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レントたち、はぐれる

 宿屋で魔族に襲われたレントたちは、風魔法で裏手の森へ逃げ出した。


 一緒に逃げたのはレント、サラ、ディーネ、ムーノ、それに護衛の兵士たち。


 先に避難したシフル、ミリア、ルインと彼の付き人二人と、ここで合流する予定だったのだが。


「あれ、いないな」


「まさか、魔族に捕まっちゃったんじゃ……!」


 不安な声を発するディーネに、レントは答える。


「いや、ルイン王子の魔力の流れがここまで来てるから、森に降りたのは間違いない。けど、その後の流れがよくわからないな……」


 宿屋のある崖上からここまでは一直線に流れているが、そのあとが乱れて拡散してしまっている。


「とはいえ、そう遠くではないだろう? 手分けしてお探ししよう」


 兵士たちの一人が言ってくる。


 レントはそれに答える。


「魔族が襲ってくる可能性があるので、バラバラにはならない方がいいと思います」


「魔族? どういうことだ?」


 そう言われて気づく。


 彼らは炎に巻かれていたので、宿屋の前に集まっていた魔族たちのことをまだ知らないのだ。


 レントは彼らに手短に説明した。


「——というわけで、あの町自体、魔族たちの罠だった可能性もあります」


「なんということだ……」


 兵士たちは息を呑む。


 無理もない。あれが魔族の罠だったということは、最初の盗賊騒ぎからレントたちは騙されていたことになる。


 盗賊たちも魔族の変装か、あるいは雇われて襲うフリをしていたのだろう。


「しかし、魔族たちの目的はルイン殿下なのではないか? ならばなおさら早くお探しせねばなるまい」


「そうですね……」


 旅のメンバーの中で一番魔族が襲いそうなのは、魔王を倒した勇者の末裔であるルイン王子だろう。


 しかし魔族が潜んでいるかもしれない夜の森を闇雲に歩き回るのは危険だ。


 どうしたものかと考えているところに、


「おーい、誰かいないか!」


 遠くからシフルの声が聞こえた。


「レントくーん、サラさーん、ディーネさーん、ムーノくー——きゃあ!」


 続いてミリアの声と、すっ転ぶ音。


「タンブルウィード卿のご子息と外交官殿の声だな。殿下も一緒におられるな?」


「そのはずです」


「よし、ではそちらに急ごう」


 兵士が告げ、レントたちは声の方へ歩き出した。


         ○


 しかし、ほどなくしてレントたちは異変に気付いた。


「全然合流できないわね……」


「こちらから呼び掛けても返事がありませんし」


「ひょっとして幻聴なんじゃねえか」


 最後のムーノの言葉にレントは脚を止めた。


「どうした?」


 前を歩いていた兵士が振り向いて言ってくる。


「いえ……宿屋で俺たちは幻覚を見せられていた可能性が高いです。商人たちや宿の人たち、みんな普通の人間に見えていましたけど、魔族だったわけですし」


「シフルたちの声も魔族の仕業ってこと?」


 サラの言葉にレントは頷く。


「このまま進むのはマズいかも」


「だが、ほかに指針はないぞ」


 兵士が困ったように言ってくる。


「そうなんですけど……」


 レントははっきり断言できない。


 先祖の伝説の大魔法使いが残した魔法書を読んで古代魔法の知識を身につけているレントだが、魔族の持つ力についてはほとんど知らない。


 それについて書かれた本がなかったからだ。


 魔族は闇属性の魔力だけを大量に有しており、それを様々な形に変換して独特な魔法を使う、ということくらいしかわからない。


 考えてみれば、大魔法使いグラン・ファーラントはなぜ魔族に関する資料を残しておかなかったのだろう。


 彼は勇者とともに魔王を倒したが、配下の魔族は生き残っていた。


 いずれ、彼らがふたたび人間に害をなすということは予想できただろうに。


「…………」


「レント?」


「あ、ごめん。えっと、どうしようか?」


 考えが逸れてしまい、慌てて意識を引き戻すレント。


 そのときだ。


「っむごっ……!」


 少し離れたところでくぐもった悲鳴のような声が聞こえた。


「た、助けっ……!」


 見れば、兵士の一人が木の上から垂れ下がってきた巨大な蛇に絡みつかれていた。

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え、みんな古代魔法使えないの!!???~魔力ゼロと判定された没落貴族、最強魔法で学園生活を無双する~
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