レントたち、魔族に襲撃される2
シフルとルイン王子、王子の付き人二人が降りてきた。
「なんだ、まだこんなところにいたのか!」
「シフルたちこそ、窓から風魔法で逃げたと思ってた」
「建物の前に魔族がいるんだ! 空を飛んで逃げたりなんかしたら狙撃されるだろ!」
言われてみればその通りだ。
しかしもうそんなことを言っている余裕もなさそうだった。
建物はどんどん崩れて、レントたちの立っている場所もどんどん傾いていっていた。
「とにかく下階の人たちを助けに行こう。サラ、ディーネ、ムーノ、付き合ってもらっていいかな」
「ええ」
「もちろんです」
「ああ」
三人は迷いなく頷く。
それを嬉しく思いながら、レントは残りに告げる。
「シフルとミリア先生はルイン王子と一緒にここの窓から脱出を。建物の裏手側に回れば、魔族は待ち伏せていないはずだけど、一応警戒して。崖を降りたところの森で落ち合おう」
「分かった」
「りょ、りょりょりょ了解よ」
「いいだろう」
三人もすぐに頷いた。
シフル、ミリア、ルインは付き人を連れて、窓から飛び出していった。
ルイン王子の風魔法が五人の身体を運んでいく。
「俺たちも行こう!」
レントたちは階下へ向かう。
レントが水魔法で炎を消し、ムーノが魔法で石材を操り建物の崩壊を遅らせる。
その間にサラが各部屋を巡って護衛の兵士たちを見つけ出していく。
ほどなく、十五人ほどの兵士がレントたちと一緒に一階の食堂にたどり着く。
「これで全員よ」
「分かった!」
レントは消火を続けるが、炎はまだ残っていた。
(火を全部消したら、たぶん俺たちが生き残ってるかどうか確かめるために魔族が乗り込んでくる。その前に逃げ道を確保しないと……)
そんなふうに考えているところにディーネが言ってくる。
「レントさん! 見つけました! 水脈! いつでも吹き出させられます!」
「ナイス! じゃあ、玄関のあたりから、裏手に向かうように、あっちを通って——」
と説明するレントにディーネは頷いた。
「お、おい、なにをする気なんだ?」
兵士の一人の問いに、レントは簡潔に答える。
「滝に落ちて逃げます」
兵士たちがさらに疑問を口にするより早く、ディーネが微量魔力を操り、地下から水を吹き出させる。
魔力を含んだ大量の地下水が魔法の炎を押し流し、ついでにレントやサラやディーネや兵士たちを押し流し、宿屋の裏手の壁を突き破って、裏庭へ流れ出る。
「うわー!」
「火事の次は洪水だと!?」
「神の怒りだー! 世界の破滅だー!」
突然の水流に一部の兵士たちがパニックになる。
しかし、なす術もなく、全員裏庭を通り抜けて、そのまま崖下へ落ちていく。
まさに滝に落ちる状態だった。
「ウィンドプレート!」
レントが風魔法を生み出す。
巨大な空気のプレートがレントたちを下から支え、その落下速度を弱める。
「な、なんだ?」
「こんな巨大なウィンドプレートがあるのか……?」
兵士たちはパニックからおさまりつつもなお驚きを隠せない。
それもそうだろう。
ウィンドプレートは普通、術者一人の足場を形成する魔法だ。
複数人を支えられるような巨大なものは本来ウィンドフロアと呼ばれ、違う術式が必要になる。
「すごいな、これが魔力ゼロなのにファーラント家の血を引く者の実力か」
「魔力ゼロなのにすごい」
「魔力ゼロでこれとは……」
魔力ゼロ魔力ゼロ連呼しないでほしい。
ちっとも褒められている気がしなかった。
レントは苦笑しつつ告げる。
「このまま下の森に着地します。ルイン殿下たちが待っているので合流しましょう」
しかし——そう簡単にはいかなかった。





