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25 町

 私が屋敷に戻って数日が経った。

 この数日で分かったことなのだけど、以前よりもスタミナがついて、イリスとより長い時間打ち合えるようになりました。ま、当たり前だよね。ほぼ毎日、野山を走り周ってたのだから。


 勉強の方は、この三十日間の遅れを取り戻すかのごとく鬼のスピードで進んでいます。それでも私は余裕でついていけるのだけどね。

 でも、それに加えて礼儀作法が本格的に始まって気が滅入りそうだった。しかも、ダンスの練習まで。

 私、前世で音楽はからっきしだったのよね。それが引き継がれているみたいで、なかなか上手にできなかった。


 で、今はイリスと一緒に町に出てきた。

 リリアに、『町に行く許可を出さないと、また山籠りする』とおど――説得し、渋々OKを出させた。ま、イリスが護衛兼監視役として付いて来るというのを条件にされたけど、それぐらいだったら別に構わない。


 私は、朝から事前に買ってきてもらった平民が普段着る服に着替えて町に出た。

 屋敷に戻って来るときは少し見ただけだから、じっくりと町の様子を見るのは初めてだ。

 リリアから少しだけお金をもらっているので、買い物をしようと思えばできる。

 私は、イリスを引き連れて、大通りの露店から見て回ることにした。雑貨やちょっとした宝石、食料品まで多種多彩なお店があって見ているだけで楽しかった。


 そんな時、いい匂いが私の鼻をくすぶった。私は、匂いに釣られて匂いのする方に行くと串焼きの屋台がやっていた。小腹が空いてきたので丁度良いと思い、串焼きを買うことにした。


「お母さん、串焼き買って」

「いいわよ」


 お母さんとは、イリスのことだ。今の私たちは王都から最近引っ越してきた親子ということにしている。


「おじさん、串焼き二つちょうだい」

「あいよ。串焼き二つで銅貨十枚だ」

「これでいい?」

「おう。ほれ、串焼き二つ」


 私は、おじさんから串焼きを受け取った。

 おじさんの串焼きは、タレのいい匂いがして美味しそうだった。


「はう」


 私は、一本をイリスに渡し、もう一本の方にその場でかぶりついた。

 串焼きからは、肉汁が湧き出してきて、とてもいい具合だった。しかも、タレがいいアクセントになってより美味しくなっていた。


「おじさん、串焼きとっても美味しい」

「そうだろ。俺はこの道二十年。串焼き一筋で商売してきたからな」


 確かにこの味は、それ相応の時間をかけないと作り出せないだろう。それをこの人はやった。私はこのおじさんのことが尊敬できる気がした。


「ところで、お嬢ちゃん、この辺りじゃあ見ない顔だな」

「最近王都からここに引っ越して来たんだ」

「ほう。そうだったか。そりゃあいいことしたな。この領は、とっても住み易いからな」

「そうなの?」

「ああ。税は、そこまで多く納めなくていいし、活気もある。何よりこの領の領主様はいい人だからな」

「へー、そうなんだ。ありがとうね、おじさん」

「おう」


 お父様は、民たちから愛されているのね。それは、とってもいいことだわ。


「イリス次はどこに行こうか」

「そうですね……では、次は商店の多いところに行って見ましょうか」

「そうね。そこに行きましょう」


 私たちは、商店の多いところにやってきた。こちらも活気があって楽しそうだ。

 このエリアには、商店や大きな商会の支店などがあり、良い品でより多くの物が売られていた。

 私は、きょろきょろしながらいろんなお店の商品を見てまわった。

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