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レントたち、ムーノをつける

 放課後。


 レント、ディーネ、サラは寮のムーノの部屋に向かった。


 サラは気まずそうに、レントとディーネの後ろを歩いている。


「ムーノさん、大丈夫でしょうか」


「ミリア先生の話だと風邪ってことだったけど……」


 ディーネとレントの言葉に、サラは小さく鼻を鳴らす。


「ふん、そんなわけないわよ。どうせ文字を覚えられないのが嫌になって——なによ」


 途中でディーネの膨れっ面に睨まれて、サラは言葉を止める。


「もうっ、ムーノさんと顔合わせてそんなふうに言ったりしないでくださいねっ」


「わ、わかってるわよ……」


 サラは気まずそうに頷く。


 サラがディーネに押されるのも珍しい光景である。


 サラ自身も言いすぎたと思っているのだ。


 レントは二人の様子を見て苦笑しつつ歩を進めて——目的の扉が開くのに気づいて足を止める。


「どうしたの、レント」


「しっ、見て」


 小声で言い、指をさす。


 見れば、ムーノが部屋から出てくるところだった。


 あたりを見回すようにしてから、寮の街側の出口のほうへ歩いていく。


 いつもは着崩している制服を、やけにしっかりと身につけていた。


「……なにあれ。仮病ならせめて家でおとなしくしてなさいよ」


「誰かに会いにいくのかな?」


「デートですね!」


 ディーネがキラキラした目で声を上げた。


「あんなにしっかり服を着て、周りを気にしながら出かけるんですから、デートに決まってますっ」


「ディ、ディーネ? なんでそんなにテンション高いの?」


「行きましょう! 後をつけますよ!」


 フンスッと鼻息荒いディーネに引っ張られるようにして、レントとサラもムーノを追いかける。


         ○


 王都の街を歩いていくムーノ。


 その後を隠れながら追いかけるレント、ディーネ、サラの三人。


「目的地は決まってる感じね」


「やっぱりデートですよ。約束した場所に向かってるんです」


「そうかなぁ……」


「あ、お店に入りました!」


 そこはパンとお菓子を売っている店だった。


 三人が窓から覗き込むと、ムーノは店員の女性となにやら話をしている。


「ひょ、ひょっとしてあの人がデートの相手でしょうか?」


「ありそうね」


「そうかなぁ……」


「あ、手を握ってます!」


 よく見れば手を握っているのではなく、お金を渡して商品を受け取っているだけだった。


 ムーノは両手に山のようにパンとお菓子が詰まった紙袋を抱えて店を出る。


 レントたちは慌てて路地に隠れた。


「ずいぶんたくさん買ったわね」


「き、きっと食欲旺盛な彼女さんなんですよ」


「そうかなぁ……」


 レントはだんだん疑問に思えてきた。


 ムーノはそのまま道を進み、王都の外縁までやってくる。


 この辺りになると道は細くなり、古いボロボロの建物が多くなる。


 あまり安全とは言えない場所ではある。


「こんなところをデートの集合場所にするかしら」


「そうですね……」


「あ、建物に入るみたいだよ」


 レントが指摘したとおり、ムーノは、周りに比べれば比較的大きくて丈夫そうな建物に通じる柵をくぐった。


 それと同時に、その建物からわっと大量の子供が飛び出してくる。


「ムーノ!」

「ムーノにいちゃん!」

「ムームー!」


 口々に彼の名前を呼びながら、飛びつく子供たち。


 それをムーノは笑顔で受け入れる。


「おう、元気かお前ら」


「いい匂い!」

「それなに?」

「美味しそう!」


 子供たちは即座にムーノが抱えている紙袋に注目する。


「落ち着け! この食い物は逃げねえぞ」


 ムーノはそう言うと、紙袋からパンやお菓子を取り出し、子供たちに渡していく。


 子供たちは目をキラキラさせてそれを受け取っていく。


「おや、思ったより早かったな」


 建物から杖をついた老人が出てくる。


「おう親父。まだくたばってなかったか」


「はっはっは、お前より先にくたばってたまるか」


「冗談じゃねえぜ。そんなに長生きしたら尻尾が生えてくるぞ」


 軽口を交わし合う二人。


 どうやらここはムーノが暮らしていた孤児院のようだ。


 老人は院長なのだろう。


「ちょっと時間が空いたんでな。顔見にきたんだよ。みんな元気そうだな」


「ああ。なんも問題ねえよ」


 ムーノと院長は子供たちを眺めながら言葉をかわす。


 子供たちはムーノが持ってきたパンとお菓子に夢中だ。


 そんな様子を眺めていたレントたちは小声で言う。


「帰ろうか」


「そうね……」


「そうですね……デートじゃなかったみたいですし」


「こだわるね」


 ディーネの言葉にレントは苦笑する。


 と、そのとき、子供の一人の声が耳に飛び込んできた。


「ねーね、ムーノはすごい魔法使いになったの?」


「…………」


 ムーノの答えは聞こえてこない。


 レントたちはふたたび彼らの様子を伺う。


 子供の問いに、息が詰まったように言葉を返せないムーノ。


 そんな彼にほかの子供たちも無邪気に問いかける。


「どんな魔法使えるようになったの?」


「なにかやって見せて!」


「ねえ、魔法使いってドラゴンも倒せるんでしょ!」


「ムーノもドラゴンやっつけられる?」


「あ、ああ……」


 ムーノは引きつった笑みを浮かべ、曖昧な頷きを返すだけ。


 その表情を見て、レントは悟った。


 ムーノはたぶん、Aクラスとの交流授業で自分だけが活躍できなかったことをずっと気にしていたのだ。


 そして、周りに比べて自分の魔法の学習が遅れているのは、文字が読めないせいだと考えている。


 そこに、昨日のサラとの激突があった。


 授業を休みたくなる気持ちもわかる。


「お、オレは……」


 子供たちの言葉に答えられず、ムーノが拳を握りしめる。


 ギリッと歯を噛みしめる表情。


 悔しさをにじませる彼の姿を見て、レントは思わず飛び出していた。


「当たり前じゃないか!」


「れ、レント!?」


 目を丸くするムーノ。


 レントは子供たちに向かって続ける。


「ムーノは天才だよ。ドラゴンだってきっと倒せる。俺たちの大事な仲間だ」


「お前、どうして……って、サラとディーネも!」


 仕方なく出てきた二人を見て、ますます目を丸くするムーノ。


 どうやって言い訳しようかと考えているところへ、思いも寄らない声が響いた。



「それなら、僕と勝負しようじゃないか!」



 レントやサラ、ディーネのさらに背後から、シフルが姿を現した。

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え、みんな古代魔法使えないの!!???~魔力ゼロと判定された没落貴族、最強魔法で学園生活を無双する~
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