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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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おとぎ話のような村で、悪魔の囁き

◇◇◇


 アルバの街を歩いてみると街のいたるところに瓦礫が残っていて、大型の魔物とやらの襲撃を想起させた。だが、瓦礫の横にはたくさんの露店が並んでおり、まるで何事もなかったかのように(あきな)っているのが印象的だった。


 大型の魔物が街を蹂躙して、100人近い犠牲者が出たそうだ。


 話には聞いていたが、実際に街を歩いてみて俺は首を傾げる。


「どうかした?」


 露店で吹くと先が伸びる笛を手に取りながら眉を寄せる俺を見てハクは首を傾げるが、ピンと閃き呆れ笑いを浮かべながら俺の肩を叩く。


「あ、わかった。それが欲しいけどお金が無いって事?やれやれ、しょうがないなぁ。じゃあ僕がなけなしのお小遣いで買ってあげるよ」


「いや、じゃなくてさ」


 ハクはまた首を傾げる。


「違った?じゃあそっちの光る石?」


「でもなくてさ」


「じゃあ何なんだよ、もう」


 改めて活気溢れる通りを見渡してみると、やはり多くの人でにぎわっている。


「……あんまり大きな声じゃ言えないんだけどさ」



 困った顔で俺に耳を近づける。


「うん、何?」


「これだけの規模の街で、急にでかい魔物が現れて大暴れしてさ。被害が100人って……少ないよな?」


「んー、言われてみれば確かに。滅ぼすつもりなら一息にやっちゃうだろうし」


「じゃあ何で?って思っただけだ。ま、考えてもしょうがない事だろうけどさ」


 ハクはコクリと頷く。


「そ。考えても答えが出ないものは考えてもしょうがないよ。それより目下考えるべきなのはコズミラ達へのお土産だね。何がいいかなぁ」


「ネズミに似た魔物だっけ?チーズでいいんじゃね?」


 俺の提案をハクはケラケラと笑い飛ばす。


「あはは、安直!エビフライかエビ煎餅にしようよ」


「……それお前が食べたいだけだろ」


「自分が喜ぶものを持っていくのも一つの手法だと思うけどね~」


「なけなしのお小遣いとやらで買ったらどうだ?」


「言っておくけど僕にエビフライを食べさせないと、シェリーの森までの馬車代もかかるって事をお忘れなく」


「……はいはい、わかりましたよ」



 街に着いてからはナシュアと別行動をとる事にした。


 曰く、『俺がいると子ネズミ共はブルって姿現さねぇだろ』との事だ。彼は彼で何やら情報収集をするようなので別行動をとなった。連絡方法は無い為、同じ宿を取り、何か用があれば言伝を残すようにした。


 食事をとり、帰りのエネルギー様に持ち帰りでエビフライを10本包んでもらう。


 お土産は結局チーズにした。3種類のチーズの詰め合わせだ。大きい塊がいいか、小さく分けられている方がいいか迷ったが、大きい方がロマンがあるだろうと思い大きいブロックを3つ買う。


 そして、地図を広げて現在地と目的地を確認する。


「オッケー、行こうか」


 ハクは蛇に変化をすると、シュルっと俺に巻き付く。


「服持っててね」


「……了解」


 何となくの背徳感の後、ハクの風魔法により俺とハクの身体は空高く舞い上がり、シェリーの森へと向かった。



◇◇◇


 イズミからの手紙には、事細かに地図が書かれていた。


 その地図には目印の様な物も図入りで描かれているのだが、『赤い実が綺麗』とか『青い鳥が鳴いていた』とかどちらかと言うと目印で無く感想なのではないか?と口元が弛む。


「楽しそうに書いてるね」


 そう言うハクも楽しそうに森を歩く。


「な」


 この森にもきっとその子ネズミ以外に魔物がいるのだろうと思う。だけど、イズミの手紙を読みながら歩くのは不思議と怖くなかった。


 鳥の鳴き声がしたので、顔を上げてみると緑の木々の隙間から青い羽根が見えた。


「あ、青い鳥」


「はは、あれか」


 結局赤い実とやらは見当たらなかったが、暫く歩くと『緑のトンネル』と地図に書かれた場所に着く。


『しゃがまないと危ないよ』と図入りで注意書きがされているそのトンネルを、身を屈めて進む。


 ここを通ればコズミラ達の村があると言う。



 期待に胸を膨らませながら、俺とハクはトンネルを進む。


 その先に明るい光が見えて、トンネルを抜ける。



『まるでおとぎ話の様な』とイズミが称した小さな魔物達の小さな村。




 トンネルを抜けて俺達の目に映ったのは、横たわる家や羽根の欠けた風車。それと荒れた花畑だった。



「え……」



 事態が飲み込めずに立ち尽くすと、どこからともなく声がした。


「何しに来たの?」


 冷たく響くその声を聴いた瞬間に、身体が金縛りにかかった様に動かなくなる。


「なっ……!?」


 すると、誰もいなかったはずの眼前にハクと同じ歳程度の少女がスッと現れる。


「百獣姫……シアン!?」


 百獣姫シアンと言えば魔王四天王の一人だ。


 それがなぜここに?それにこの村の状況は……?


「あれ?私の事知ってる?ま、いいや。どっちでも」


 シアンと呼ばれた少女はスッと掌を俺に向ける。



「死ぬならトンネルの外で死んでね」


 何をするつもりなのかはわからない。だが、その瞬間に背筋に冷たいものを感じ、死がすぐ後ろにいるのを理解した。



「い……イズミに呼ばれて来た!」


 咄嗟に口をついたその一言で、シアンは目を丸くする。


「イズミ様?」


 彼女から感じた威圧感は消え、きょとんとした顔で俺を見る。


「俺は――」


 説明をしようとすると、シアンは掌を俺に向けたまま俺の言葉を制止する。


「あっ、待って!当てるから!もしかして……」


 少し言葉を溜めると、俺を指さして声を上げる。


「シロウくんだ!」


 今度は俺がきょとんとしてしまう。


「合ってます?」


 打って変わって人懐っこい笑顔を見せるシアンにコクリと頷く。


 シアンは満足気に笑うと今度はハクを見て首を傾げる。


「そっちの子は知らないなぁ。……ハッ、まさかシロウくんの彼女!?」


 ハクも金縛りが解けたようで、半ば緊張の面持ちで首を横に振る。



「違うよ。僕は白蛇の神獣ハク。……君とは交易都市シャヤルでお目にかかっているよ」


 ハクの自己紹介を聞くとシアンはパンと大きく掌を鳴らす。


「ハク!知ってる知ってる!あの時イズミ様を止めてた白蛇だ!へぇ~、それは人化(じんか)変化(へんげ)?」


「じ……人化だけど」


「へぇ!かわいいね」


 ニコニコと楽しそうにハクを眺める四天王シアン。


 すっかり先手を打たれて毒気を抜かれてしまったが、そもそもが先手どうこう言う実力差ではない。


「……えっと、殺さないの?」


 一応聞いてみるとシアンは明るく笑いながら否定した。


「あはははっ、まっさかぁ。そんな事したらイズミ様に嫌われちゃうじゃないですか?」


 情けない話だが、その言葉でようやく俺は生きた心地がした。



「イズミは元気なのか?」



 他の何よりも、まず口をついたのはその言葉だった。


 シアンは少し困った顔で笑う。


「うん。いつもあなた達の話をしてますよ」


「そっか。ちゃんとご飯食べてるか?」


「うん。おかわりも沢山してますし」


 

 何でか分からないけど、目の辺りが熱い。


「ちゃんと毎日……笑ってるか?」


 シアンはやはり困った顔で首を傾げる。



「寂しそうに、でいいなら」


「……そっか」


 嬉しい気持ちと悲しい気持ちがまぜこぜの気持ちを、溜め息とともに吐き出す。


◇◇◇


 シアンが言うには、この村は少し前に2人の人間により滅ぼされてしまったらしい。


 そして、その報復としてシアンはアルバを襲い、2人の冒険者を始末したようだった。


 街の規模の割に被害が少なかった事にも納得した。元々その2人が目的だったのだ。



 2人を殺すために、100人近い命が失われた。



 人間としては、怒りに震えるべきなのだろう。


 でも、俺はイズミの悲しむ顔が何より先に浮かんだ。


 俺の表情を確認してか、シアンはピッと指を一本立てる。


「一つ提案なんですけど」


 少し間をおいて、シアンは言葉を続ける。


「シロウくん、君も魔族にならない?」



 そうすれば、イズミ様の側に居られますよ?と、シアンは言った――。



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