第47話
読んで下さっている方、ブクマやポイントを加えた下さった方ありがとうございます。
まったり更新していくのでよろしくお願いします。
思い立ったらすぐに行動するとか、前世の私ではあまりなかったことだ。
でもこの世界に来たんだから、この世界の人に合わせようとは思ってる。
でもやっぱり、いきなりダンジョンはあるかないかと言われれば、ないと主張したい。
でも来ちゃったよ。
領主さんのお城に。
「あ、リリ、そっちじゃなくて裏門に回るよ」
領主さんのお城は、高めの門にぐるりと囲まれており、門の外側には堀があって、馬車のまま通れるような大きな正門へは、橋を通らなければならない仕様になっていた。
ちなみに我が家の門は、物理的に馬車などとうてい通り抜け不可だ。
裏門とは商人とかが入る通用門的なものなのかな?
たしかに約束もしてないし、庶民の私は正門からは入れないのかもしれない。
「ここから入ってー」
アビエルが、通用門に向かって呪文のような言葉を呟くと門があく。
アビエル凄いな!万能感あるね。
私よりよっぽどチートだよ。
てゆか、不法侵入とか言われない?大丈夫?
アビエルに続いて、恐る恐る通用門をくぐる。
「いいの?勝手に入ったりして」
「大丈夫だよー」
アビエルは全く迷いなくスタスタと歩いていく。
前に来たことあるって言ってたし、魔法の通行手形的なものがあるのやも?
それにしても、お城の警備の人たち、私たち見ても軽く礼してくるだけでスルーだし、こうも自由に敷地内に入れるなんて、ここの領主さんて人は随分オープンみたいだ。
しばらく歩くと中庭の四阿らしき建物が見えてきた。
ぱっと見、洋風の小洒落た小さな小屋だ。
壁の一面はガラス張りで、建物の中にはテーブルと椅子を置いてあるのが見える。
どう見てもダンジョンの入り口ぽくはない。
でも四阿らしきものは他に見当たらない。
「ここだよー」
やっぱりここなんだ。
四阿にも鍵はかかっていないらしく、アビエルはサクッとドアを開けて中に入っていく。
建物の中も、外から見えたのと同じ広さで同じ内装だった。
我が家のように、見た目と中身が違う不思議な造りでもないようだ。
「どこにダンジョンの入口あるの?」
私の想像していたダンジョンと違う。
もちろん本物は見たことはないので、これが普通なのかもしれないけれど。
と、思ってレオンを見たら、レオンもポカーンて顔をしているので、やはりこの世界の一般的なダンジョンの入り口とも違うようだ。
「椅子に座って?」
頭をクエスチョンでいっぱいにしながら言われたとおり洋風のお洒落な椅子に腰掛ける。
「じゃあ行くね」
え、どこに?
と思った瞬間、床に大きな陣が浮かび上がり、光り出す。
気がついたら、薄暗くて外より少し湿度が高めの洞窟のような場所にいた。
座っていた椅子だけが同じもので、部屋の雰囲気とか何もかもが違っていた。
うん、ダンジョンの中っぽい。
「着いたよー」
アビエルは全くブレないまま、ダンジョンへの案内ミッションをクリアした。
え、待って待って待って!
心の準備とか色々出来てないんですけど!
だからアビエル、執拗に全身フル装備を勧めてきたのか。
「えっと、ひょっとしてここって既にダンジョンの中?」
一応確認してみる。
「そうだよ」
なんでそんなこと聞くの?という感じでアビエルはコトリと首をかしげる。
洞窟に小洒落た椅子とか、違和感しかない。
椅子を気にしている時点で現実逃避だな。
「どうやって帰るの?」
まず逃げ道を探す。
「せっかく来たんだから、トカゲ獲って帰ろうよ。僕が案内するよ」
教えてくれないらしい。
「大丈夫なのか?」
アビエルを心配するレオン。
ダンジョン攻略する気マンマンのようだ。
ここは頑張るしかないのか。
「一応魔道具は持ってきたし、チート防具着てるけど、あくまで戦うのは2人でってことでお願い」
アビエルのいっそ清々しいほどの非戦闘員宣言が光る。姫プレイか。
でもちゃんと自分で身を守ってくれると楽なのは確かだ。真の姫プレイよりは精神に優しい。
これが物語の主人公ばりに根拠のない謎の自信に溢れた無鉄砲さで、魔物に突っ込んで行ったら普通に放置する。
自分の実力を測るには、ちゃんと痛い目をみなければならないものだ。
社畜時代の後輩がそうだったななどと前世に思いを馳せる。
仕方ない。
「じゃあ先頭はレオンで、その後ろでアビエル道案内して。私が最後尾で索敵しながら遠距離魔法撃つよ」
行くと決めたならば、サッサと終わらせるとしますかね。
隊列の指示を出す。
「わかった」
「よろしくー」
「アビエルはひたすら自分の身だけ守ってね」
「了解だよ」
「8階最短距離コースで良いよね?それとも他に行きたいとこある?」
「それって、各階層隅々まで探索して回りたいかってこと?」
「んー、まあそんな感じかな?」
「最短距離でお願いします」
「はーい」
私たちは、ソファから立ち上がり、ダンジョンの奥へと歩き出した。




