ!魔法を撃ってくれ!」
レオンの緊迫した声で、プチパニックから帰ってくる私。
迫り来るスライム達に張り付かれつつ、困惑の表情を浮かべながら、剣を振るっているけれども、全く効いてないように見える。
切られても、その切れ端が、すぐに近くの個体と合体してしまうのだ。
「わかった!」
スライムの強さとか、弱点とか全然わからないから、強めに雷を落とす。
薄暗い洞窟内が、一瞬、強烈な光に包まれる。
その後、髪の毛が焦げたような臭いが漂ってきた。てことは、スライムってタンパク質なの?
それにしても火の魔法じゃないのに臭い。
ちょっと焦げただけなのに。
「…もう少し弱めにしてくれ」
「あ…」
辺りを見回すと、たまにごく小さな魔石が転がっているものの基本的には何も残ってない。
さっきまでスライムで埋め尽くされていた空間が、だ。
「スライムのどこの素材が欲しいのか確認するのを忘れたな」
「う…ん」
きっと絶対、このごく小さな魔石ではないだろう。魔石ならゴブリンとかでも採れるし。
でも実際、魔石以外は影も形もないので、ほんの少し何かを間違えた気がする。
「アビエル!ちょっと来てくれ」
結界が張ってある場所から、まだ数歩程度しか移動していないので、大きめの声を出せば、アビエルに聴こえるはずだよね。
結界の中から外であれば、何の問題もなく見えるし、音も拾えるけれど、外から中は見えないし聴こえないらしい。
「凄い!今の時間で全部倒したの?」




