突然のお客様
動かぬ身体に鞭を打ち…服を羽織る
玄関に行くと…
「一刀~♪」
"ぽすん"
桜が胸に飛び込んできた
く…いつもは楽だけど…
今日に限っては…つらい
「お帰り、桜」
「ただいま~♪」
小さな身体で
ぎゅーっと抱きついてくる
桜の頭を撫でながら
玄関に立ったままの彼女に声をかけた
「いらっしゃい。空」
鍛冶屋とメイド喫茶のオーナー
刀匠虎徹(真名:空)であった
「あ…一刀様…///
お、おお、お久しぶりです…」
「空ちゃん、帰りに拾ってきたの♪」
また、物か動物みたいに…
お客様に目を向けると真っ赤になった
彼女が"がば!"と頭を下げた
「半年ぶりだね…元気そうで何よりだよ」
「は、はぃ…一刀様の差し入れには
何度も救われましたから///」
この通り…ピンピンしてますよと
力こぶを作って見せる
うん、女の子らしくて細く綺麗な腕だ
「ははは…!本当に元気そうだ
洋菓子は口に合ったかい?」
俺は『羽十羅』の菓子を
空の様子見がてらによく届けていた
一度も空には会えなかったけどな
「はい…とても美味でした…」
目をキラキラさせ、あらぬ方を向いて
何かを思い出しているようだ
空…よだれがでてる…
「はは…そうか、それはよかった
今度一緒に食べに行こう
新作の菓子も試して欲しいからね」
「宜しいのですか!?是非とも♪」
キラ☆キラ~☆
と目を輝かせて
蓮はポン☆と手を合わせ頷いた
「あら、誰かと思えば…空じゃない」
奥から蓮が出てくる
風呂から上がったのだろう
「あ、お久しぶりですね、蓮さん」
「ええ。そんなところで何でしょ
大したもてなしもできないけど
上がりなさいな♪」
お茶準備するわ~と台所に向かう
「そうだな…桜……桜…?…」
家の主に許可を貰おうと声をかけると
「んー?一刀…ここ私の家だよね?」
桜は目を線に"むー"と考えこんでいた
「桜、気にするな。それよりほら
千葉家のお客様を」
「あ、うん…どうぞ♪空ちゃん」
「あ、はい…お邪魔します、桜さん♪」
さぁ、千葉家に突然のお客様…
いったい何があったのだろう…
「一刀様…お話があって参りました」
正座し姿勢を正した空は一刀を見つめた
「………」
俺は黙って空を見つめ返す
「お預かりしていた九つの武器
打ち直し出来ました」
「ついに…帰ってきたのか」
得も言われぬ思いが胸を締め付ける
「えぇ…ですが…
全ての武器は個性が強く
一つに成ることを拒んでいました』
『北郷が居なくては意味がないのだ
ウチらは皆揃って"魏"なんや
だからこそボクたちは
兄様に会うために気の遠くなる程の
時を越え、道を越えて、国を越えたの~
よく分からんが…私は心に従うだけだ
そう、一刀。あなたが居なければ
意味なんてありはしないのよ』
信頼されてますね…と空は微笑む
確かに彼女たちは『魏』という一つの
旗の元で共に出会い、生きたのだ
そこには俺もいなくてはいけないんだ…と
彼女たちは言ってくれているんだ
「つまり…武器は一つではなく」
「えぇ…九つあります」
「こ、九つ…使いきれるかな…」
「そこは…一刀様の頑張り次第ですわ♪
彼女たちの想いに答えてあげてください
皆、待っていますよ♪」
庭を空は微笑みながら見る
視線先…いつも鍛錬をしている広い庭には
黒に赤の十字と豪華な装飾をあしらった
『棺』が立っていた
「さっきから気に成ってたけと…あれが」
「はい♪一刀様の恋人たちです♪」
……………ふっ
もう、俺はニヒルに笑うしかできなかった




