23 説教
「隊長、お嬢様って誰のことですか?もしかして、このクソガキのことを言ってるんですか」
本当にわかってなかった。
「馬鹿、この方にそんな口の利き方をするな。この方はな、アクシス公爵家令嬢ユリシア・ティオ・アクシス様だ」
「え、このクソガキがですか?」
「馬鹿!その呼び方をやめろと言っているんだ」
衛兵は、隊長にゲンコツを喰らっていた。痛そう。
「あのとりあえず、私の侍女を連れてきてもらえますか。そしたら私が本物かどうか確認できると思うので」
「はい、分かりました」
隊長はそう言うと、屋敷の方へ走っていった。
「あ、そうそう。ねえ、あなたこれを運んでくれない」
私は、衛兵を手招きした。
「どれだ?」
衛兵は、近づいてきて、私が狩った鹿を見た瞬間、
「うわ!
ど、どうしたのですかこれ」
「うん? お土産として帰ってくる途中で狩ってきたの」
「やっぱり、お前偽物だろ。普通貴族の子供がこんな事をするはずがないからな」
衛兵の疑いは、晴れてないみたいだった。
「まあ、そうなるよね」
最近は、常識人のバルドルとしか話していなかったお陰で、私の常識が常識の方に矯正されかけていたので、衛兵の感覚も分かっていた。
「でも、本当に私がユリシア・ティオ・アクシスなんだけど」
「ふん、下手な嘘はつくな! 侍女たちが来るまでもない。お前は、ユリシア様を語る偽物だ。よって不敬罪で、死んでもらう」
衛兵が、身につけていた剣を抜いて構えた。
でも、構えを見ただけでも弱そうに見える。というか、隙がありすぎじゃない。
そんなのじゃあ、どうぞ攻撃してくださいと言っているようなものよ。
「一応聞くけど、あなた剣を向けたからには、もちろんやられる覚悟もあるわよね」
「ふん。お前みたいなクソガキが俺を倒せる訳がないだろ」
一体どこからその自信が湧いて来るのだろう。私からすれば、あなたが私を倒せる訳ないじゃない、と言いたいわ。
「それじゃあ」
私は、衛兵の構えの隙に走り込み、みぞおちに一発拳を叩き込み、続けて衛兵の体を蹴り飛ばした。
うん、予想通り、というか予想以上に弱かったね。
みぞおちにパンチを入れた時点で、衛兵は意識が朦朧としていたようだから、もうあの人意識ないね。
さて、この人どうしよかな」
「お嬢様!」
おー。丁度いいところでイリスがやってきた。てか、イリス走るの速いね。隊長さんは、まだ遠くにあるんだけど。
「イリス、ごめんねー。って、うわ!」
イリスがそのままの勢いで私に抱きついて来ました。というかイリスが速くて怖かった。けど、ま、いいか。
「お嬢様、本当に心配したのですよ」
「ごめんなさい。今回はハッチャケ過ぎたわ」
「いいですよ。ただし、今回のようなことは、事前にに言ってからしてください」
「うん、分かったわ。でも、言ったらやってもいいのよね」
「お、じょ、う、さ、ま」
「げ!?」
リリア。いつの間に。というか、もしかして今の聞いちゃった。
やばい、リリアのあの地獄のお説教タイムが始まってしまう。
「お嬢様、とりあえずそこに正座していただけますか」
「――はい!」
訂正。もう始まってました。
「何故、今回わざわざ山籠りなどされたのですか」
「気分で」
「しかも、山賊たちをお一人で倒されたそうですね。何故、その時連絡しなかったのですか」
「だって――」
「だって、ではありません」
これいつまで続くのかな?
「お嬢様、聞いておられるのですか」
「はい」
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