登場!剣山クラーク
そんなこんなで、段々と遠くなっていくソウルマンと父親との背中を見ていたキンバリー刑事は、なにを思ったのか少し駆け出して止まると、自前のハンドガンに銃弾のケースを装填をしたのちに構えていった。
静かに狙いを定めていき。
そして、撃つ。
銃口から発射されたそれは、回転をしながら飛び出していく。空気の壁を貫いていき、やがては父親であるジャック警部を通り抜けて、それは、先をロケット噴射で突っ走ってゆくソウルマンの腰に命中した。
その途端に、あり得ない衝撃と打撃と加速とを受けたソウルマンは、エビ反りの姿勢まま吹き飛ばされて、その上ロケットエンジンの勢いも付加されて、数十メートル先のアスファルト舗装道路にへと腹を打ちつけた。そして、たちまち躰を雷から貫かれていく激痛に、たまらずソウルマンが金切り声をあげてゆく。
「こおーー! 腰があーー!!」
だからといってここで諦める男ではないのだ。必至に電柱に掴まり、激痛に歯を食いしばっていきながら立ち上がると、後ろから迫り来るジャック警部を確認したのちに、片足を若干引きずりながら走り出した。ちなみに、キンバリー刑事が撃ったのは実弾ではなく、超が付くほどに固い硬質ゴム弾。これが当たったことにより、ソウルマンの装備するロケットエンジンが破壊されたのだ。よって、これによりハンデがなくなり、人力による駆けっこが可能となったのである。
行け、ジャック・バウワウ。
追跡せよ。
そして、逮捕するのだ。
手荒な真似をしてでも。
24時間以内に!!
一方その頃。
ほぼ同時刻。
とある中学校では、昼休み中。
職員室の中で食事をとりながら、次の授業に備えて書類に目を通している教師たちがいた。その教師たちの中でも、ひときわ目立つ男性教師がひとり。
それは、長身で肩幅が広く、スーツ姿からもうかがえるほどに鍛え上げられた筋肉。そして、なんといってもこの男は、クラシカルな彫刻顔をした美丈夫であった。黒縁眼鏡の奥からも分かるくらいに、優しい眼差し。巻きの癖毛のある黒髪をリーゼントで整えて、額の真ん中にいっぽん垂らしていた。そう、この男の名は、剣山クラーク。日本人へと帰化した英語教師であった。
そんな弁当を片手に書類のチェックをしていたクラーク教諭の傍らにある、携帯電話にニュース速報が入ってきたのである。




