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√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道 悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ  作者: 萩鵜アキ


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神聖魔砲

 エルヴィンの背中を見送りながら、ニーナは自分の胸に手を当て続ける。

 彼に加護を渡してからずっと、心臓が落ち着かない。


 当然だ。

 自分の唇を異性の額に押し当てたことはもちろんだが、この加護は、生涯でたった一人の英雄にしか渡せないものだからだ。


 聖女には、他の枢機卿や教皇には使えない唯一の力がある。

 それが、『聖女の加護』である。


 これは聖女になる時に、神から貸し与えられる神の力の一部だ。

 だから、生涯でたった一人にしか使えない。


 多くの場合、誰にも使わずに一生を終える。

 教会の決定がなければ、決して他人に譲渡してはいけない決まりがあるからだ。


 しかし神から直接授与すべき者が暗示された場合は違う。

 将来英雄となる者を、神から教えられたならば、必ずその者に力を与えなければならない。


 ニーナのパターンは、まさにそれだった。

 聖女になった日、神が将来の英雄――勇者を見せてくれた。


 しかし、当時そこまで信仰心が篤くなかったせいか、あるいは時間が経ちすぎたせいか、勇者の顔を忘れてしまった。


 きっと、勇者と目される人物が現われれば思い出すだろう。

 そう思っていたが、実際に現われた預言の勇者アベルを見ても、ピンと来なかった。

 昔見せてもらった顔とは、なんとなく違う気がしたのだ。


 さらに残念なことに、アベルはあらゆる面においてゴミクズだった。

 こいつには絶対に加護を与えたくない。

 というか、渡せって言われても生理的に無理だった。


 実際、勇者に監禁された時も、ニーナは加護を渡さなかった。

 彼から何度も『加護をよこせ』と脅迫されたが、それだけは絶対に譲らなかった。


 何故彼が加護について知っているのか定かではないが、あのような危険な輩に渡すくらいなら舌をかみ切って死んだ方がマシだと思えた。


 幸い、勇者がおぞましい乱暴を働く前にラウラに助け出され、ニーナは難を逃れた。

 それ以降、加護のことなどすっかり忘れていた。


 しかしここへ来て教会から破門され、指名手配を受け、さらにはカーラに裏切られ、監禁された。

 そんなニーナを、エルヴィンが救い出してくれた。


 破門された今となっては教会に尽くす義理はないし、唯一教会との繋がりだったカーラとも縁が切れた。

 だったらあとは、好き勝手にやらせてもらう。


 そう思ってから、決断は早かった。

 エルヴィンは幼少期に、ニーナを救ってくれた。

 高等部に上がって再び出会った後も、彼は必ずニーナを助けてくれた。

 アベルに監禁された時も、カーラに監禁された時も――本当に危険な時に、自分を助けてくれたのは、エルヴィンだけだった。


 神様が指し示してくれた勇者の顔は忘れてしまったが、自分だけの勇者は知っている。

 おそらく彼がファイアボールを背中で受け止めたあの瞬間に、ニーナの心は決まったのだ。


 そんなエルヴィンが、神の敵(あくま)を倒そうというのだ。

 力を与えるなら、今しかない。


 力を渡した後、エルヴィンはすぐに悪魔に向かっていった。

 相手は悪魔。その力は、神の敵と呼ばれるレベル。

 人間にとっては厄災級。

 英雄が束になって勝てるかどうかという相手である。


 もしかしたら、死ぬかもしれない。

 なのにエルヴィンは怖れも見せず、素早く行動を開始した。

 それでこそ私の勇者だ。


 でも、


「……少しは意識してくれたっていいじゃない」


 額に唇を押し当てたっていうのに……。

 意識してるのはこちらだけか。

 女性として自信喪失しそうだ。


「べ、別にエルヴィンと〝そういう〟仲になりたいとか思ってるわけじゃないけど!」


 誰かに聞かせるわけでもないのに言い訳を口にしてるのも、無性に腹立たしい。

 この思いは奇跡に込めて――エルヴィンめがけてぶん投げる。


「アタシがなんで〝奇跡を振りまく郷里の聖女〟って呼ばれてたか、アイツに思い知らせてあげようじゃない」


 にやり。

 いつもの勝ち気な表情に戻ったニーナが、全身全霊を込めて神聖魔法を発動するのだった。




          ○




 なんか、後方からバカスカ支援が飛んで来るんだが……。


 しかもただの光魔法じゃなくて、全部神聖魔法。

 勢いがやべぇ。


 バフがガンガン積まれて身体能力がとんでもないことになってる。

 一歩で五十メートル飛ぶって、人間やめてないか?


 バフの性能が桁違いだ。

 さすがは聖女。

 ノーマルモードでラスボスワンパン出来るだけはある。


 ただこれ、バフ切れた後の虚脱感やばそうだな……。


 自分の体の具合を確かめながら、ベリアルに向かって走る。

 途中、すれ違う悪魔で試し切りをするが……うん、全然手応えねぇな。

 相手もまるで反応してなかったし。


 問題は、この状態でベリアルとどの程度戦えるか、だな。


 相手がノーマルモードなら瞬殺出来る。

 ハードモードなら、少し時間はかかるが倒せる。


 問題は、相手がエクストラモード以上だった場合だな。

 たしか真の勇者ルートの時は3時間くらい戦ってたっけ?

 まあ、あれは精神力しか鍛えられないルートだから参考にはならんが……。


 討伐に時間かけたら、さすがに首都が持たない。

 せっかくイングラムが綺麗……とは言いがたくなったが、まあ無事に残っているんだ。

 消滅させるのはもったいない。


 それに――何かあったら助けるって、レナードに約束したからな。


 結んだ約束は絶対守る。

 それがファンケルベルクの流儀だ。


 この戦い、速攻で決める!

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