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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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神獣ハク

◇◇◇


 何時間か歩くとようやく街道に出て、そこで乗り合い馬車に乗ることができた。


 王侯貴族や富豪を除けばまだまだ移動には馬車が一般的な乗り物だ。


「……ねぇ、あの蛇連れているのってもしかして」

「シッ!」

「……全く。ジーオ様の顔に泥を塗って」


 ひそひそと明らかに俺の噂話がされていて中々肩身が狭いが、馬車に乗れたことからも犯罪者扱いはされていないと知りひとまずは安心と言ったところだ。


 俺はジロリとハクを睨み、小声で小言を言う。


「おい、お前が目立つんだとさ。どうにかならないのかよ」


「何で僕のせいにするんだよ。自分の蒔いた種だろ?」


 まぁ、確かにそうだけれども。一々癇に障る白蛇野郎だ。



「出来ないならいいや。悪かったな、無理な事頼んじゃって。ははは」


 ニコニコと安い挑発をすると、神獣様は明らかにムッとした様子で俺を睨む。


「誰が無理なんて言った?無知な君は知らないかも知れないかな?神獣や精霊の類が人の形を取って現れる事もあるってさ。見てなよ」


「あ、ちょっと待て。ここでやるなよ、人目が無いところじゃないとまた噂が広まるだろうが」


「……全部君の都合じゃないかよ、もう」



 そして、しばらく馬車に揺られて街へと着く。


 キョロキョロと人目を憚り、盗人の様に路地に入ると、人影の無い事を確認後ハクを促す。



「オッケー。いいぞ」


 ハクは横目で俺を見て小さくため息を吐くと、目を閉じて集中する。


「なーんか偉そうなのが気になるなぁ。ま、イズミの為と思えば我慢もできるけど――」


 周囲の魔力がハクに集まり、ピカッと一瞬眩い光を放つ。



 すると、そこには俺より何歳か年下と思われる白い髪の少女が立っていた。


 ――全裸で。


 少女がゆっくりと閉じた瞼を開くと、その赤い瞳と目が合う。



「え……あ」


 唖然として、ぽかんとする。


 俺のその阿呆みたいな顔がお気に召した様で、目の前の全裸少女は得意げに両手を腰にやり笑う。


 白い髪は長く、腰のあたりまで伸びる。何も知らない状態でも白蛇の化身と言われれば納得してしまうような雰囲気がある。


「ふふん、どうだ。僕にかかれば人化くらいこの通りさ」


「……マジで?ハクか?」


「他に誰がいるんだよ。覚悟しておきなよ?この僕が人の形を取ったと言う事は、宿も芝居も料金がかかるって事だからね」


 得意げに何だか小さめの脅威を語ってくれる神獣ハク。


「あー、えー、えーっとさ。いくつか聞いていい?」


「勿論。無知は罪ではないからね、ははは」


 いつもなら鼻に付く物言いも、今はそんな些事にかかずらってはいられない。



「……何で女の姿なの?そういう趣味?」


「え、君まさかずっと僕の事(オス)だと思ってたのかい?」


「いやいや、だって『僕』ってさ」


「一人称くらい好きに言ったっていいだろ」



 まさかの僕っ子ハクちゃんだった。


「あー、そうね。まぁ、いいや。じゃあさ、その年齢は?」


「さぁ?人間基準だとこのくらいの年齢になる、って事じゃ無い?あんまり僕の意向とかは反映されてないんだよ。変化じゃなくてあくまでも人化だから」


 なるほど、どのくらい生きているかは知らないがまだまだ子供って事か。


「んで、最後になって悪いんだけど。何で裸――」


 と、問いかけたその瞬間。


「貴様!そこで何をしている!」

「全裸の幼女を確認!至急保護せよ!」

「動くな!逃げられんぞ!」


 憲兵と思しき人物が3……4名、路地の出口を封鎖する。


「え、ま?」


「幼女って……僕?あははは、今度は性犯罪者に転職?忙しいねぇ、君も」


 ケラケラと小馬鹿にした笑い声をあげる幼女ハク。


「イズミはなんて顔をするかなぁ」


「いや、違うだろ。お前が一言言ってくれれば済むだろ。ほら、言えよ」


「ん?何て?」


『刺激しないで早くこっちへ!』

『暴れなければ悪いようにはしないぞ!』


 俺とハクのやり取りの間も、憲兵さん達のお仕事は続いている。


 俺は両手を挙げて敵意が無い事を示し、出来る限りの笑顔で憲兵さんに語り掛ける。


「誤解です。そいつ、神獣なんで。人間じゃないんで。ほら、ハク。戻って見せろよ。いつも通り蛇に」


 ハクを眉を寄せた後でプイっとそっぽを向く。


「やだね。何で僕が君の言う事を聞かなきゃいけないのさ」


「てめぇ……」


 蛇の姿で言われるよりも腹立たしさが倍増な気がするが、ここで手をあげると確実に御用である。



「まぁ、僕も鬼じゃないからね。君が頭を下げて頼むのであれば手助けしてやらない事も無いけど。あはは」


 人間って表情豊かだなぁって改めて思う。


 何だかんだと1年間一緒にいたにも関わらず、ハクは俺が困る事が嬉しいようでニコニコクスクスと笑っている。


 俺はジッとハクを見る。


「何?悪いけど、条件は譲らないよ~」


 笑うハクをそのまま無言でジッと見た後で、寂しそうに微笑んでみる。



「……短い間だけど世話になったな。イズミの事よろしくな」


「えっ」


 驚いた顔のハクを無視して両手を挙げたまま路地の出口へと歩を進める。


「ちょっと!ちょっと待ちなよ!ほら、一言僕にお願いすればちゃんと説明してあげるって言ってるじゃん。ほら!」


 ハクが慌てた様子で俺の周りをチョロチョロ動くが無視してゆっくり牛歩で歩く。


 視界の端で動きまわる白く長い髪がまるで蛇のようだ。


「シロウ!君がそんなに意地っ張りだとは思わなかったよ。冷静になって考えなよ。困るだろ?憲兵に捕まると」


 おろおろと、ちょろちょろと、困った顔でハクは俺の後を追う。


「う~……、わかったってば!僕が悪かった!」



 そして、ハクは憲兵さん達に事情を説明してくれた。


 内心かなりほっとする。広場での暴言に加えて性犯罪者のレッテルまで貼られたら流石にきつい。


「……全く人騒がせな。我々にも仕事があるんだ。下らない内輪もめに巻き込まないでくれよ」


 ハクに上着を掛けてくれた後で、憲兵さんは不機嫌そうに俺にそう言った。全くもってごもっともだと思う。


「お手数おかけしました。本当にすいませんっす、ははは……」


 三人撤収して、残る一人が一応俺の身分確認を行う。


 こんな時の為のギルド証。シロウ・ホムラ 職業 薬師 等級 青。


 ハクは白蛇の姿に戻って見せる。


 立ち去り際に憲兵さんはピッと俺達に敬礼をして、チラリと先に行く憲兵たちを気にした後で一言だけ呟く。


「私はイズミさんに助けられた事があります」



 驚いた顔をした俺にニコリと微笑み、小走りに先を行く憲兵達の後を追って行った。



「……口、にやけてるよー」


 また少女の姿に戻ったハクがだぼだぼの憲兵服を羽織り、自身の口を指さす。


「おっと、悪い。……何か嬉しいよな」


「ま、わかるけど」


 

 周り全部が敵なわけじゃない事が知れただけでこんなに嬉しいとは思わなかった。


「とりあえずご飯にしようよ。お腹減るんだよね、この姿でいると」


「お、そうだな。飯にしようぜ」


「僕エビフライが好きなんだよね」


 鼻歌交じりにそんな事を言うハクを見て浮かぶささやかな疑問が一つ。


「……なぁ。ジーオと一緒にいるノワは……雌だよな?」


 俺の質問にハクは首を傾げる。


「見ればわかるだろ」


「いや、わかんねぇから聞いてるんだよ。どっちつかずの回答やめろよ」


「あはは、じゃあ秘密にしようか。今度会ったら聞いてみな~」


「おい、無駄に引っ張んなよ。気になるだろうが」


 何故か微笑むジーオの横に立つマッチョで色黒な大男の姿を想像して少し複雑な気持ちになった。


「……雌、だよな?」


「しつこいなー、君」



 結局、雌だそうだ。よかったよかった。








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