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√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道 悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ  作者: 萩鵜アキ


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流行の言い訳

 ライザー・フラグナーは苛立っていた。

 今宵、武装派の手でクーデターを決行する。


 打ち合わせでは零時に王城に突入するため、その二時間前には公爵邸の庭に集合する手はずになっていた。

 そこで私兵を含めた動きの最終確認を行い、王城に乗り込む予定だった。


 にも拘わらず、集合時間になっても誰一人現われない。


「一体、皆はなにをやっているのだ!」


 事の重大さに気づき、怖じ気づいたか。

 しかし、一人二人の離脱者は想定の範囲内だが、全員が来ないとは考えなかった。


 皆が共謀して自分をハメたのではないか? 王になれると小躍りする自分を影で笑っているのではないか?

 そう思うと、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。


「お待たせした、フラグナー公。やや、これは屈強な私兵ですな。これならばクーデターも成功間違いな――」

「一体どういうことだハイター!」


 少し遅れて到着したハイターに向けて、ライザーが今にも殴りつけんばかりの勢いで怒った。

 その態度に面を食らったハイターだったが、すぐに周りを見回し、渋面となる。


「ま、まさか、他の武装派の私兵がまだ集まってないのですか?」

「そのまさかだ! 貴様、俺を謀ったのか!?」

「め、滅相もない!」


 ハイターが脂汗を浮かべて首を振る。

 その反応から見て、武装派と共謀して自分を貶めたのではなさそうだ。


「では、この状況はなんだ? 武装派は皆、時間も守れない輩ばかりではないはずだが」

「それは、私にもわかりませんが……」

「ならば、皆が一斉に臆したという線が濃厚か」

「そんな……。それではまるで我々が――」


 馬鹿みたいではないか。

 その言葉が放たれる前に、公爵邸の門に一人の兵士が駆け込んできた。


 その兵士は全身が煤で汚れたように真っ黒で、所々怪我もしている。

 まるで戦場から戻ったかのように、必死の形相でライザーの元まで近づいてくる。

 その間に、ライザーの私兵が割って入る。


「無礼者!」「何奴!」「閣下に近づくな!」

「し、失礼、いたし、ました。わたしは、デーオチ家の兵でございます。ど、どうか、閣下にお目通りを……」

「よい、通してやれ」


 デーオチの名は聞いたことがある。

 武装派の一人であり、今回のクーデターにも参加する予定だった準男爵だ。

 ライザーが歩み寄ると、男が素早く平服した。


「デーオチ家の兵が、何故そのような状態なのだ?」

「は、はッ! わたしは、デーオチ家の伝令として参りました。我が主は私兵をまとめ、こちらに向かっておりました。しかし、その道すがら、見知らぬ男が現われ――」


 ――その男一人に、私兵が全滅させられた。


 話を聞いたライザーは、即座に戦闘態勢に入る。

 男が何者かわからぬが、貴族を襲うとはあまりに不敬。

 八つ裂きにして、身元を割り出し、親族もろとも消し去ってくれよう!


 憤ったライザーだったが、次の瞬間、強烈な違和感に襲われた。


 目の端に黒い影。

 仮面の男。


 くるくる、意識が回転し――、気づくと《《怒りが消え去っていた》》。


 ライザーは、鼻をならした。


「所詮は準男爵だな」


 辛うじて貴族だが、その実態は平民とさして変わらない。私兵といっても所詮、一般人に毛が生えた程度のものであり、どうせ片手で数えられる程度の人数しかいなかったに決まっている。


 その私兵すうめいが全滅?

 だからなんだ、馬鹿馬鹿しい。


「よくわかった。伝令ご苦労。しばし休まれよ」

「はっ? わ、我が当主のお命を奪った不遜な輩は――」

「休まれよ。よいな?」

「あ、有り難き幸せ……」


 男が足を引きずりながら庭の隅に移動するのを、ライザーは口を硬く結びながら眺めていた。


 道ばたの男一人に倒される程度の兵しか持たぬ準男爵が、自分と同じ貴族と呼ばれていることがだんだんと腹立たしく思えてきた。

 自分が王になった暁には、準男爵という爵位は国から抹消してやろう。そう心に決める。


「フラグナー公、残念でしたな」

「そうだな。しかしどうせ戦力になる者ではなかった。趨勢に大きな影響はない」

「左様で――」


 その時だった。

 再び門から兵が現われた。

 新たな兵も、デーオチの兵と同じようにボロボロだ。


「で、伝令! 男爵家の私兵が、不審者一人により全滅!」

「……っ」


 またかッ!

 叫び出したくなるのを、ぐっと堪える。

 しかし三度、兵が現われる。


「伝令です! 子爵家の私兵、全滅!」

「伝令! 侯爵家の私兵が、全滅です!」


 次々と、武装派の盟友たちの兵が、全滅を告げにやってくる。

 もはや衝撃はなく、白い目で盟友たちの私兵を無言で眺めていた。


「なあ、ハイターよ」

「は、はい」

「クーデターへの不参加は兵が全滅したことにする、という言い訳が流行っているのか?」

「そのような話は、寡聞にして聞いたことがありません」

「そうよな……」


 であるならば、何故ここまで全く同じ報告が次々と上がってくるのだろうか?

 ここへきて妙なきな臭さを感じてきた。


「嫌な予感がするな」

デーオチ=出落ち。名前しか出ないので……

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