表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日の華琳さん家  作者: 黒崎黒子
60/121

今夜、別れは訪れる…その前に

広場に建てられた櫓の上で

二人の男と一人の漢女が

江戸の街を見下ろしていた


「いよいよだな、北郷」


「あぁ」


「今夜、この地に別れを

 告げることになるのね」


「彼女たちとも、お別れだな

 大丈夫か?別れは告げなくて」


「…離れがたくなるからな」


街を眺めながら、彼女たちと共に

過ごした日々を思い出す


「違いないわね」


貂蝉も頷きながら森を見回す

そういえば、初めてこの地に降りた日

俺たち、桜の手で木に吊されたよな


「向こうでは今、何が起きてるんだ?」


「年に一度の祭りだ。魏を会場にして

 三国同盟記念を祝っている

 三国の勇将、猛将が集っているぞ」


「奇しくも、別れた時と同じ状況ね」


「あの時は蜀だったっけ…懐かしいな

 みんな、元気にしてるかな」


「それは自分の目で確かめるんだな」


「そうだな」


俺たちは頷きながら三国の

世界に思いを馳せる


「それでは!」


「話も纏まったところで!」


「こちらをご覧ください!」


頷き合う俺たちに声をかけたのは

江戸の三大美女に最強の乙女たち


北辰一刀流創始、千葉周作

神道無念流創始、斎藤弥九郎

国宝級刀鍛冶、虎徹


彼女たちは櫓に立つ一刀を

見上げ笑顔で手を振っていた


彼女たちの後ろには大きな葛篭が六つ

あの葛篭つづらは何だろう?


「あら、朝から見ないと思ったら

 三人とも何かしてたのかしら」


「ふむ、とりあえず。下りるぞ」


「そうだな」


「よ!」


"スタ!"


「ふむ」


"シュタ!"


「ぶるあぁぁ!」


"ドォ―ン!"


三人は櫓を降り、彼女たちの前に立つ



「うわぁ…あの高さを軽く飛んだよ

 この三人。砦くらいの高さはあるのに」


「最早、バケモノよね」


「そういう、私たちも一刀様との

 修行の日々でバケモノに手が届き

 かかってますけどね」


「「あ、あはは…」」


人のことが言えないことに気づくと

三人は顔を見合わせ苦笑する


「朝から居なかったようだが

 お前たち何をしてたんだ?」


左慈も苦笑しながら問いかける


「ふふ…それはですね。これですよ!」


一歩下がり、じゃーん!と三人は

大きな葛篭つづらをアピールする


「さっきから気になってたけど、何?」


「出陣祝です!」


葛篭の中から現れた物、それは


「ん…?こ、これって、鎧!?」


「えぇ!一刀様も実力を着けて

 今では先陣で闘えるほど

 ならば、それに見合った防具も

 必要にですから!」


「凄いな…」


何を使用しているのか分からないが

まるで地獄から這い出て来た魔王が

付けているような漆黒の甲冑


兜はフルフェイスで顔が見えない上に

大きな角がついているせいか

持っているだけの俺ですら

威圧感を感じてしまう

一口で言えば、どこぞのジャッジマスター


「お気に召しませんか…?」


目を潤ませて空が見上げてくる


「ありがとう。素晴らしい出来だよ」


「確かに、これだけの威圧感を

 与えられる甲冑をつければ

 無駄な闘いを避けられるわね

 そこらの賊や兵は逃げ出すわよ」


「流石、虎徹だ。甲冑を打たせれば

 右に出る者はいない」


左慈や貂蝉も用意された甲冑を

身に付け、具合を確かめる


「しかも、軽くて動き易い上に

 視界も日頃と変わりがない」


すべてを着け終えた

『ジャッジマスター左慈』が

くるくると回りながら様々な動きを見せる


「えぇ!ズレや余りもなく

 大きさもぴったりだわ!」


『ジャッジマスター貂蝉』も

左慈を真似て思い思いに動き回る


「どれどれ?ん?少し…重いね?」


兜も着けて立ち上がるが

他の二人のように素早く動けない


「一刀様の甲冑は日頃の鍛錬のために

 お二人の倍の重さにしてあります」


「一刀の重かったよー!

 三人でもやっとだったもん!」


「成る程。それをつけて日頃の動きが

 出来るように成れば、更に強くなれる

 わけか。考えたじゃないか」


JM左慈がこちらを見て頷いた


「男冥利に尽きるじゃない、ご主人様!」


グッ!と指を立てこちらを見る、JM貂蝉


フルフェイス兜で表情は分からないが

きっと素敵な笑顔を向けていることだろう


「ありがとう、空」


「はい!」


空に礼をすると、彼女は笑顔て頷いた


後ろが騒がしいので振り向くと

左慈と貂蝉が騒いでいる

どうやら、鎧に慣れるために

一通り、組み手をしてみるようだ


俺も広場の中央に向かって歩き出す


「桜!」


「うん!一刀も試すんだね!」


一刀の声に頷いた桜は

武器を取り駆け出した


「貂蝉!いくぞ!」


「ふふ!いいわよ!」


離れた場所で二人も調整に入る


「私たちは外から見て異常がないか

 確認していきましょう、蓮さん!」


「ええ、分かったわ」


空の調整を受けながら、相手を変え

場所を変え、武器を変え

皆、鎧がモノになるまで動き続けた


「そろそろ、夕飯にしましょう?」


蓮の声がかかり、辺りを見て驚いた

もう夕方だ。すっかり、日も落ちていた


「こんな時間か。みんな!撤収しよう!」


撤収作業を終えて、ふと、空を見上げと

星が輝く空と大きな満月が目に映る


もう、別れの時はすぐそこまで迫っていた

「今日は私たちが作るよ!」


「桜の手料理か、久々だなー!」


初めて江戸に来た日に

桜の料理を食べて驚いたものだ


桜の手料理は美味しかった

正直、華琳の料理と同等だと思う


「でも、蓮と空は?」


「…私、こう見えて夫も娘もいたのよ?」


蓮が苦笑しながら胸を張る

任せて安心!ってことが正直意外だ


「空は?」


「にこー☆」


冷や汗を流しながら微笑んでいる

こんな、空、見たことないぞ!


「そ、空?」


「が、頑張りますとも!」


笑顔が一転、握り拳をつくり

身を乗り出す


「……させんわ!」


「っ!?きゃ――――!!?」


どこからともなく、左慈がロープを

取り出し、空を縛り上げ天井から吊す


「ふっ……せっかくの飯なんだ

 一口食べれば幻覚幻聴に苦しみ

 ワケの分からない言葉を叫びながら

 床をのた打ち回る恐怖料理など

 まっぴら御免だ!そんなものは

 北郷だけに食わせればいい!」


左慈は瞳に炎を灯して、力の限り叫ぶ

何か、聞き捨てならない言葉があったけど

一番の危険は去ったから良しとしよう


「それじゃ、二人とも頼むよ」


天井に吊され涙を流すメイドを視界に

入れないようにして二人に向き直った


「うん!」


「任せなさい!」


頼もしいよ、本当




「ふぅ…ご馳走さま」


「本当、美味しかったわ~

 いつでも、二人はお嫁に行けるわね」


満足げに左慈は手を合わせる

貂蝉も茶を啜りながら頷いた


「あぁ、本当だな。三人とも可愛いし

 俺が居なくなってもすぐに

 いい人が現れるだろう

 そうなったら、俺に構わず

 『バカ言わないでよ、一刀』…蓮?」


蓮が笑いながら、手をヒラヒラと振る


「ありえない、ありえない

 一刀以上の男なんていないわよ」


「そうだよー!一刀以外の人と一緒に

 なるなんて、考えたくもないよ」


「ごめんなさい。一刀様の

 その願いだけは同意出来ません」


他の二人も似たような反応だった


「本当、想われてるわねーご主人様」


「北郷が帰った後も、想い続けるか

 幸せ者だな、北郷は」


「「「え?」」」


左慈の言葉に驚愕したのは

俺ではなく、当の本人である少女たち


「私たちも帰るわよ?」


「帰る?…あぁ、それぞれの場所にか」


「ううん、同じ場所だよ」


「んー?同じ場所?」


少女たちの言葉に三人は首を捻る

何か行き違いがあるような気がする


「一刀様がこれから向かう世界

 三国時代ですよ」


「私たち、三国時代の住人なのよ」


「「「え?えぇ――!?」」」


今度は俺たちが驚愕する番だった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ