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レント、聖剣デュランダルについて語る

「ええと、こうでしょうか?」


 サラは持ち慣れない包丁を手に肉を捌く。


「そうそう。上手ね、サラさん」


 にっこり笑ってそう言いながら頷くハルーマ。


「ええと、こうか——あっ」


 同じく包丁を握るビルデだが、切ろうとした肉が滑って飛んでいってしまう。


「ちゃんと反対の手で押さえないと」

「わ、悪い」


 ターシャに言われて謝るビルデ。


 今度はしっかり肉を押さえて刃を入れる。

 次はスッと切ることができた。


「おお……っ」

「上手い上手い!」


「じゃあ、切れた肉は鍋に入れていきましょう」


 サリーに言われ、二人は肉を鍋に入れていく。


「お湯が煮立ったら最初の味付けをします。これはファーラント家秘伝の味なので、これを知るということは……おわかりですね、お二人とも」


「え……?」

「それは……?」


 サリーの言葉に顔を見合わせる二人。

 ここまで教えてもらって、最後まで聞けないのは気になる。

 しかし秘伝など知ったら最後、二人はファーラント家に属することになってしまう。


 どうするべきか……。


「……なにやってるの」


 そこへレントの呆れた声がした。


「秘伝もなにも、そんなの村中同じじゃない」


「もうっ、せっかく盛り上がっていましたのに」


 口を尖らせるサリー。

 どうやらからかわれていたらしい。


 サラとビルデは頬を染めつつ向き直る。


「れ、レント、戻ってきたのね」

「どうだったんだっ?」


「ああ……」


 レントは手にした本を掲げ頷く。


「……なんとかなりそうだよ」


         ○


 出来上がった猪鍋を食器によそい、みんなで食卓を囲む。


 レントとサラ、ビルデ、ハルーマとターシャだけでなく、メイドのマリーとサリーも一緒に食事をする。

 その辺のルールは、王都の貴族の家庭とは随分違う。


 猪鍋はほとんど塩だけで味付けしたシンプルな味だ。


 王都の豊かな味わいの料理も驚きだったが、レントにとってはこの味がやはり舌に馴染んでいた。


「あーいいなー。なんか帰ってきたって感じがするー」


「ふふ」


「ん? なにサラ」


「いえ。なんかレント。ここに戻ってきてから、肩の力が抜けてるなって。普段も自然体だと思ってたけど、それでも気を張ってたのね」


「そりゃそうだよ。慣れない都会に慣れない魔法学園。緊張しっぱなしだったって」


「本当かよ?」


 ビルデが目を細めて言ってくる。


「魔族が占領してる城のど真ん中で『人間に敵意を向けるのは間違いじゃないのか?』とか言わねえだろ普通。気ぃ抜けっぱなしなんじゃねーの?」


「そんなこと言ってたの?」


 サラも目を丸くして言ってくる。


「お兄ちゃんは昔からのんびりしてるからねー」


「ほんと、お父様のそんなところばかり似てしまってねえ」


 ターシャとハルーマもそんなことを言ってくる。


 レントはとっても居心地が悪そうに猪鍋を食べるのだった。


         ○


 食事が終わると、ハルーマとターシャは寝室に行き、レント、サラ、ビルデの三人が残った。

 マリーは余った猪肉の解体をするために屋敷の裏へ行き、サリーは三人にお茶を淹れてくれたあと、マリーを手伝いにいった。


「それで、なにかわかったの?」


 サラに問われ、レントは先祖が記した魔族についての本を開いて説明する。


「謎はまだ多い。けど、とりあえず魔王の復活を阻止する方法については発見することができたよ。まずは二つの魔道具が必要だ」


 魔道具と言っても、そのレアリティは魔力測定器や〈ドラゴンの卵〉とは比べ物にならない。


 デュランダル。

 伝説の勇者ライル・マナカンが持っていたと言われる最強の聖剣。


 ガルドラボーグ。

 伝説の大魔法使いグラン・ファーラントが持っていたと言われる究極の魔導書。


「デュランダルは魔力を大量に吸収することができる。ガルドラボーグは反対に魔力を拡散させることができる。この二つを使うことで、ビルデの中にある魔王の魔力を全て引き出し、世界中に散らすんだ」


「それならガルドラボーグだけがあればいいんじゃないのか?」


 ビルデの問いにレントは首を振る。


「適性のある肉体に入った魔力はデュランダルの吸収能力がなければ、肉体から引き剥がすことは難しいらしい」


「なるほど……」


 デュランダルによって吸収した魔力は、ガルドラボーグで拡散させる前に、世界中に散布しても害のない状態の魔力に変換する必要がある。


 その段階で、六属性の魔法全てを利用した術式が必要になる。

 ここで変換に失敗すれば魔王の魔力は暴走し、どんな悪影響が起こるかわからない。


「その術式については俺がなんとかする。できればルナ校長にも相談したいんだけど……」


 王都にいる彼女と連絡が取れるかどうかは難しいところだろう。


「まずは聖剣と魔導書を手に入れないといけない」


「うーん……」


 レントの言葉にサラは難しい表情で唸った。


「難しいわね」


「そうなの?」


「ガルドラボーグについてはわからないけど、グラン・ファーラントの魔王討伐後の足跡を辿って探すしかないでしょうね。で、デュランダルについては……」


「なんだよ、はっきり言えよ」


 ビルデに促されて、サラは答える。


「所在ははっきりしていないけど、おそらく、マナカン王家の宝物庫にあるわ」


「…………なるほど、難しいね」


 なにしろレントは思い切り魔族に味方してルイン王子を裏切ってきたところである。

 そんなお尋ね者が『魔王復活を阻止するために必要なので王家の秘宝を貸してください』などと言ったところで信用されるはずもない。


「じゃあどうするんだ?」


「うーん、いざとなったら盗み出すか、無理やり襲撃して奪うかしかないのかしら」


「いや、それはさすがにマズいだろ!」


「このままだと私も裏切り者で同罪なのよ。下手をしたらブライトフレイム家丸ごと取り潰しになるかもしれない。そうなる前に一気にカタをつけるほうがいいかもしれないじゃない」


 無茶なことを言い始めたサラに反論したのは意外な人物だった。



「政治的交渉という手段が思い浮かばないのは家風なのか、ブライトフレイム嬢」



「え?」

「あれ?」

「なんでここに!?」


 三人は驚いて部屋の扉のほうを見る。


 そこにいたのは、シフルだった。

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え、みんな古代魔法使えないの!!???~魔力ゼロと判定された没落貴族、最強魔法で学園生活を無双する~
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