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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と勇者

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墓参りと似て非なる物

◇◇◇


 魔王四天王『百獣姫』シアンは言った。『魔王の封印は、かつての勇者が魔王の為に行った』、と。


 きょとんとした俺達を見てシアンは呆れ顔でため息を吐く。


「世界二分割の盟約の件もそうですけれど、どうして人間達ってそんなに伝言ゲーム不得手なんですか?ちゃんと引継ぎしてくれないと困るんですけど」


「いや、そんな事言われたってこっちも困る。お前たちみたいに寿命が長いわけじゃないんだから」


「ねぇ、取り合えず歩きながらにしようよ。ナシュアもう行っちゃったよ?」


「歩くの?なら乗っていく?」


 シアンがそう言い手をかざすと空間がぐにゃりと歪み、ナシュアが乗っても見劣りしないような程屈強且つ黒光りした8本脚の馬が現れた。


 馬はジロリと俺を睨んだかと思うと、鼻を鳴らしてシアンに首を寄せる。


 森で遭遇したら逃げ出す自信はある。一瞬で追いつかれるだろう自信もあるが。


「……そんじゃ人目に付かないところまで」


「了解で~す」


 シアンはにこやかに返事をし、俺達は馬の背に乗る。


 俺とハクとシアンが乗ってもまだまだ背には余裕がある。


「ゆっくり目でお願いね~」


 シアンの言葉に一度短く嘶くと、彼女の要望通りゆったりと馬は歩を進める。




「で、何の為に?」


 カッポカッポと闊歩する八つ足の馬の背でシアンに問うと、彼女はジロリと横目に俺を睨む。


「魔王様のたーめーにっ」


 中々に質問の意図が伝わらず、俺も首を傾げてしまうが相手も同様のようだ。


 シアンも俺と同じ様に腕を組み首を傾げて丁度鏡合わせの様になる。


 その様子を見てハクがクスリと笑う。



「あー、悪い。言い方を変えてみる。『何で』勇者は魔王の為に?」



「勿論それは――」


 シアンは言いかけた後で言葉を止めて少し考えると、意味ありげな微笑みを俺に向ける。



「それは、シロウくんの方がよくわかってるんじゃないですか?」


「……なんだそりゃ」


「ふふふ、とぼけちゃって~。ほらほら、おじさんが先行ってるんでしょ?急ぎますよ~」


 おじさんと言うのはもしかしなくてもナシュアの事だろう。



 シアンの合図で馬は町を目指す。


 漆黒の巨躯を気持ちよさそうに揺らすこのお馬さんはどう考えても目立つのだが、その辺りの考えはあるのだろうか?あるんだよな?人目に付かないところまで、って言ったし大丈夫だよな、うん。



◇◇◇


「おう、やっぱりお前らか」


 村の入り口には黒刀を携えたナシュアが憮然とした顔で立っていた。


「おじさんはやいね~」


 お馬さんの首越しにシアンは手を振り、ナシュアはため息を吐く。


「町はてんやわんやだぞ。巨大な馬の化け物が現れたってな」


 化け物と言う言葉に反応してか馬は一度ブルルッと短く嘶くが、当然ナシュアには通じない。



「ガハハ、田舎町でも名の通った高名な俺様がいて助かったな。ほれ、馬。消えな」


 シッシッと手で馬を追い払うと、気に障った様子でナシュアを睨む。


「おもしれぇ、やんのかこの野郎」


 ニヤリと挑発的な笑みを浮かべて手のひらを拳で打つ。


「はーい、おじさん。うちの子達いじめないでね~」


 呆れ顔で馬を撫でると、空間が歪み馬は消える。


「……一々おじさんって呼ぶな、クソガキが」


 

 きっとナシュアも分かって言っていると思うので一々突っ込まないが、そのクソガキさんはナシュアの10倍以上長生きしていると言う事実。


 シアンは興味深げにナシュアを眺める。


「おじさんより強いのは人間側には何人かいるの?」


「いねぇ」


 間髪入れずに答えるナシュア。


 シアンは彼を観察するように周囲をてくてくと歩きながら考える。


「だろうね。よくもまぁ人間でここまで、って感じがする。あの王子様よりもずっと強そう」


「ははは、そりゃ比べる迄もねぇな」


 得意げにナシュアは笑う。


 俺から比べればナシュアもジーオもシアンもお馬様も強さの違いが分からない。



 シアンは嬉しそうにニッコリと笑う。


「それなら転移に悪さする奴を殺せばイズミ様は安心して暮らせるね。どいつかな?あっ、もしかしてあの時広場にいたとんがり帽子の子?」


「……殺す?」



 その言葉に反応して眉をひそめてしまった俺を見てシアンは困った顔で首を傾げる。


「もしかして、まだ話し合いとかでどうにかなるって思ってます?」


「いや、それは……」


 言葉に詰まる俺に助け舟を出すようにハクが俺の袖を引く。



「話しは後。行こうよ、お墓」


「お、おう」


◇◇◇


 メイの町は『大賢者生誕の地』と言う事を観光に利用して町おこしを図っているようだったが、カカポ村程では無いにせよ都市から離れた場所にある事から寂れた様子の町だった。


「あちらに見えますのが大賢者ゼル記念館で、その先に向かいますと悟りの広場があり、そこには何と大賢者ゼルの銅像がございます」


 何度か訪れた事があるらしいナシュアがノリノリで観光名所の案内をしてくれるが、記念館は休業中で悟りの広場は只の広場で銅像は鳥の糞で白く汚れていた。


「ガハハ、相変わらず寂れてやがるな」


「記念館って何があるの?」


「あー、著書とかサインとか写真とかだな。別に大したもんはねぇよ」



 通り沿いに『ゼル饅頭』と言うのぼりが立っているお店が開いていたので、そこで銘菓ゼル饅頭とやらを4つ買う。


 特別何の変哲も無い薄茶色のお饅頭。


「うん、普通だね」


「……お前失礼な奴だな」


「私もう少しオシャレなお菓子の方が好きだな~」


 口々に無礼な事を言う年長者たち。


 ナシュアは1人だけ追加で買ったゼル団子を頬張りながら道の先を指差す。


「んで、このままグランドワイズマン・ストリートを真っすぐ行くと、偉大なる大賢者様の墓があるぞ。下見いくか、下見」


「グランドワイズマン・ストリート」


 ナシュアの言葉を復唱して指の先を見るが、今通った様な寂れた通りがあるだけだ。この町の人が実際になんて呼んでいるのか興味はあるが、きっと確かめる事は無いだろう。



 そして、グランドワイズマン・ストリートの先に墓地があり、墓地の一番奥のうす高くなっている所に大賢者ゼル墓所があった。


「よう、ジジイ。なにやら悪だくみしてたみたいだからそれを暴く前に取り合えず墓暴きに来たぜ」


 ろくでも無い事を言いながらナシュアはパンパンと手を叩き礼拝をする。


 幸い墓所には誰もいなかったが、ハクは呆れ顔でナシュアを見ながら一輪献花をして大賢者の墓に手を合わせる。


「ゼル。……僕も君にはお世話になったからさ。気のせいだったらいいな、って思ってる。多分、2人も同じだよ」


 そう言えば、ハクがどういう経緯でイズミに同行することになったのかも俺は知らない。いつの間にかイズミに巻きついていて、飾りかと思ったらいつの間にか話し始めていた。で、最近人化できる事を知った。


「ん、シロウ。君も」


 ハクが俺に花を一輪渡すので、同様に献花をして墓を眺める。



 手を合わさずに、ジッと見る。



 この下に、眠っているのはどっちなのだろう?


 身寄りの無くなった俺を引き取り生きる(すべ)を与えてくれた爺ちゃんなのか、復活する魔王を何等かの形で利用しようと謀略を巡らせていた大賢者ゼルなのか。


 正直、暴いた所で何もわからないだろう。


 この墓の下にあるのが、ゼルの骨でも他の誰かの骨でも空っぽでも。



 きっと、こいつがイズミを傷つけた。



 もしあの日、魔物達が村を襲わなければ俺もイズミも今頃平和に暮らしていただろうか?


 あの辺鄙(へんぴ)なカカポ村にずっと暮らしていただろうか?それとももう少し都会に引っ越しただろうか?


 俺はそれを見送るのだろうか?それとも見送られるのだろうか?それとも……、一緒にいたのだろうか?



 詳しい事は何もわからない。


 ただの想像だし、ただの感傷だし、仮定の話だ。


 シアンも、ヴィクリムも、ゼルも、ナシュアも、あの日まで転生した魔王を見つけることは出来なかった。


 じゃあ、何であの時の魔族は的確に村を襲ったのだろうか?


 そして、何故ナシュアは偶然にもあの僻地の最寄の町にいたのだろうか?



 俺は敵を睨みつける様な目で墓を睨み、拳を握っていた。


「……まさか、それも全部あんたの仕込みじゃないよな?大賢者ゼル」



 墓を暴いた所で何もわからない。


 でもきっとこれは、別れの儀式なんだ。



 俺と、ナシュアと、爺ちゃんの――。





 






 





 



 


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