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第67話 不死の正体

「リスのお墓……」


 祖父母のお墓の隣にあるはずの、小さなリスのお墓は、今は雪に埋もれていて分からない。


「思い出したようだな」

「あなたは……、ロロ?」

「そう。君が来るのをずっと待っていた」


 ノエルは笑顔で頷くと、その姿は溶けるように消え、赤い髪の青年に変化した。

 記憶の中にある姿そのままで、年も取っていない。


「あの時、あなたは私の『心』を欲しいと言っていた」

「うん。君の心は今も大切にしているよ。傷付いてもすぐに治っただろう?」

「傷?」

「何度でも生き返るよ。君の心は永遠だ」

「どういうこと?」


 シルヴァーナは眉を歪めてロロを見つめる。

 ロロはずっと『心』と言っているけれど、何かおかしい。あの時、自分の胸から何かを取り出した。それをロロは『心』だと言っていたが、今考えるともっと違うもののように思える。


「君の心が傷付くたび、すぐに修復している。この中にある限り」


 そう言うと、ロロは右手を差し出した。広げた手のひらの上に、円柱のガラスのケースが現れて、その中に輝く何かが入っている。

 それを見て、シルヴァーナは『心』の正体がやっと分かった。


「心って……、私の心臓……?」

「そう、君の心」

「あなた……、一体何者?」


 子供の時の自分は魔法使いか天使か、そんな風に思っていたけれど、今はそんなものではないことくらい分かる。

 シルヴァーナが問うと、ロロは眉を歪めて弱く首を振った。


「分からない。ただここにいる者……」

「ここに?」

「でもやっと君が来てくれた。もう寂しくない」

「ま、待って! あなたが私の心臓を奪ったから、私は不死なの!?」

「奪ったんじゃない。君がくれたんじゃないか」

「そういうことじゃない! あなたがずっと私を生き返らせていたの!?」


 ティエール神の力ではなく、こんな得体の知れない人に自分の体を作り変えられていたなんて思わなかった。

 そのせいで自分がどれほど苦しい思いをしたか、一気に記憶が押し寄せて怒りが湧いてくる。


「うん。ずっと一緒にいるためにね」

「あなたの言っている意味、分からない! 私の心臓を返して!!」

「君は私のものだよ。心が私のものなのだから」

「違う! 私の心は私のものよ! あなたがこんなことしたせいで、私がどれだけ辛い思いをしたと思っているの!?」


 怒りが収まらずに怒鳴り続けても、ロロは表情を変えることはない。


「君がここにもう一度来てくれて良かった。これでやっと私もここから離れられる。さぁ、私と一緒に行くと言ってくれ」

「……何を、言ってるの?」


 大事そうにシルヴァーナの心臓が入ったケースを抱き締めたロロが、手を差し出す。

 その手を見つめて、シルヴァーナは強く首を振った。


「勝手なこと言わないで! 私はあなたのものじゃない! 心臓を奪ったって心を渡した訳じゃない!」

「え……」

「あなたと一緒になんて行かない! 私はベルンハルトと家に帰る! 私の心はベルンハルトのものよ!!」

「シルヴァーナ!!」


 シルヴァーナが叫んだ瞬間、ベルンハルトが剣を引き抜き駆け込んできた。

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