30 耐性
その日の夜、私の部屋にリリアとイリス、それと医者が集まっていた。
私はこれから何をするのか聞いていないのだけどね。
「ねえ、リリア。これから何をするの?」
「お嬢様にはこれから毒を飲んでもらいます」
「え!毒」
毒って言ったら私が思いつくのは最悪死んでしまうかもしれないあの『毒』のことよね。
「毒なんて飲んだら、私死んじゃうかもしれないじゃない。私が死んでもいいの」
「大丈夫です。死なないギリギリの量をお嬢様には飲んでもらうつもりなので死にはしませんよ。それに万が一に備えてこうして医者にも来てもらっているのですから」
「本当ですか医者」
「ええ、飲む量さえ間違えなかったら即死はしませんから大丈夫ですよ」
医者、つまり即死以外はあり得るということですね。はあ。
「まあ、解毒剤もありますが、もし飲む量を間違えたら即死ですけどね」
医者の言葉の後に「ひ、ひ、ひ」という、恐ろしい笑い声が聞こえたのは私の幻聴よ。それしかありえないわ。
「でも何で、毒なんて私が飲まないといけないわけ」
「毒への耐性をつけるためです」
「そんなの必要なのかしら」
「必要です。お嬢様はいつ毒を盛られてもおかしくない立場にいるのです。ですからお嬢様は毒への耐性を持っている必要があります」
リリアの言うとおりね。私はこの国の宰相であるお父様の娘だから、お父様の政敵に命を狙われてもおかしくないからね。
「分かったわ、やりましょう」
「では、今日はこの毒を飲んでください」
医者は、そいう言うと何か液体の入ったコップを渡してきた。
「これを飲めばいいのね」
私は医者からコップを受け取り、一気に飲み干した。
「……ど、どうですか、お嬢様」
リリアが緊張した声で言ってきた。しかし、
「?」
私は何も感じなかった。というか普通にお水を飲んでいる感じだった。
「ねえ、医者これって本当に毒が入っていたのかしら。普通の水に感じたのだけど」
「確かに毒を入れたのですが」
医者は何かを考え始め、
「なるほど、そういうことでしたか」
一人で納得していた。
「医者どうしたのですか」
私は医者に聞いた。
「お嬢様に毒が効いていない理由ですが多分、お嬢様はもともと毒の耐性をお持ちだったのでしょう。それもかなり強い毒の耐性を」
「確かに、そういうことならお嬢様に毒が効かない理由も分かりますね」
どうして私が毒の耐性を持っているのかは知らならないけれど、そういうことなのであればつじつまが合う。
「でも医者、私の毒の耐性が強いというのはどういうことなのですか」
「ああ、それはお嬢様の飲んだ毒の量が人によっては、死んでしまう可能性があるぐらいの量だったからです」
「はあ!?」
私もしかしたら死んでいたかもしれないの。
「医者本当はどれぐらいの量を飲んだらよかったのでしょうか」
「ちょびっと口に含むぐらいですね」
「はあ!?」
いやいやおかしいでしょう。普通、渡されたら渡された分飲まないといけないと思うでしょ。
ま、それは置いておいたとしても明らかに量多かったね。私ごくごく飲んだからね。
「普通、毒と聞いて元気にごくごくと飲む人はいませんからね。お嬢様の飲みっぷりにはびっくりしましたよ」
「ははは……」
医者の言葉に私は苦笑いすることしかできなかった。
※ご感想、ご意見お待ちしています。
※間違い等がありましたら、報告していただけると嬉しいです。




