第33話
最近の狩りが、時間が短くて済む理由の一つは、アビエルから貰った魔法のかばんのおかげである。
倒した魔物を、そのまままるっと入れられるので、その場で解体する必要がないのだ。
あきらかに取り出し口よりも大きなものも入るのだ。
イメージ的には、某猫型ロボットの四●元ポケットと言えば、前の世界に住んでいる人には、わかりやすいだろう。
魔法のかばんに入ってしまうと、重さは全く感じられなくなる。
アビエル曰く、この世界と時間と物質の概念が違う場所に繋がっているらしい。
よくわからないけれど、そういうもんなんだろう。
このあまりにも便利なかばんだが、ひとつだけ残念な点がある。
かばんに入れるまでは、ふつうに重さがあるのだ。
よくあるファンタジー小説のように、触れただけで瞬間移動してかばんに入るとかは出来ない。
なので、トロルのような大きな魔物の場合は、魔法のかばんを魔物の死体に持っていき、入れたいものを少しだけ持ち上げる。
ただかばんをかぶせるだけでは入ってくれないのだ。
なんとかならんもんか。
実は、最初は、かばんの口の大きさより小さいものじゃないと入らないと思って、その場で解体してた。
ふつう、そう思うよね?
家での会話の中で、アビエルに狩猟あるあるを語り聞かせていた時。
狩猟あるあるというのは、どんだけ歩き回って探しても獲物が見つからなかったのに、解体してる時とか、ごはん食べてる時、排泄してる時のような、手に武器を持っていない時に限ってどこからともなく現れて襲ってくるというアレだ。
その話を聞いたアビエルが、
「どうして家で解体しないの?」
と聞いてきたのだ。
そこで初めて、魔法かばんの仕様を詳しく知ったのでした。
早く教えてよーと責めたら、魔法のかばんという概念を知ってたし、自分のオリジナルだと思ってたから、他所の国にも存在するのかと思って、少し悔しかったから、あまり説明しなかったとのこと。子どもか。
魔法かばんは、つい最近、アビエルが完成させたオリジナル品で、希少なアイテムをベースに、高位の錬金術と時空魔法と闇魔法を使って作る。
少なくてもレオンの知る限りでは、他所の国にも存在しない。
まだ試作品の段階なので、この世に数点しか存在しておらず、それらは、アビエルのお姉さんなど、アビエルの身内しか持っていないんだそうだ。
今のところ、入れたものが取り出せなくなるなどの不具合は出ておらず、商品化も考えているらしい。
でもこれ、犯罪に使われたらヤバいよね。
そんな貴重なものですが、私とレオンは一つずつ持っている。
レオンは、ベルトに付けてポーチのように使っていて、私は、世の中の人にバレないように、普通のかばんに入れて歩いている。
そんな訳で、倒した魔物をまるっとかばんに入れて持って帰ってきたのは良いのだけれど、解体すると、内臓とか骨とか、要らないような部位は、廃棄しなきゃいけない。
森とかだと放置しておいても、直ぐに大小様々な生き物たちが、全力で森に還してくれるので、廃棄の心配は必要なかったのだけれども。
とは言え、廃棄物のことを考慮しても、おうちで解体した方が、圧倒的にメリットがあるのは間違いない訳で。
よくある異世界転移のチート付与は、私の場合、人との出会いチートなのかなと思ったりするのでした。




