26 変なやつ
ポルト(少年)視点です。
俺の名前は、ポルト。
アクシス公爵領の領都の端に妹と一緒に住んでいる。
両親は、もう死んだ。
俺の両親は小さな商店をしていたのだが、数年前に商品を運んでいた時に山賊に襲われて、死んだ。
その後は、両親の残したお金を少しずつ使って何とか生きてきたが、この前そのお金がなくなった。しかも、そのタイミングで妹が病気になった。
医者に診てもらおうにもお金が足りなくて、俺は盗みをすることにした。
盗み易そうなやつだけを狙って、お金を盗む。
今までに、医者に診てもらうためにかかるお金の大半を貯めることができた。
今日も俺は町に出て盗みをし易そうなやつを探していた。
よし、あいつにしよう。
俺が見つけたのは、二十歳ぐらいの女に連れられた、銀髪の女の子だった。
先程、懐からお金を取り出して、代金を払っているところを見たから、お金を持っているのは確認したいる。
俺は、女と少女が話している近くを通り、お金を抜きとった。
よし、気がついていないな。
俺は小走りで、少女から離れ、薄暗い路地に入った。どれぐらいお金を持っているのか確認するためだ。
「意外と持っているな」
俺は、予想以上にあの少女がお金を持っていて驚いた。
「これで足りるかもしれない」
「何が足りるのかな?」
小さな少女の声が俺の耳に届き、俺は声のした方を向いた。
「お前!」
そこにいたのは、俺がさっきお金を盗んだ少女と女だった。
俺は、焦った。
多分あの二人は、俺がお金を盗んだことを知っている。
やばい、捕まる。
捕まったら妹の風邪を治せない。
俺は、冷静な判断を失い、少女に襲いかかった。
「ふーん、そうくるのね」
少女は、余裕のある笑みを崩さず、動かなかった。
そして、俺が殴りかかった。
しかし、俺の拳は少女には届かず、俺の体はいつの間にか空中を飛んでいた。
「ぐは!」
俺は意識が朦朧として一瞬、一体何が起こったのか理解できなかった。そして、意識が鮮明になっていく中で、少女の拳を俺が喰らったのだと理解した。
「ねえ、君。誰に手を出そうとしたか分かる?」
少女は、キョトンとして話しかけてきた。
「一体、何の、話だ」
声を出そうにもさっきのダメージで声がはっきり出せなくなっていた。
「そう、知らないのね。じゃあ、まあ、いいわ」
俺は、少女が何を言いたかったのか理解出来なかった。
「ところで、お金が必要だったの?」
「ああ、妹が病気にかかって、治すのにお金がかかるんだ」
俺は、少女にお金のいる理由を自然に言っていた。
「そう……そんな理由なら良かった」
「?」
俺は、少女の言っている言葉の理由が分からなかった。
「ねえ、君。君の妹のところに連れてってよ」
「何で」
「お医者さんを紹介してあげる。ついでにお金も貸してあげる。ううん、お金はあげるわ」
「何で、そんなに親切にするんだ?」
親切にされ過ぎて逆に気持ち悪い。絶対に何か裏があるそう俺は思った。
「何でって、困っている人がいたら助ける。当たり前のことじゃない」
少女は、純粋に答えた。
俺は、不思議な少女だと思った。
人のために尽くすことに何のためらいもない。
その人が幸せになれるために一生懸命になれる。
この少女は、とても良い人なのだろう。
そう思った。
「そうか。分かった、ついてきてくれ」
俺は、少女と女を案内して、家に戻った。
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