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Chivalry  作者: 祀木 楓
第1章 始まりの刻
3/6

円卓の騎士

 侍女に通された部屋の扉を開けると、中には大きな円卓があった。



 その円卓



 二つの席を除いた他の席には、先程の騎士達が着席していた。




 マーリンは葵と蘭に目をやると、席に着くよう促した。


「さて。まずは、円卓の騎士について説明せねばならんな」


「円卓の……騎士?」



 マーリンは葵と蘭に説明を始めた。



「まず、この円卓では上下関係はない。円には始まりも終わりもないだろう? すなわち……この円卓においては、王も騎士も関係なく各々が自由に意見を述べられるのだ」



 葵も蘭も、頷きながらマーリンの言葉に耳を傾ける。



「さて、この円卓の騎士だが……この者達は王に永遠なる忠誠を誓っている。この者達は王を、自分の命に変えても守り抜く義務があるのだ」



「命……?」



 その物騒な言葉に、葵が反応する。



「そうだ。逆に、王はこの国の繁栄と富を民に与え続けなければならない。それが王の義務だ!」



 マーリンの説明は、単純で分かりやすかった。



「でも……俺は、この国を知らない! そんな俺に王としての責務が果たせるのか……正直分からない」



 葵は、そう言うと俯いた。



「そんな事ない! 何も知らない私達が王に選ばれた……きっと、それには何か理由があるはずだよね!? 私は……王として、何処まで出来るか自分を試してみたい!」



 葵とは対称的に、蘭は目を輝かせながら言った。



「そうだ。聖剣が間違うはずがない! 先代も、それ以前の王も……皆、この国を繁栄させてきたのだ。今はその意義が見出だせずとも、いつか分かる時が来よう」



 マーリンの言葉に、円卓の騎士達も頷いた。





「さて、騎士の紹介をしよう。現在、騎士たちは男女6名ずつ……計12名居る。彼等は王の護衛だけでなく、一隊の長としての役割も果たしているのだ。……ランスロットとマーガレットに関しては、もう紹介はいらないな?」


 二人はコクりと頷く。




「ランスロットの隣から、ガウェインだ」


「おう!よろしくなっ!!」


 ガウェインは赤い髪と赤い鎧が印象的で、騎士内一かと思える程の筋肉質だった。



「ガウェインの隣が、パーシヴァル」


「新王様……お困りの事が御座いましたら、何なりとお申し付け下さいませね?」


 物腰の柔らかいパーシヴァルは、茶色い長い髪を上で束ね上げ、緑色の鎧と同じ色のその瞳は、まるで宝石のようだ。




「パーシヴァルの隣が、ガラハットだ」


「よろしく……」


 紫色の髪と瞳をもつガラハットは、まだ幼さの残る顔立ちに、他より少し小さな黄色の鎧を纏っていた。



「ガラハットの隣が、ボールス」


「こんなに可愛らしい姫君が新王様だなんて……騎士冥利に尽きるねぇ!!」


 長い金髪に金色の瞳をもつボールスは、純白の鎧を身に纏い、さながらお伽噺に出てくる王子様の様だ。


 ただ……軽そうな人格を除いては。



「ボールスの隣が、ガレスだ。男はこれで最後だ」


「ガレスと申します。新王様の御心のままに……」


 先程のボールスとは対照的な印象のガレスは、長い黒髪に漆黒の鎧を身に纏っていた。




 蘭は、美形な騎士たちに大興奮な様子だった。




「蘭……興奮しすぎだ。とりあえず、座れ!」


「だってー。みんな王子様みたいなんだもんっ。見た事も無いような美形揃いだよ? 私……誰を選べば良いか分かんないよ」


「……誰も選ばなくて良いから!!」


 葵は深い溜め息をついた。




「さて。マーガレットの隣から紹介しよう。まずは、ケイだな」


「ケイ……と申します。以後、お見知り置きを……」


 ケイは腰まで伸びた長い黒髪をかき上げる。髪とは対照的な白い鎧や紫の瞳が高貴な印象を持たせる。



「ケイの隣が、ベディヴァだ」


「新王様!私の事は気軽に、ベティとでも呼んでくれ!」


 女版ガウェインと言うべきか、ガウェインと同じ赤くて短い髪に赤い鎧……姉御肌気質な性格に、好感を持つ。




「ベディヴァの隣が、ユーウェイン」


「ユ……ユーウェインです」


 消え入りそうな小さな声で俯きながら話すユーウェインは、唯一の眼鏡姿で、フワフワの長い若草色の髪と鎧が良く似合う。




「ユーウェインの隣が、ディナダン」


「私はディナ。新王様に神のご加護を……」


 ディナは、金髪に長いストレートのツインテールを揺らしながら頭を下げた。

 漆黒の鎧は、ディナの雰囲気に良く合っていた。



「最後に、フローレンス」


「んふ……フローレンスと申しますわ」


 桃色の長い髪を上で束ね、淡雪の様な白い肌には髪と同じ色の鎧を身に纏っている。


 豊満な肉体と露出度の高い鎧、そして色気のある雰囲気は、騎士と呼ぶには些か異質に感じた。





「さて……これで紹介は終わりだが、まぁすぐに全員を覚えるのは不可能だろう。この1週間は、まずは城内や騎士に慣れてくれれば良い。1週間後より、王としての仕事や鍛練を始めよう。それでは……解散!!」




 マーリンは一方的にそれだけ告げると、足早に去って行ってしまった。




 取り残された葵と蘭はお互いに顔を見合わせる。




「ラン~!!」


 蘭に声を掛けてきたのはボールスだった。


「城内を案内するから付いておいで? 蘭に見せたい、お勧めの場所もあるんだ!!」


「えっと……」


 蘭は葵の様子を伺う。


「行ってこいよ」


 葵の一言に、蘭は一瞬にして笑顔になる。


「姫王……お手をどうぞ」


「……はい」


 ボールスと蘭は手を取り合うと、部屋を後にした。



「さてと……」



 葵は立ち上がる。



「葵? 何処に行くの?」



「俺は……少し休むよ。少し、疲れたから……」



 そう言うと、葵は部屋へと戻った。




 活発で好奇心旺盛な「蘭」




 消極的で慎重派な「葵」




 対照的な二人が造る一つの国




 それが、どんな世の中になるのか、は




 まだ誰も知らない……











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