28 どうしてこうなった
私は、今非常に困っていた。
どうしてこうなったのだろうか。
「どうか、私たちの無礼をお許しください」
「ど、どうか命だけは」
ポルトとリーシャが兄妹そろって私の前で土下座しているのだけど。
というか、この状況を作り出した張本人である医者は、イリスと楽しそうに談笑しているし。そっちの方がよっぽど無礼な気も……
「うーん。そんなことを言ったって……」
「なんでもしますのでどうか、どうか」
リーシャ、人の話は最後まで聞こうよ。私は全然あなた達が私に無礼なことをしたとは思っていないし。罰を与えようとも思っていないし。
「大丈夫よ。別にあなた達を処罰しようなんて考えていないし」
私は優しく微笑んでから言った。
「ありがとうございます。しかし……」
「どうか、したの?」
「私たちが何かをもらうばかりではいけないと思ったもので。それに私はユリシア様に命を助けてもらったわけですから」
「別にいいのよ。民を守り支えるのは、その地を治める貴族の役割なのだから」
私たち貴族は民あってこそ成り立つもの。その貴族が民のことを考えないでどうするというのかしら。
「ですが、私は、私の為に尽くしてくだっさったユリシア様のお役に立ちたいのです」
「俺も。妹をリーシャを助けてくれたのだから何かしたい」
二人とも、曇りのない真っ直ぐな目。二人の意志は私が何を言ったところで変わらないかもしれないわね。はあ、仕方ないか。
「分かったわ。じゃあ私のところで何かしてもらうことにしましょうか。
二人とも何かしたいことはあるかしら」
「私はユリシア様の侍女をしたいです」
リーシャは、侍女ね。今のところ私の侍女はイリスとリリアの二人だけだから丁度いいかもしれないわね。
「お、俺は、騎士になる」
ポルトは、騎士か。うーん、大変かも。さっき普通ぐらいの実力しか持たない私に倒されちゃうのだから、相当努力しないと私を守る騎士にはなれないかもね。普通、守る側が守られる側よりも強くないと、護衛する意味がないからね。
「二人のやりたいことは分かったわ。リーシャは、イリスとリリアから侍女の仕事について習うとして、ポルトは……。そうね、まだ、そんなに強くないし、今、私兵の中に入って訓練しても舐められるだけだし、少しの間、私と一緒にイリスと剣術の基本をしましょうか」
「ありがとうございます。ユリシア様」
リーシャは嬉しそうだ。しかし、ポルトは不満そうな顔をしていた。
「俺は喧嘩は強いぞ」
「喧嘩と剣術はまた別物なのよ。ポルトがいくら喧嘩が強いと言っても、私に倒されるようなレベルじゃダメなのよ」
「……」
ポルトはぐぅと押し黙った。
「大丈夫よ。イリスは私の侍女であるとともに私の剣術の師匠でもあるのだから。私も全然勝てないし。イリスは教えるのが上手だからポルトもすぐに強くなるわよ」
イリスには本当に勝てないのよね。
「分かった」
ポルトはしぶしぶだが、うなずいてくれた。
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