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関兵太 3

 ニーナ・ツペンベルクは司祭階級の出身である。

 

 貴司兵民のくくりにおいては上から二番目であり、貴族に次ぐ高貴な家に産まれたらしい。それも、首都のみならず大陸中の各街にある七神教の教会すべてを統括する、大司教の家の出身なのだとか。


 堅苦しい実家の教育に嫌気がさし、自分の力で生きていってみたいという理由で親と喧嘩して家を出てきた――笑いながらそう語る彼女は、自分が甘やかされるのを事のほか嫌う。


 事実、彼女は人に頼らないで生きていけるだけの生命力を持っている。

 明るく快活で、それでいて自分に課した厳しさを他人に求めない優しさを持っている。先日だって、俺がナーヴ教官に噛み付いたせいで彼女も手ひどく痛めつけられたのに、恨み言一つたりとも俺に向けたことはない。というより、軍というのはそういうものだと割り切っているので、気にしてもいないようだ。芯の強い女性なのである。


 俺が彼女について知っていることといえば、それぐらいだ。

 そしてそれは――ある程度、一定の好感を彼女に持つには、十分な理由だった。


(――無理だ、寝れない)


 すうすう、ふごーふごー、しゅぴーしゅぴーと、三者三様の寝息が響く四人住みの自室において、俺は音を立てないようにむくりとベッドから起き上がった。 


(匂いが、ヤバい)


 ニーナの年齢は、十九歳である。彼女の体臭は、桃のように甘い。

 二段ベッドで俺と同じく下の一段目に寝ている彼女は、俺とは向かい側にいるわけだが、その彼女の身体から漂ってくる女の匂いが俺を苦しめていた。


 率直な表現をするなら――俺は彼女に欲情していた。

 年下のニーナの、甘く香る桃のような汗の匂いに反応して、俺の下半身はガチガチに硬くなっていた。


(肉体いじめが、足りなかったか)


 守護隊の過酷な訓練を耐え抜くと、いつも疲れ果てて夜はすぐに寝てしまう。

 現に、俺以外の三人は精魂尽き果てたかのように寝入っている。


 俺も、今まではそうだったのだが――今日は少しだけ余裕があった。

 訓練に慣れてきたせいでもあるのだろう。守護隊に配属されてから、一週間が経っている。今日は、余計なことを考えるだけの体力が余ってしまっていた。


(このまま、寝付けるか)


 試しに再度ベッドに横たわり、しばらく目を閉じていたが――無理そうだった。

 脳髄を直撃するかのような濃く甘い女の香りはいつまでも消えない。


 ニーナの弁護を少ししておくと、彼女は体臭が強い方ではない。

 ただ、守護隊の入浴は、週に二度なのである。この世界の基準においては、週二度の入浴は多い方なのだが、今日はちょうど風呂に入ってから三日目であった。もっとも体臭が濃く匂う日であるのだ。

 

 入浴がない日以外にまったく身体を洗わないかというとそうでもなく、訓練で汗をかいた後はみな、作水石で毎日水浴びぐらいはしている。

 しかし、俺の煩悩を刺激してやまない程度には、ニーナの匂いは残っていた。

 

 俺の下半身は先ほどから屹立しっぱなしで、目が冴えてきた。

 

(処理してくるか)


 俺は音を立てないようにそっとベッドから抜け出し、外から中の様子が見えやすいように扉などない自室の入り口を出て、共用の便所へと向かった。


 深夜であっても、廊下は作光石によって照らされて明るい。

 首都の城門など、各地から魔物の出没を緊急で知らされた場合、すぐに迎撃に赴けるように宿舎の明かりはある程度灯されているのだ。


(ふう)


 共用の便所は、下水の場所の兼ね合いもあって、宿舎の外にある。

 俺が事を終わらせて便所から出てくると、煌々とした満月が空に輝いていた。


「お、終わったか?」


「うおあ!?」


 汗のにじんだ額に爽やかな風を感じつつ歩き出そうとした俺は、突然声をかけられて飛び上がった。


「フェルペス!?」


「おいおい、声がデカいって。見回りの不寝番に見つかったら面倒だぜ」


 少し離れた、階段状になっている石の床に腰を降ろして俺を待っていたのは、誰あろう我が同期かつ小隊長のフェルペスであった。寝床を抜け出して俺の後を尾けてきたのか? 


「なんでそこに――いやそれより、終わったかっていうのは」


「ナニに決まってんだろ。ちょっくら話しておきたいことがあってだな」


「お、おう。なんだ?」


 まだ戸惑いから抜け切らないまま、とりあえずフェルペスのそばに腰を降ろす。


「話の前にだ、なんでこんな深夜じゃないとダメなんだ? 昼間、いくらでも話す機会があったろ」


「まあ、他のメンツの前じゃ話しにくいことってのもあらあな。感謝して欲しいぐらいだぜ、わざわざこんな風にして話す手間取ってんだから」


「ふむ?」


 他のメンツの前で話しにくいこと――何か、気をつけるべき注意点でも指摘してくれるというのだろうか。あるいは、言葉遣いは保ったままでナーヴ教官をおちょくる方法でも教えてくれるのだろうか。


「ぶっちゃけた話、ヒョウタって童貞?」

 

「はぁ!?」


 驚きすぎて、どどどど童貞ちゃうわと定番の返しをする余裕もなかった。


「その反応を見るに、やっぱそうか――参ったな、面倒くせえぞこれ」


「まあ、そうだけどさ。なんだ、下ネタを話すためだけに俺を待ってたのか? 確かにニーナとかの前では話しにくいけどさ」


 お主も好きよのう、と肘で突いてみたが、フェルペスは苦笑するだけだった。


「結構真面目な話してるんだぜ、俺。同じ小隊だからって理由があるにしても、なんで上が男女共同の宿舎を割り振ったと思うんだ?」


「なんでって。小隊が一緒だからって理由だけじゃないのか?」


「まあそうなんだが――あのな、ナーヴ教官がこの前、二ーナに厳しく当たってたろ? あれはな、男女差を軍に持ち込むなっていう意味もあるんだよ。女だろうと甘やかされることはないし体罰だって食らうんだぞってな。性的にいびる罵声を飛ばさないあたり、ナーヴ教官は温情がある方だと思うがね」


「性的にいびるって――ダメだろ、そこまでしちゃ」


「ん――ニーナは出来た子だから、ナーヴ教官がそこまでする必要がないだけだな。もし仮にニーナが、訓練でお肌が荒れちゃうとか言い出したり、化粧っ気を出し始めたり、要するに女らしい部分で我がままを言い始めたら、ナーヴ教官はそこも攻めだすだろうな」


 そんなもんかねえ、と俺は天を仰ぐ。

 相性の悪い人物というのは誰しもいるもので、俺はナーヴ教官がどうしても苦手だった。深い考えがあってやっているのだと再三フェルペスたちから教えられているものの、根っから性格が嫌なやつだからなんじゃないのと思ってしまう。


「女からしてみりゃ、軍ってのは結構辛いところだよ。男社会だからな。月のものが来てても出撃が免除されるなんてことはないし、町娘がしてるみたいに着飾って男の目を惹くことだってできやしない。軍に属している間、女性だけは性交禁止だからな」


 男を咥えこみたければ報告をして軍を抜けてからにしろ、とナーヴ教官がニーナに言っていたことを思い出す。


 当時は、いびりの一環だとしか思っていなかった。


「妊娠したら軍を辞めざるを得ないだろ。男は種付けるだけでいいから制限なんてないけどな。まあ他にも色々、女からしてみりゃ嫌なことは多いだろう。風呂はさすがに別だが、一緒に訓練やら出撃やらしてたら、どうしたって繊細なところに触れざるを得なくなる。肌をさらす機会もあるだろうし、排泄なんかも近くでやってもらう必要がある。水浴びだって、俺らは堂々とやれるのに、二ーナなんかは木陰とかでこっそりやらなきゃならん。本来なら、俺らのそばで全裸で水浴びしても動じないぐらいが望ましいんだが――そこまで求めるのも酷だしな」


 実際のところ、二ーナはよくやってるよ、とフェルペスは呟いた。


「問題なのは、お前だよ、ヒョウタ。惚れてるのか、ただ近くに女がいるからってだけなのかは知らないけどな、お前はニーナを意識しすぎだ。意識するだけならともかく、お前は態度に出ちまってる。これはダメだ。俺がナーヴ教官なら、間違いなく近々そこを攻めるね。一人前に色気付いてるのか馬鹿がって、絶対言う」


「おいおい、やめてくれよ――」


「言っとくがこれはマジの話だぜ。だってよ、不公平だろ(・・・・・)? さっきも言ったが、二ーナは男社会の軍に溶け込むために、色々と頑張って耐えてる。そんな中、大した我慢もしなくていい男の方が、二ーナを女性として特別扱いしようとしてるんだぜ。ナーヴ教官からしてみれば、こいつはわかってねえっていう風に見えるんだ。最初、二ーナに対して厳しく接して見せたように、間違いなくヒョウタに指導が入る」


 俺は何も言えなかった。

 確かに、目の前でナーヴ教官がニーナにまたビンタでもしたら、俺は文句の一つでも口にしてしまいそうだ。


「最初、童貞かって聞いたのはそういうことだよ。過剰に反応しすぎなんだ、ヒョウタは」


 お前は優秀だよ、とフェルペスは言った。

 いきなり褒められて俺は面食らう。そんな会話の流れだっただろうか。


「槍だろうと、弓だろうと、何だってこなせる。真っ向勝負なら、そこそこ教官たちとも打ち合えるんだろ? そんなやつはいねえよ、お前はすげえ奴だ。でもな――軍ってのは、一人じゃ動かねえんだ。俺たちが小隊組んでるように、必ず集団で動く。そのためには、みんなが少しずつ我慢して周りに合わせないといけない。ヒョウタはな、そのあたりが甘いんだ。だからナーヴ教官が厳しくそこを矯正してくるんだ」


 話は終わりだと言わんばかりに、フェルペスは立ち上がる。俺もそれに倣った。


「次の休みよ、娼館行こうぜ。連れてってやるよ」

 

「はあ!?」


 それこそ、いきなり何を言い出すんだという話である。


「だからよ、女慣れしろって話だよ。一発ヤっときゃ女なんてこんなもんかって思えるからな。最初は素人がいいとか、そんな夢見てるわけでもないんだろ?」


「お、おう。まあそりゃあな」


「口篭もるな気色悪い。まあいいさ、俺の馴染みの店に連れてってやる。相場よりゃ少しだけ高いが、気立てのいい娘が揃ってるとこだ。とっとと経験してこい」


「馴染みの店とか持ってるのか」


「俺は元々、守護隊を志望してたからな。魔物と戦って死ぬかもしれないって思ってたから、普通の女は作らなかったんだ。まあ玄人は玄人でいいもんだぜ、慣れてて上手いからな」


 宿舎へ戻るべく前を歩くフェルペスの横顔をちらりと見る。

 お調子者の小隊長としか思っていなかったが、こんな風に真面目な顔をすることもあるのだ。


「言っとくが、小隊長命令だぜ。次の休みは娼館な」


 いきなり童貞を捨てろと言われて戸惑う気持ちもあるにはあるが――それよりも、俺が軍でちゃんとやっていけるようにフェルペスが色々と考え、時間を使ってまで教えてくれたことが嬉しかった。


 いつしか、友情に似たものをフェルペスに感じていることに俺は気づく。

 これが、同じ小隊員としての連帯感というものだろうか。


「いいとこ連れてってくださいよ、隊長?」


 娼館に興味がないと言えば嘘になるが、どちらかというと未知のものへの恐れの方が強い。それでも、あえてそんな風に言ってみた。


 考えてみたら、フェルペスに敬語を使うのも、隊長と呼ぶのもこれが初めてだ。


「敵はなかなかの技巧派揃いだぞ。我が小隊の前衛として、攻めを受けきって見せろよ?」


 いやあ無理かな、と俺が言うと、フェルペスは笑い出した。

 俺もつられて、笑った。 


 







 特別訓練と称して、先輩にあたる守護隊の剣士二人と俺が立ち会ったのは、翌週のことだった。やらせたのはナーヴ教官で、相手は槍組の重装甲戦士である。


 二人のレベルをステータス画面で確認したところ、162と165であった。

 レベルだけで見れば格上ではあるが、もちろん彼らは転生者でない一般人なので、特典スキルなど持っていない。レベル2100の守護隊長ペズンとそれなりに打ち合えた俺にとっては、楽に勝てる相手のはずだ。


「まずは一人ずつだ。では、始め」


 武器の先端を垂直に立て、柄元を胸にくっつける剣士の礼の後、俺と相手は向かい合った。


 まずは、レベル162の人が相手である。兜を着けているので、相手の表情はわからない。俺は剣、相手の武器は槍である。ただし訓練用に刃を潰してある。


 板金鎧を着込んでいるので、俺の動きは重かった。相手も同じく板金鎧を着ているので、言い訳にすることはできない。

 場所は、日本の学校の校庭と似ていた。地面は土で、遮蔽物は一切ないだだっ広い訓練場だ。


(俗に、槍は三倍段って言うんだっけ?)  


 武器の射程が短いと、それだけ不利だという格言だったはずだが――特典スキルにかかれば、それぐらいのハンデなど物の数ではなかった。


 真っすぐ踏み出して距離を詰めていく俺に、タイミングを見計らった鋭い刺突が襲いかかるが――槍の穂先を長剣で払い、そのまま篭手を打ち、相手の喉元にぴたりと剣先を突きつけて寸止めする。


「そこまで」


 見事な連撃と武器さばきに、周囲で見守っていた観客からほう、と感嘆のため息が漏れる。俺の小隊員はもちろんのこと、手が空いている守護隊の先輩たちが三十名ほど集まり、俺の立ち合いを眺めていた。


「次、始め」


 二番手は、レベル165の方の槍使いである。

 槍の使い方、攻め方などはほとんど変わらなかったので、こちらも難なくあしらって俺が勝利を収めた。


「馬鹿に刃物を持たせるなというが――どんな馬鹿でも一つぐらいは取り得があるものだな。目上の人間をたやすく打ち負かして有頂天か、ええ?」


「恐縮であります!」


 ナーヴ教官の皮肉には、付き合うだけ損である。

 適当にあしらっておけばいい。


「ふん、まあいい。次、二人でかかれ。始め」


 レベル162と165の槍使い、彼ら二人との立ち合いになった。


 小隊の前衛を務める俺が、負けるわけにはいかない。相手がいくら二人がかりといえど、見事さばき切って返り討ちにしてやると俺は意気込んでいたのだが――


(やりにくい!)


 俺は、思わぬ苦戦を強いられていた。

 相手の二人は、どちらも先ほど、俺があっさりと退けてみせた槍使いである。


 今度も、一人一人倒していけばいいと思っていたのだが――隙がない。


 一人目が突き出してきた槍を、タイマンのときと同じように剣先で払い、できた相手の隙に打ち込もうとするが――それをもう一人が槍で妨害してくる。


 そのせいで深く踏み込めない。追撃する余裕がないのだ。


 一人目を攻めようとすると、二人目の槍がそれを阻む。

 二人目を攻めようとすると、一人目の槍がそれを阻む。


 一人だけを相手にするのとは、勝手がまったく違っていた。攻め込めない。


(なら、陣形を崩してみるか)


 俺と相手の二人は、ちょうど三角形のような陣形で向かい合っている。

 俺の左右から攻めてきているので動きづらいなら――場所を移動して、一対一の状況を作ればいい。


 そう思い、左にいる方の槍使いとの距離を縮め、逆に右の槍使いからは距離を取ろうと動いたが――相手はそうさせてくれなかった。相手も動き、常に二対一で俺と戦える陣形を崩そうとしない。


 必死に動き、相手をかく乱しようと試みたが、相手の方がレベルが高い分、動きは素早い。どうやっても、二人がかりで攻めてくる形を崩せなかった。


(くっ!)


 同時に、槍で攻められた。

 一人目の槍を剣で払い、二人目の槍は何とか回避する。

 しかし、そこまでだった。反撃に移る余裕などはなく、一人目の槍使いが再度繰り出した二撃目は、体勢を崩している俺では避けられなかった。


 鎧で守っている喉元に、槍の穂先がとん、とぶつけられる。

 相手にまだ余裕があるのか、ほどよく力を抜いて手加減された一撃だった。


「そこまで」


 ナーヴ教官の制止の声で、槍使い二人は俺から距離を取り、剣士の礼を取った。

 示し合わせていたのではないかと思うぐらい、二人の動作はシンクロしていた。


「貴様の実力など、そんなものだ。いくら剣の腕が立とうが、連携が取れている二人を相手になどできん。馬鹿なお子様には、ちょうどいい薬だっただろう?」 


 嫌みったらしい言葉を投げかけてくるナーヴ教官のことは、あまり気にならなかった。

 言っていることは、事実なのである。いくら特典スキルがあったところで、相手の息が合っていれば二人でかかってこられれば負ける。連携の強みを教えてもらったという気分だった。負けても、不思議と悔しくは思わなかった。


 ナーブ教官が言いたいことは、わかっている。

 「これが軍だ」ということなのだろう。一人で出来ることなど限りがあるのだから、いくら腕が立とうが規律を守れと――要は大人になれと言いたいのだ。


「ご指導、ありがとうございました!」


 剣士の礼の後、俺は相手をしてくれた二人組の先輩剣士に頭を下げた。


 そんな俺を見て、ナーヴ教官はぴくりと眉を動かした。

 いままでの俺と違って殊勝だな、とでも思っているのだろうか。


「ふう」


 一日の訓練が終わった頃には、もう日が沈みかけていた。

 いつも、訓練は朝に始まって夕方に終わる。九時五時生活だ。


 俺は兜を取って天を仰ぐ。かいた汗に、風がしみこんでくるようだ。

 心地良い風ではあったが――どうもいまいち、「今日も俺は頑張ったな」と爽やかな気分にならない。軍に入ってから、魔物とまだ戦っていない(・・・・・・・・)からだ。 


 そう――今の俺は、訓練生のようなものなので、出撃が許されていない。

 軍のエリート部隊である守護隊に編入されておきながら、俺はまだ一度たりとも魔物を狩っていないのだ。守護隊の訓練は厳しいが、ふと気を抜いた瞬間に、こんな生活でいいのかと焦りを覚える自分がいる。


(いつまで軍で暮らせば、出撃が許されるんだろう)


 もちろん俺たちは守護隊の第一軍であるからして、魔物の討伐が仕事なのだが――

まだ俺たちには早いと、教官たちが考えているのだろう。


(軍に入ってから、レベルは1たりとも上がってない)


 こんな調子でカケラロイヤルに勝ち抜くことが出来るのか不安になることも、一再ではない。もっとガンガン魔物を狩って、レベルを上げなければならないのではないかと焦りもする。


(しかし――)


 焦ってはならないとも思う。

 こうして軍に入り、軍の規律を覚えていくことは、決して無駄にはならない。


 ニーナだって、軍での生活に耐えているのだ。


(俺だって、耐えるところは耐えなきゃいけない)


 自分に、そう言い聞かせる。

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