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n番煎じの異世界転生  作者: ココちゃん
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第35話




「大丈夫だよ。この家の敷地は、結界で囲んでるから、僕ら以外の人間は入れない」


この国では絶滅したらしい凄い精霊樹を、大きく育ててしまったことで、大注目されることを危惧した私に、アビエルは余裕で大丈夫という。


「結界?」


「魔道具と魔石でね、半永久的な結界を編んだんだよ。これ、町の外壁や、領主の城の結界よりもずっと強力だから」


「アビエル凄い!」


どうやら、凄い結界を張ってくれたらしい。



「ふふ、結界の構築は得意なんだ」



優しげでクールな外見で、一見つかみどころがないように見えるアビエルだけど、褒めるとドヤ顔になるし、おだてると何でもやってくれる。


ただし、褒めて欲しいこと以外を褒めると、かえってテンションが下がる。


恋愛シミュレーションゲームでいうところの、友好度が下がる行為になるので難しい。


これからアビエルと恋愛関係を築く人には、教えてあげようと思っている。


あとプレゼントするなら、研究材料がいいと思う。


この点、自らの能力により精霊樹を大きく育ててしまった私などは、格好の研究対象であるらしく、大事にしてくれている。あくまで研究材料としてだと思うけど。



「元々この家は、町の中心から遠くて、外壁近くの木がたくさんある場所としか認識されてないし、この辺には建物もないから誰も来ないはずだし」


「たしかに、門の外からは、中の様子はわからないね」


「まあでも、もっと強い結界張れるよう研究するよ」


「それよりも、外に向かって段階的に強くなる結界を何重かにかけた方が良くはないか」


コの字型になっている家の、中庭のようなスペースに、テーブルと椅子を出して、アビエルとアフタヌーンティーを楽しみつつ、家のセキュリティについて話し合っていたら、農作業を終えたレオンが、やってきて会話に参加してきた。


「それは、家の塀に沿って張られた結界の外側にも結界を張るということ?」


「そうだ。空間を誤認識するような結界を何重にか張れば、効果的だろう」


「難しそうだね」


「俺は魔法のことはあまりわからないのだが、経験上、そういった結界は非常にやっかいだ」


「そうだね…それだと時空魔法が使える人の協力がないといけないけれども…でも、たしかに有効だね」


レオンの意見に、アビエルは難しそうな顔をしながら唸っていたけれど、どこか嬉しそうにしていた。

研究者ってたいていM属性持ってる。


「時空魔法って、そんなに難しいの?」


「うーん、適性があれば、難しくはないんだと思うよ。姉上などは、簡単に使いこなしていたしね。でも適性がないと全く使えないんだよ。僕も使えるようになりたくて、教わってたんだけどね」


「どうして使えるようになれないの?

私、最初は回復系の魔法しか使えなかったけど、レオンに教えてもらったら、氷と雷系の魔法が使えるようになったよ」


「え、あのエゲツない雷魔法?あれってオリジナルだよね?レオンも使えるの?」


「いや、俺はあのような魔法は使えない。ごく普通の、敵の気を引く程度のものだ」


「ちょっと待って、リリは回復魔法を使えることからいっても、光魔法の適性持ちだよね?あと風魔法も使えるよね?この前、庭で木の枝とか飛ばして遊んでたの見たし。あと氷魔法って、水魔法の派生だと思うんだけど、水より先に氷が使えたってこと?」


む、見られてたのか。恥ずかしいな。


「レオンから雷の魔法見て同じようにやってみたら、なぜか氷の魔法になっちゃって、

やり方を詳しく教わって、なるほどって思いながら試したら今の雷の魔法が使えるようになったんだよ」


「どんなふうに教わったの?」


「え」


「む」


「え」が私で、「む」がレオン。


話して良いものか、レオンに目で確認をとる。


雷様へのお願い呪文の件とか。


レオンは頷いて自分で答える。


「ただ、魔法を発動するためのきっかけとして呪文を唱えるということと、

どんな魔法でもイメージが大切だと教えた」


「それだけ?」


「ああ」


間違ってはいないけれど、私が魔法を理解したのは、お願い呪文がキッカケだったんだけどね。


「レオンて、この国の出身じゃなかったんだ」


「そうだが、なぜだ」


「帝国の魔法使いは、魔法理論に基づいた固定呪文を徹底的に身体にたたき込むことを第一としているんだよ」


「結果的には同じではないのか」


「うーん、そうなんだけどね。イメージしなくても使えるようになってしまうから、教えた以上には使えないんだよね」


「その方法だと、広く浅く一定程度の魔法が使える者を育てることが出来るし、管理しやすいかもしれないな」


「たしかにそうなんだけど、特定の魔法しか使えなくなるし、魔道具使えば同程度の魔法が発動出来るんだよね。…って、レオンて意外と管理する側の人間だったりしたの?」


「部下がいた時もあるが、今はリリの盾だ」


「へぇ、なんか面白いね…それで、リリはそんな説明だけで魔法使えるようになったの?」


んー、ちょっと違うかもだけど、概ね間違ってはいないかなぁ。


「実際に見せてもらったのと、イメージのコツを教わったからかな」


「コツってどんな?」


「レオンは雷の魔法の適性で、火をおこしたり水を出したりするのも火魔法とか水魔法とかじゃなくて、雷から派生させてるって聞いて」


「え、そうなの?」


「ああ、自分では気付いていなかったが、そういうことらしい」


レオンがうなずく。


「だからきっと、自然現象を雷のエネルギーの魔力で人為的に起こしているんじゃないかって思ってやってみたの」


「それ、錬金術の考え方だよ」


「そうなの?それじゃ、錬金術も魔法の一種ってこと?」


「そうなのかな?たしかに、錬金術も魔力を使うから、そうなのかも」


そう言ったきり、アビエルはぶつぶつと言いながら思考の淵へと潜っていってしまった。





「レオンもお茶、飲む?」


「もらおう」


何かを考え始めたアビエルは放置で、レオンとアフタヌーンティーの続きをする。

本当は、ケーキとかマカロンとかのお茶請けを用意出来ると良いんだけれど、今は鶏肉っぽい肉と、レオンの家庭菜園産の野菜サンドイッチで。


これでも充分、前の世界より充実してるのかもしれない。



時間に追われることなく、ゆっくりと過ごす時間に、手作りの食事。


守りたい親しい人が側にいて、その時間を共有する。


ひとりでも生きていけるけど、気の合う人とまったりとした時間を共に過ごせるのは僥倖だ。




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