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n番煎じの異世界転生  作者: ココちゃん
32/55

第32話





「前方北側400mに、トロルっぽい二体の魔物を察知。雷の魔法の射程内に入ったら撃つってことで良い?」


「ああ、頼む。一発で沈めても構わない」


「わかった」


毎日、ソナーの魔法で索敵をしていると、少しずつ広範囲に魔物を感知出来るようになった。精度も上がってる気がする。


そしてこの魔法は、私たちの生命線と言っても良いほどに重宝している。


そう、ピュリファイの次くらいに。


狩りで一番怖いのは、不意打ちだ。

簡単に倒せるゴブリンでも、不意打ちされたら、高確率でコッチにダメージが入ってしまう。


ゲームっぽい世界だけど、ゲームではないので、ダメージが入るとマジで痛い。

私はまだダメージを受けたことはないけれど、笹っぽい植物の硬くて尖った根を踏んで、足の裏から血が出たり、薮の中に入って、木の枝が手や顔に刺さって怪我したりはした。


それだけでも痛かった。


強そうな魔物がいたら、早めに逃げる。

思いっきり逃げる。


引き際というのは、本当に大事で、安全マージンは、取りすぎるくらいがちょうどいいと思う。


人生、中途半端に頑張っても、あまり良いことなんてない。


異世界で頑張ったら、魔王とか倒せたりするのかもしれないけれど、そんな物語みたいな、波乱の人生とか、メンタル弱いので耐えられません。



トロルっぽい二体は、やっぱりトロルで、100mくらいの距離に近づいた瞬間、雷魔法を強めに撃ち込む。

女帝からのストレスも一緒に込めたので、いつもより強めになってしまった。


レオンの、「一発で沈めても構わない」の指示は、つまり、ストレス発散させてリセットしろってことだ。

人の扱い方上手だなあ。


戦闘での経験値は、レオンの方が、ずーっとずーっとプロだから、当然、魔物狩りのときは指揮を執ってくれるんだけど、奴隷契約の主人は、あくまで私ってことで、その微妙な関係性の下で、とても自然に上手く立ち回っているように見える。


私の社畜時代とは大違いだ。


あきらかに間違っている上司の指示に従う苦痛と戦いながらも、業務を円滑に行うために、まずやらないといけないのが、上司のご機嫌取りっていう事実に、ストレスを溜めまくっていた。


もう思い出したくもないけど。


この世界で生活するのも不安だけれども、前の世界みたいに、常に何かに追い立てられているような、責められているような、そんな生活はもうやだな。


女帝の依頼が、前の世界の上司からの不本意な命令みたいに感じたから、あれ程の拒絶反応を示してしまったのかも。


冷静に考えてみたら、あの対応は無かったのかもしれないけれど、やっちゃったもんはしょーがないよね。


レオンごめん。何かあったら、巻き込む事になりそう。



「あ」


トロルが倒れている場所にたどり着くと、真っ黒焦げになった何かが2体。


「…もう少し加減してくれ」


レオンが、ため息と一緒に声を吐いた。



魔石は大丈夫だと思うよ。うん。




「お」


ソナーに反応あり。


「魔物か?」



「うん。たぶんまたトロル。一体だから、きれいに倒そう」


「きれいに?」


「うん。討伐部位が、ちゃんと確保出来るように」


「わかった」


私だって、やればできる子だ。




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