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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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5日後にまた

◇◇◇


 商業都市アルバの発着場に人だかりが出来ている。


 多くの富と物資と人が行きかうアルバでもあまり多くはお目にかかれない魔導馬車が到着したからだ。


 ざわめく野次馬たちを他所に落ち着いた様子で御者(ぎょしゃ)が客室の扉を開く。


「長旅お疲れ様です。商業都市アルバに到着いたしました」


 御者が頭を下げ、客室から3人が順に姿を現す。


 先頭はシロウだ。


 まるで有名人の歓待の様な多くの野次馬と謎の歓声にビクッと身じろぐ。


「うわっ、びっくりした」


 原則超上流階級が乗車する魔導馬車が到着した際の発着場ではいつもこのような光景がみられる事を後ろの2人は知っていてシロウを先頭にしたようだ。


 歓声はシロウの姿を見てどよめきに変わりつつある。


『……誰だ?』

『さぁ?』

『ただの貧相な子供に見えるが……』

『ああ見えて貴族なのか?』


 後ろでニヤニヤとしながらナシュアはシロウに耳打ちをする。


「ほら、手位振ってやれよ」


「え、本気か?」


「あはは、そうだよ。マナーだよね、マナー。笑顔でね」


 シロウは若干訝しがるが、苦笑いと共に軽く言い訳の様に手を振ってみる。


 一瞬戸惑いの後でまた歓声が上がりシロウは戸惑う。


 歓声はシロウにでは無く、その後ろから姿を見せたナシュアとハクに向けた物だった。


 元とは言え四極天として名の通った武の極致と称されるナシュアと、人化した姿は知られていないがその透き通るような純白の髪をなびかせて笑みを浮かべる神秘的な少女の登場は、野次馬たちを満足させるに値するものだったようだ。


 シロウも当然それを察するが、やけくその様に有名な振りをして手を振ってみる。


「ガハハ、楽しいだろ?」


「まぁね、少しは」


 恐らくイズミはいつもこんな感じだったのだろうと思うと、言葉通りシロウは少しだけ楽しくなった。


 少し歩いて身分証の確認を行い、入国の手続きを取る。


 基本的にはギルド証が身分を証明する証となる。


「シロウ・ホムラ。グズーリギルド所属。等級青」


「ナシュア。クアトリアギルド所属。等級紫」


「ハク。クアトリアギルド所属。等級紫」


 入国管理官が提示されたギルド証と書類に目を通した後で、三人を見る。


「相違ありませんか?」



「相違ありませーん」


 ニコニコと代表して返事をするハク。


 ナシュアは元々捨て子の様な物なのでファミリーネームが無いようだ。勿論付ける事も出来るし、それを推奨されたが固辞して名前だけの登録となっている。ハクに関しては、便宜上ギルド証があった方が便利だろうとのナシュアの提案で取り合えず用意した物だ。


 ギルド証は非公開の術式を用いてその真贋が正確に判定できるようで、当然正規のギルド証の3人はスムーズに入国が許可された。


「よい旅を」


 ニコリと微笑む入国管理のお役人。


「おう」

「あざっす」

「は~い」


◇◇◇


「さて」


 ゴキゴキと首を曲げて音を鳴らし、ナシュアは俺を見る。


「答え合わせと行こうかね。お前はどうする?」


「勿論、行くに決まってんだろ」


「ようし。ハク、ジーオに繋げ」


 ナシュアの要請に眉を寄せるハク。


「偉そうだなぁ」


 ぶつぶつ言いながらも白く長い髪の毛をシュルッと動かして、俺とナシュアの手に巻きつける。


「はい、どうぞ。ノワ、聞こえる?ジーオ出して~」


『あら、ハク。久し振りね』


 ジーオと共にいる黒蛇の神獣ノワの声が俺の頭に響く。


「おう、ノワ。ジーオ出してくれよ。かつての戦友が呼んでるってよ」


 やはりナシュアにも聞こえているようだ。なるほど、身体に触れていれば会話が出来るのか。便利だな。


『やぁ、ナシュア。僕は今でも友人と思っているけど?』


「そいつはどうも。ナイルって小僧と一緒にいるんだって?何でもジジイの最後の弟子、とかって話じゃねぇか。兄弟子として挨拶の一つでも、と思ってよ」


『……何か裏があるんだろうけど。ナイル、どうだい?』


『えぇ、僕は構いませんよ。僕も昔の師匠のお話を聞かせていただきたいと思っていましたから。出来れば直接お会いしたいのですが……』


「おう。今アルバに着いたとこだ。いつでも良いぞ」


『そうですね……では5日後で如何でしょう?』


 ナイルの言葉にナシュアは眉を寄せる。


「聞こえなかったか?アルバに着いたって言ったぞ」


 やや苛立ちを含んだその声にとぼけた声でナイルは返す。


『あれ?いつでもいいって仰いませんでした?』


「……クソガキが」


『まぁまぁ、こちらも少し立て込んでいてね。彼の言うとおり5日後と言うことで手を打っては貰えないか?』


 穏やかかつ爽やかな声でジーオが仲裁に入る。


『シロウ君、いるんだろ?』


 いるとは言っていないが、ハクから通信が来たって事は俺がいると考えるのもまぁ自然か。


「あ、その節はどうも」


 話をするのはあの御披露目の日……バカ王子呼ばわりしたあの日以来だ。


 その件で嫌みの一つでも言われるかと思ったが、予想に反して彼は凛とした声で、ハッキリと俺に宣言をした。



『僕は世界を救うよ』



 その声には微塵の迷いも無く、明確な信念を感じた。



「お好きにどうぞ。俺はイズミを救うんで」



 声だけの会話なので、当然ジーオの表情は分からない。


 何秒かの沈黙の後で、ジーオが口を開く。


『健闘を祈っているよ。では、また5日後に』


 そう言って謎通信は終わる。



「……性格の悪そうなガキだったなぁ」


 怒り収まらずと言った風にナシュアは吐き捨てる。


「あはは、まぁそれはお互い様だろうね」


 何にせよ5日間時間が出来たって訳か。


「シェリーの森ってどの位の距離なんだ?」


「馬車で数時間ってとこだな。そのくらいの距離ならそいつが飛んでいけんだろ」

 

 ナシュアはちらりとハクを見る。


「うん、正確に場所がわかればね。あっ、まずご飯にしようよ。僕エビフライが食べたいな~」


 快適な空間だったとはいえ長旅の疲れもある。今日は街をぶらぶらして、シェリーの森へは明日行くことにしよう。


 小さな魔物の小さな村。


 何かおみやげとか買っていった方がいいのかな?



◇◇◇


 商業都市アルバの一角にある上流階級用の高級宿。


 その一室にいるジーオ達。


「5日」


 ナイルは言葉を続ける。


「5日時間が稼げました。現時点で一番怖いのはナシュアさんの横槍です。あの人一人でジーオさんかカルラさん、最悪お二人ともが足止めを食らいます」


 ジーオとカルラも神妙な面もちでナイルの話を聞く。


「5日間、彼が大人しく待っていてくれている間に……百獣姫シアンの居城に攻め入り、魔王イズミを封じましょう」


 机に広げた地図には、遠く秘境アシッディア高地に印が打ってある。人里離れたその場所は、シアンの居城の場所だ。


 2人の決意に満ちた目を見て、ナイルはニコリと微笑む。


「ゼルの秘術を以て、世界を救いましょう」



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