29 ポルトの苦難
それから数日後。屋敷にとリーシャがやってきた。
「初めまして、リーシャさん。私はユリシア様の侍女を務めているリリアといいます。ユリシア様からあなたに侍女の仕事を教えるように言われているわ。よろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします」
「よろしく、リリア」
「って、ユリシア様、何をなさっているのですか」
現在、私はリーシャと並んで、リリアの講習を受けようとしていた。
「イリスが、ポルトに剣術を教えているから、私、暇なのよね。だから、リーシャと一緒にリリアの講習を受けようと思ったのよ」
とりあえず暇なのよね。ポルトと一緒に剣術をするのも良かったけど、どうせ午後から剣術の稽古には参加するから、別にいいやと思ったから、リリアの講習を受けようと思ったのよね。
後は、書庫で本を読むという案もあったのだけど、書庫の本は大体、読み終えているのよね。
「リリアさん本当にいいのですか」
「ええ、かまいません。というか逆に目の届くところにいてくださった方が安心ですから」
「というと、」
「ユリシア様はいきなり何かをし始めるところがありますから」
「何かとは?」
「色々です」
何よリリア、私のことを問題児みたいな目で見て。
「はあ、それでは、講習を始めますよ。あ、そうそう。たとえお嬢様であっても手は抜きませんからね」
「分かっているわよ」
リリアって、勉強を教えてもらっている時もそうなのだけど、何事にも手を抜くのが大嫌いな性格なのよね。まあ、私はリリアのそういったところが好きなのだけどね。
「では、講習を始めます。よろしいですね」
「「はい」」
私とリーシャは声をそろえて返事した。
※※※
その日の午後、私は屋敷の庭先にイリスとポルトとともにいた。
「それでは、午後の稽古を始めたいと思います」
「あの……」
ポルトがおそるおそる手を挙げた。
「なんですか」
「なんで、ユリシア様がいるんですか」
「え、もちろん、私も参加するからだけど」
ポルトは何を言っているのかしら。
「え、本当ですか」
「本当です」
イリスがそっけなく返事した、。
「ついてこられるんですか」
「大丈夫です。午後からはユリシア様用のメニュー行いますので」
「それでも……」
「大丈夫よ。私は毎日やっているのだから」
ポルト心配しすぎよ。私は三年間イリスから剣術を教わっているのだから。
「――よしやった。ユリシア様のついてこられるメニューなら、朝の半分ぐらいだろう。それなら俺も余裕だ」
ポルトは、小声で誰にも聞かれないように呟いた。自分が的外れなことを言っているとは知らずに。
「さっそく稽古を始めますよ」
この時ポルトにとっての真の地獄が始まったのだ。
ポルトは、ユリシアが毎日イリスと行ってきたメニューが朝、自分がイリスとやったメニューの半分ぐらいだと思っていた。
しかし、現実は逆である。ユリシアのメニューは朝からポルトがやっていたメニューの二倍かそれ以上の量なのだ。朝の稽古でもポルトにとっては相当きついものであった。それが、二倍になったらどうなるか……
結論だけを言うと稽古が終わるとポルトはいろんな意味で動けなくなった。
補足
ポルトは、リーシャと一緒にアクシス公爵家の私兵に連れられて、帰りました。
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