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手出し無用の女 07




 ――とある森の奥地。ベルスレイアが緑竜を屠った森である。

 そこに男は放置されていた。脱出を目指し、仲間と森を進んだ。しかし夜が来る度、仲間は殺されていく。

 一人、また一人と減っていく仲間。そして最後の一人となって、男は恐怖に震えながら夜を迎えた。


 だが――まだ生きていた。

 それは希望か、はたまた絶望か。何にせよ、男には縋るものなど何もない。ただ安全な場所を求め、森を進む他無かった。


「――あら、こんなところに居たのね」

 声が響く。夜が来る度、仲間を奪っていったあの声だった。


「ひぃっ!?」

 声がしただけで、男は腰を抜かした。その場に無様に転び、地を這うようにして逃げる。

「待ちなさい。悪いようにはしないから」

 ベルスレイアは笑みを浮かべ、信用ならない言葉を告げる。そして逃げる男の足を、操影にて操る影で掴む。


 逃げることすら出来なくなり、男は手足を振り回して暴れる。

「ひいいっ!! 頼むぅっ! 助けてくれぇっ!!」

「安心なさい。じきに仲間の元に行けるわ」

「嫌だぁぁあっ! 死にたくない! じにだぐないぃっ!!」

 ついには、男は涙を流しながら命乞いをする。


「お願いでず、だずけでぇ……」

「悪いけど、お前に求めるものなど何も無いわ」

 無慈悲に、ベルスレイアは告げる。

「死になさい」


 宣言と同時に、ベルスレイアの操る影が男の首を締める。並外れたステータスにより、影の発揮する力もまた並外れたものとなっていた。

 徐々に力を上げていき、数秒後。グキリ、と音を立てて男の首は折れた。


 そうして死亡を確認したベルスレイアは――血の魔眼を使い、己のステータスを確認する。

「――やっぱり、こいつ程度ではさほど経験値にはならないわね」


――――――――


名前:ベルスレイア・フラウローゼス(Bellsreia Flaurozes)

種族:吸血鬼

職業:屠殺者

レベル:13


生命力:322

攻撃力:159

魔法力:151

技術力:171

敏捷性:164

防御力:132

抵抗力:145

運命力:174


武器練度:剣S 槍S 斧A 弓S 打槍X 拳S

魔法練度:炎X 雷S 闇X


スキル:血統 覇者の魂 カリスマ

    死の呪い 悪運の呪い

    剛闘気 讐闘気 分闘気

    精強 俊足 回避 灼熱

    広域優位 先手必勝 暗視 孤高

    人類特攻 魔族特攻 獣人特攻 魔物特攻

    天空の守護 先制 消耗軽減 根性

    飛剣 新月 望月

    血の呪い 血の解錠 血の翼 血の魔眼

    赤い月 自然治癒 収納魔法 魔素操作

    潜影 操影 覚醒 破壊


――――――――


 サンクトブルグでの戦闘以後、ほぼレベルの上昇の無かったベルスレイア。しかし、人間の、特に高レベル者を殺すことで莫大な経験値を入手。これまでの停滞が嘘のようにレベルが上がった。

 その結果、天馬騎士の上級職、不死鳥騎士に転職。さらに狩人に転職し、上級職の屠殺者への転職まで済ませている。


 新たに習得したスキルは『分闘気』『天空の守護』『暗視』『魔物特攻』『望月』の五つ。

 まず『分闘気』は闘気による分身を生み出し、分身が追加攻撃を加えるスキル。『天空の守護』は飛行特攻の無効化。暗視は夜間など暗所での能力の上昇、魔物特攻は文字通り魔物への特攻効果。最後に『望月』は生命力最大時に相手の防御力、抵抗力を無視して攻撃可能となるスキルである。


 不死鳥騎士は、LTOでは特殊な上級職であった。条件を満たした一部のプレイヤーのみ転職可能な職だった。しかし今回、ベルスレイアも転職が可能だった。

 そこで血の魔眼を使い、神託の水晶が表示する転職先についてよく観察した。


 その結果、特殊条件で転職可能な職は、練度やステータス、転職遍歴などを参照し、転職可能だということが分かった。

 例えば、不死鳥騎士の転職条件は『炎A以上かつ魔法力20』である。同様に、例えばシルフィアがかつて転職していた剣聖は『剣A以上かつ、技術力20』。


 確かに、とベルスレイアは思い返す。剣士から転職する時、剣聖の表示も存在した記憶があった。ただ、その時は獣人特攻の習得を優先し、剣豪を選んだのだが。


 ともかく、特殊な上級職への転職条件も判明。自身のレベルもスムーズに上昇。ベルスレイアは、非情に機嫌が良かった。

 まさか――人間を殺す方が魔物よりも経験値効率が良いとは想像もしていなかったのだ。


 それがこうして、偶然にも『竜の牙』を壊滅させたことで判明した。

 もちろん、低レベルの人間では経験値の足しにもならない。実際、今ベルスレイアが殺した男の経験値は緑竜よりも低い。

 だが、高レベルの人間――特に転職済みの人間は、ベルスレイアも驚くほどの経験値が得られた。

 それこそ緑竜のような魔物を何十匹と倒す以上の経験値が得られたのだ。


 思わぬ収穫に、ベルスレイアは満足していた。

 そして――可能なら。高レベルの人間を積極的に殺していこう。等と、物騒なことまで考えているのであった。

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