18 馬
イリスがクイナのもとに着いた頃、まだ私は水場を探して山脈の中をさまよっていた。
でも、ちょっとずつだけど地面が湿ってきたので、水場が近いはず。ついでに水の流れる音も聞こえてきた。
私は誘われるように木々の間を向け、水の音も聞こえる方に行きました。木々の間を抜けた先には、湧き水がコンコンと湧き出していました。水質はとても良さそうで、私はその水を手ですくい、一口飲んでみました。
「美味しい」
流石に、湧き出てきたての水なだけあって、混じりっけをほとんど感じさせない水だった。私はもう一度手ですくって飲んでみる。うん、美味しい。
「さて、どうしようか」
水場を見つけたから、次は食料の確保ね。何かいいものないかしら。すると……
「ぽちゃん」
水の滴る音がした。
私が顔を上げると、そこには、灰色の馬がいた。
「ラッキー。私、ついてる」
わざわざ探さなくても出てきてくれるとわ。本当に運がいい。
って、え、何。蹄で地面をかいて、助走をつけて、ジャーンプ。って、え。何私の方に突進してくるんだけど。え、え。うん、これは、
「逃げろー」
「ヒヒーン」
うわ、追ってきたし。私何をしたっていうの。ただ食べようとしただけじゃない。
というか、まさか水場の上を飛び越えて突進してくるなんて。剣を抜く暇なかったし。なんだか命の危険を感じるし。どうしよう……よし。
私は、木々の間を走っていたところを少し大きめの木のところで、Uターンし、馬を振り切った。
「ふう……これで」
馬は、首を私の方に向けた。そして、一度飛び上がり、体をこちらに向けると、蹄で地面を捉えスピードを落とした。しっかりとスピードが落ちると馬は、また私に突進してきた。
「うそー、有り得ないでしょ、今の動き。というか……逃げろー」
「ヒヒーン」
私は、また駆け出した。
※※※
「はぁはぁ、もう動けない」
私は、地面にへたり込んだ。馬もまた私の側でへたり込んでいた。
「あなたもそうでしょ」
「ヒ、ヒーン」
馬は、弱々しくだが、頷いたように思う。
すると、馬は立ち上がっり、首をくいくいと曲げた。
「着いて来いって」
「ヒヒーン」
馬は頷いた。というかこの馬、人の言葉を理解するぐらい頭が良かったのね。いきなり突進してくるからバカ馬かと思ったけど。
私が、そんなことを考えていると、馬は、ずんずんと進んでいっていた。
「あ、ちょっと待って」
私は急いで立ち上がり、後を追った。
馬の後を追ってたどり着いたのは、小さな洞窟だった。馬はもう洞窟の中で休んでおり、日も傾いていた。
「ふう、仕方がないか」
私は馬の隣で、馬に寄り添うようにして寝た。
※※※
翌朝、日が昇りきったころ私は起きた。馬ももう目を覚ましているようだったが、私が起きるのを待っていたようで、昨日寝た時の姿勢のままだった。
私はたいてい日が昇る前に起きるのだけれど、今日は、いつも以上に疲れていたのか、いつもより長く寝ていた。
「うーん」
直接地面で寝たせいで、少し体が痛いような気もするけど、まあいいか。あ、馬が。
馬は、立ち上がって洞窟を出て行く。すると、首をこちらに向けてきて、
「乗れって?」
「ヒヒーン」
その鳴き声を頷いたと思って、私は馬に近づき、背中にまたがった。あ、ちなみに私馬に乗るの初めてです。ついでに鞍がないので安定していません。
その状態で馬が走り出しました。
「ちょ、待って、待って」
私は馬にしがみつきながら言いましたが、馬は私の言うことなど聞かずに、進んでいきました。
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