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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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四極天

◇◇◇


「へ~、君がシロウくんか。いつも話はイズミから聞いてるよ」

「あ、そうっすか。多分ろくな話じゃないだろうけど」

「カルラ、余計な事は言わないでよ」


 カルラと呼ばれた赤い髪の女性は見るからに魔道士らしい黒いローブと三角帽子を被っており、大きな寸胴で何かを煮ている。


 魔道士っつーか魔女っぽい。


 歳は俺達より少し上くらいだと思う。


「はいはい、わかってますって。その一言が余計な事だってわからないのかなぁ?」

「カールーラー」

「はいはい、わかったわかった」

 カルラは寸胴から紫色のスープを器によそい、みんなに配る。


「そんじゃそろそろ客人に我ら『四極天(しきょくてん)』の自己紹介でもしますかね。まず俺、人類最強の――」

「ん、長い。このおじさんはナシュア。職業分類は?無職?」


 長い自己紹介をイズミがカットインする。

「無職なら俺は今ここで何やってんだよ」

「あはは、野外生活?」

「黙れ黒ずくめ。まぁ自慢じゃないが武芸百般、文武両道、魔法以外は大概何でも出来る。そうだな……まぁ強いて言えば全てを兼ね備えた――」


 顎に手を当ててまた語りだしたナシュアを無視してイズミは紹介を続ける。

「そしてそこの悪い魔女がカルラ」

「うわぁ、酷い紹介。朝からみんなの為にスープ作ってるのに」

「ふふ、ごめん。嘘だよ。毎日変わった色のスープを作ってくれるの。色はおかしいけど味はおいしいよ」

「あ、そう言う余計な事言うと私も口が滑るかもしれないよ?」

「あっ、嘘。今の無し」


 カルラはニッコリと笑いスープをよそう。


「カルラよ。治癒回復系以外の魔法は大概使えるわ」

「僕はもう紹介は済んでるね。剣と魔法が得意だよ。一応魔法剣士って事になるのかな」

 にっこりと爽やかな笑顔でキツい紫色のスープを飲むジーオ。


「身分の差はあれど、気軽にジーオと呼んでくれてかまわないよ」


「あざっす」

 嫌みにも聞こえる台詞だが特に悪意があるわけではないようだ。基本的には育ちの良い善人なのだと思う。

 イズミは呆れ顔で溜息をつく。

「感じ悪。私ジーオのそう言うところが嫌い。何よ、身分って」

 イズミの声を聞いてジーオの影からまた黒蛇が出てきてイズミを睨む。


「ジーオ、いい加減無礼が過ぎるわよこのメスザル。極刑に処しましょうよ」


「高貴な方なの?」

 イズミに問いかけたが、ナシュアが答える。


「ん?そいつ普通に王族だぞ。つーか継承順位一位な」


「え、一位って……次の王じゃないっすか」


 それを聞いて黒蛇のノワは得意げに俺を見下ろす。


「だから言ってるでしょう、頭が高いって。ジーオは優しいから許してくれているけどね、本来あんた達みんな死刑だからね、死刑。そこの所忘れずにね」

 ジーオは困り顔でノワの頭を撫でる。

「ノワ、言い過ぎだよ」


 イズミは笑顔でカルラの袖を引く。

「カルラ、今日のお昼は蛇のスープにしようよ」

「別にいいけどちゃんと飲んでよね」


「ははは、別にいいのかよ。あー、で一応説明しておくと『四極天(しきょくてん)』ってのは各国首脳会談を経て俺達四人に与えられた称号だ。知ってるか?」


「名前くらいは、……一応」


 勇者イズミを筆頭とした魔王討伐最高戦力として、3年前の首脳会談で決定した……程度の情報しか知らないけど。実際ジーオ王子の名前すら知らなかった己の不明を少し恥じる。


「シロウはナシュアの事覚えてる?」


「覚えてる?って……、会った事あるって事か?」


 チラリと屈強なおじさんを見るが、全く記憶に無い。


 俺の表情を見て屈強おじさんは大げさに額に手をやり天を仰ぐ。


「あーあー、そうかい。全く薄情な小僧だぜ」


「え、あー……うちのギルドで……?」


「お前の田舎ギルドなんぞ知らん!」


 何となく荒くれたノリがギルドに(たむろ)しているあらくれ冒険者と近いと思ったんだが、違うようだ。


 となるともう全く心当たりは無い。


 腕を組んで頭を捻る俺を見てイズミはクスリと笑う。


「8年前、私達の村に助けに来た中の1人だよ。私達を見つけたのがナシュア」



 ――8年前。俺とイズミの生まれ故郷であるカカポ村は、イズミを狙う魔族に襲撃されて壊滅した。


 俺は気を失い、力に目覚めたイズミが全滅させたのだが、それは既に村が滅んだ後だった。


「私達を安全な街まで運んでくれたんだよ?」


「ははは!思い出したか!?地を舐めるほど感謝してもいいんだぞ?」


「いや、俺気絶してたから思い出すもクソもないんですが……」


「あぁ?!」


 ペコリと頭を下げる。


「でも、ありがとうございます。おかげで俺もイズミも生きてます」


 昔はわからなかったけれど、今は地図を見ればわかる。


 俺達の生まれ育ったカカポ村は山間の僻地(へきち)にあった。


 魔物たちを全て倒したとしても、魔物たちに焼かれて水も食料も無いあの村跡で、子供二人でどれだけもっただろうか?


 一番近くの街でさえも早馬で二日はかかるあの僻地に、駆け付けてきてくれたのだ。


 地を揺らす程の魔物の群れがいたにもかかわらず。



 そう思うと、少し泣きそうになったので頭があげられなかった。


「い……いやぁ。はは、冗談だっつーの。倒したのイズミだし。それにお前だって……」

「ナーシューアー」


 イズミが名を呼び、ナシュアは黙る。


 そしてゴホンと咳払いをして仕切り直す。


「ま……まぁ、じゃあ礼代わりに幻獣探し付き合ってけよ。暇なんだろ?日当も出してやるよ」


 イズミはパンと手を叩く。


「ナシュア珍しく名案!そうしよう!」


「一言余計だな、おめーは」


 まぁ確かに街をぶらぶらしているより有意義だと思うし、滅多に無い機会だと思う。


「役に立てるかはわかんないっすけど……」


「んじゃ、決まりだな」


「ところで何探してるんすか?そんなに小さいやつなんすかね」


「ん?モノケロースって言う生き物。知ってる?角が生えているらしいんだけど」



「封印を破る触媒の材料に角を少しいただけたらと思って探しているんだけれど、どうにも姿を現してくれなくてね」


 ジーオは端正な眉を寄せてため息を吐く。


「この森にいるはずなんだけどね~。ユニコーンしかいないのよね。『知の極致』を冠するこの私も知らない幻獣なんて……本当は存在しないんじゃない?」


 カルラもため息を吐く。


『四極天』とは、それぞれが何等かの極致との二つ名を冠しているらしい。カルラは『知』、ジーオは『技』、ナシュアは『武』。


 そしてイズミは……『人』。


 正直かっこいい。

 

 ……そして、『知の極致』カルラさんは言う。


 この森にはモノケロースがいなくてユニコーンしかいない、と。



 俺はおずおずと手を挙げる。


「いいっすか?」


「許可するよ」


 ジーオはコクリと頷く。


「モノケロースってユニコーンの事っすよ」


 カルラさんはきょとんとした顔で俺を見る。


「えっ」


「確か語源だったと思いますけど。爺ちゃんから聞いた気がする」



 カルラは無言で書物をパラパラとめくると、あるページで止まる。そして少し経ち、顔を背けて大きく長い溜息をつく。


「……はっず」


「はっはっは!『()』の極致に改名だな。よーし、馬探すぞ」


「黙れ『ブ』の極致」


「ん、何か呼び名に違和感を感じるな」


「ふふ、気のせいじゃない?さすがシロウだね。前の石板もシロウが解いてくれたんだよ」


 それを聞いてざわつく一同。


「な……」


 突然の買いかぶりを慌てて否定する。


「いやいいやいや、俺何も言ってないだろ。お前俺を無駄に持ち上げてどうするつもりだよ」


「偽物じゃね?って言ったじゃん。偽物だったよ?石板」


「は?」


「よーし、皆。食べ終わったらもうひと頑張り探そうか」


 おー、と3人の返事が揃う。


 何だか知らないが、役に立てたのなら何よりだと思う。


 

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