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n番煎じの異世界転生  作者: ココちゃん
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第44話



「というわけで、冒険者辞めてきちゃった」




家に帰るとアビエルがキッチンにいたので、早速今日の出来事について報告をした。


「もう魔物狩りしないの?」


「するよー。肉とか、魔石とか、アビエルの欲しい素材とかとりにー」


「ふーん。なら僕的には何の問題もないけど」


「そかー」


アビエルは、私が冒険者であろうとなかろうと関係ないようだった。


『問題ない』


しろもふさん的にもオッケーらしい。


しっぽをわさわさしている。

長毛なので、どこからどこまでが中身入りなのかぱっと見わからないフサフサしっぽだ。


ちなみにしろもふさんは、家の門の前で座って待っていておかえりしてくれた。かわいい。



「問題は、ここの家賃なのです」


「え、何で?」


取り敢えず、冒険者を辞めるにあたって全員の賛同を得てから、さらなる問題提起を自らする。

良くない話は早めに報告するのが一番なのだ。


「今までは、魔物狩りして、余剰な戦利品を冒険者ギルドで売って現金化してたんだけど、もうそれやりたくないから、どうしようかなと」


「出来ないじゃなくて、やりたくないんだね?」


早速、アビエルが微妙にごまかした点を突っ込んできた。


「うん。換金率は低くなるけど、冒険者登録してなくても、冒険者ギルドで戦利品を売ることは出来るんだけど、やりたくない」


「ふむ。僕もレオンも奴隷の身分だから、売りに行けないしね」


「肉屋とか、魔道具屋とか、市場開拓しないといけないよね、やっぱり」


「中間マージンとられないから、それもいいんだけど、そうゆうのに時間かけるのが面倒だったら、商業ギルドで売ればいいんじゃない?」


アビエルが新たな提案をしてくれた。


「商業ギルドって、商人御用達なんじゃないの?」


イメージ的には、問屋?だと思ってた。


「まあ、そうなんだけどね。リリだって商人登録してるでしょ」


「え?そんなのした覚えないよ」


アビエルは、ハァとため息をついて、私を眺めてから、


「奴隷商人でしょ」


「!」


そうだった!


「レアなんだよ、奴隷商人って」


「前も言われたね」


「特殊な魔道具を使うから、ある程度の魔力持ちじゃないと、最悪死ぬか、良くても道具に奴隷にされるし?」


「マジで」


こわ!


レオンてば、腹黒い。

あわよくば、私を倒して進もうと思ってたとか?

まあ、弱肉強食の生存競争だ。

自分の命を最優先にするのは正しい行為だよね。ちょっとムカつくけど。


隣に立っていたレオンが、ポカーン顔している。


あ、知らなかったのか。

知らなくても許さないけどね。


私からの視線を意図的に外している。

罪悪感は芽生えているらしい。


やっぱり自分以外の他人はあまり信用しない方向でいこう。


奴隷契約って凄い。


このシステムがなかったら、前世で、恋愛関係にあった人や、友達に位置付けられてた人、両親ですら、心の距離を置いていた私が、こんな異世界でマトモに暮らせるとは思えない。


きっと、しなくてもいい疑心暗鬼とか、不安とかに囚われる。


奴隷契約していれば、少なくとも疑わなくてすむ。


前世なら、一番身近な人が奴隷契約基本の人間関係とか、心が貧しいって非難されるのかもしれないけど、コッチは命懸けだし。

刑法も民放も社会保障もない異世界で、自分の身は自分で守らないと簡単に死んじゃう。


私はあくまで、「いのちだいじに」で行く。


いつまでも始まらない物語になるとしても、そんなの知らない。




そんな思いも込めて、軽くレオンを睨んでみる。


「すまない。言い訳をさせてもらえるなら、『知らなかった』だ」


ポカーン顔から復活したレオンが、謝る。


素直に謝るなら許してあげないこともない。


「奴隷商人関係のことは、あまり知られてないから、レオンが知らなくても普通だからね?」


「わかったよ」


アビエルがさりげなくレオンを庇う。

いい連携プレイ。


「商人ギルドに行ってみることにする」


連携プレイに免じて許そう。



「うん。商人だから、それなりに海千山千な所だけど、商売に関してはキッチリしてると思うよ」


「そうなんだ?」


「うん、たぶんね」


「たぶんなんだ」


「そんなに行ったことないからね。でも少なくとも、冒険者ギルドのような脳筋的な対応ではないよ」


脳筋的な対応…たしかに。


「僕の身内が冒険者だって言ったよね?」


「お姉さんが冒険者って言ってたね」


「そう。その姉が、まさに脳筋的な思考の持ち主でね。『力のあるものが力のないものを守る』って主義は悪くないんだけど、『守られているものは、大人しく守られておけ』ってのが、時に理不尽に感じられるんだ」


「なんとなく良い人っぽい気もするね?」


「弱いものは、強いものに従って当たり前。文句があるなら自分を倒してから言えってことだよ?」


「独裁者だね?」


「盗賊の頭くらいならそれでもいいと思うけど、僕は盗賊じゃないから生き物を殺す術に優れた人を尊敬は出来ても、無条件に崇拝は出来ない」


「そだね。する必要ないね」


「それでも、錬金術の素材は欲しいから、我慢してお願いとかしてたんだけど、今はリリがいるから理不尽に耐えなくていいんだ」


「なるほど」


あの防具は、そういう訳でしたか。


「それよりも、ゴハンにしない?お腹すいたでしょ」


「食べる!」


とりあえず、ごはん食べてから考えよう。

お腹すいてる時に考えごとしても、マイナス思考になるだけだ。







主人公がなかなか冒険に行ってくれません…。

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