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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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小さき命

◇◇◇


「……本当に私が来て平気なの?」


「大丈夫ですってば。よく考えてくださいよ、いつも私とかヴィクリムはお傍にいるじゃないですか」


「確かに……そうね」


 百獣姫シアンに執拗に誘われて、イズミは今日一年振りに城の外に出た。


 鼻歌交じりで踊るように歩くシアンに先導されて、城の外を歩く。


 テラスで感じる物と同じはずのその陽光は、いつもより明るく温かいように感じた。



 シアンの居城は人類未開の地であるアシッディア高地の奥深くに存在する。彼女らにとっては距離などさして大きな問題では無いようで、時折人里に降りては人間の暮らしと文化を楽しんでいるのだ。


「私は詳しくないのでアレですけれど、私達『魔物』とか『魔族』って呼ばれている生き物は基本動力が魔力なので、イズミ様の吸命(ドレイン)の影響は受けないみたいですよ。その辺は人間の魔導士とか学者さんの方が詳しいと思いますよ?私達には直接関係ないじゃないですか」


 そう言ってシアンは笑い、イズミも妙に納得した。


「じゃあ、ウサギとかを抱っこするのもできないのね?」


「あっ、イズミ様ウサギが好きですか!?」


 悲しそうな顔をしたイズミを元気づけるようにニコッと笑うとクルリと一回りして右手をかざす。


 ぐにゃりと空間が歪み、ウサギによく似た毛の長い、目まで隠れたモフモフで丸い尻尾までついたファンシーな生き物が出てくる。


「じゃん、ファリアノピアって言う子です。えへへ、ウサギに似てません?」


「わぁ……、かわいい」


 キラキラした瞳でファリアノピアを見つめるイズミ。両手を出すとピョンと飛び乗ってくる。


「この子は魔物なので大丈夫ですよ」


 得意げに胸を張るシアン。


「ただ、血の滴る肉しか食べないから食事シーンは全然かわいくないのでそこだけ注意ですね~。結構野太い声で鳴きますよ。あはは」


「……そ、そうなんだ」


 引きつった笑顔でそう答えながら、フワフワのウサギを抱き撫でる。


「それじゃ、行きますよ~」


 ぐにゃりと空間が歪み、イズミとシアンはその中に消える。



◇◇◇


「到着~」


 シアンは元気に両手を上げて声を上げる。


 着いた先には彼女の城よりも幾分温度の高い明るい森だった。


「ここは……?」


 ウサギを抱きながらイズミは問う。


「ミニル地方ですね。人間の住処はだいぶ遠いのでお気になさらず」


 シアンの城からは海を越えて隣の大陸だ。


「……そんな距離を一瞬で。カルラの魔法陣と仕組みは近いのかな……?」


「ふふん、人間の魔法って言うのは大概私達の力の後追いですからね。私達の力を模倣しようとして作ったのが魔法って言うやつなんじゃないですか?そこが人間の面白い所ですよね」


 嬉しそうに、楽しそうにシアンは何度か頷いた。


「わかってもらえると嬉しいんですけど、私達本当に人間をどうこうするつもりはないんです。例えば、やろうと思えば国の王様だってすぐに殺せるわけですよ。でも、やりません。理由が無いから」


 一年間、毎日一緒に居てシアンが自分をだまそうとしているわけでは無い事は薄々わかっては来た。だが、そう簡単に割り切れる物でもない。


 いくらかわいらしい少女の見た目をしていたとしても、百獣姫シアンは魔物でありその中でも四天王と呼ばれるほどの頂点なのだ。


「理由があれば……やるんでしょ?」


 困った顔でイズミは聞き、困った顔でシアンは笑う。


「でもそれは人間もやりません?」


 イズミは何も言えず、二人はしばらく無言で歩いた。


 明るい森の、木々のトンネルのような道を歩く。


 やがて、目的地は近づいたようでシアンはまたにっこりと笑ってイズミを見る。


「さて!暗いのはその辺にしておいて!もうすぐ到着ですよ!」


 木々のトンネルの終わりが見え、優しく明るい光が見える。



「うわぁ……」


 トンネルを抜けると、まるでミニチュアの様にイズミの膝の半分ほどの高さの家が並ぶ村がそこにあった。


 チョロチョロチョロと何かが素早く動くと、バタンバタンと扉の閉まる音が連続して聞こえる。


「あはは。みんな~、イズミ様連れてきたよ~」


 一瞬シンと静まり返ると、恐る恐る扉が開き、中からは衣服を纏った二足歩行の小さなネズミのような生き物たちが顔を出した。


「かわいい……」


 ネズミたちは手を上げながら飛び跳ね、口々に何か鳴き声を上げる。


「……な、なんて言ってるの?」


「ようこそイズミ様、シェリーの村へって」


 きょろきょろと周りを見渡しながら、ウサギを抱き口元が弛むイズミ。


「私の事知ってるの?」


「そりゃ知ってますよ。魔王様の生まれ変わりですもの。あっ、魔王様って呼ぶのは禁止してるので安心してくださいね」


 チューチューとやはりネズミのような声を上げて、服を着たネズミはイズミを歓迎している様子だった。


「コズミラって言う子達です。手先がすっごく器用で、こうやって人間の真似をして服とか建物まで作っちゃうんですよ?すごくないですか!?」


 小さな家たちはしっかりとドアも窓もついていて、村の外れには風車も見える。


「うん……すごい」


 シアンもにこにこと微笑ましく村の歓迎を見守る。


「ふふふ、喜んでもらえて何よりです!ここは私も特にお気に入りの村なんです。イズミ様にも気に入ってもらえて嬉しいです!」


 コズミラ達も、他の魔物も、イズミが魔王の生まれ変わりと言うだけで無条件に絶対の好意を向けてくれる。


 シアンやヴィクリムが生まれるずっと昔から不死の存在としてそこに在ったかつての魔王の功績によるものなのだろう。



 村の外れにある歓迎用の大広場に案内され、指先程のサイズの彼らにとっての御馳走をふるまわれる。木の実などが主食の様で、花や樹の蜜も使われて甘味がある。



「シアンは言葉がわかるの?」


「勿論です。伊達に百獣姫を名乗ってませんよ。動物も魔物もぜーんぶの言葉がわかります」


 得意げに胸を張る。


「いいなぁ……」


「イズミ様も完全に封印が解ければわかるはずですよ。……でもその場合は」


「ならいいや」


 シアンの言葉を待たずに首を横に振る。


 封印が解ければ吸命(ドレイン)の効力が上がるからだろうか。或いは、それは四天王の死を意味するからだろうか。


 そして、話題を変えるようにまた村を見てイズミは言う。


「それにしても本当によくできてるね。窓のガラスとかってどうしてるのかな?まさかここで作ってるの?」


「聞いてみましょう」


 そう言ってコズミラの言葉に耳を傾けて、ふんふんと頷く。


「勇敢なオスを中心に遠征隊って言うのが組まれているそうですよ。で、人里から材料を拾ってくるそうです」


「へぇ……。服着てたら怪しくない?」


「あはは、そこはさすがに脱ぐそうです」


「ふふ、そうなんだ」


 笑うイズミを見て、ニッコリとシアンも笑う。


「イズミ様。魔物しか傍にいなくても、寂しくさせませんからね」


 イズミは無言でニコリとほほ笑みを返す。


 そして、歓迎の宴は続く。









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