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√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道 悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ  作者: 萩鵜アキ


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36/92

全部あいつのせいだ!

 これ以上の茶番はさすがに飽きる。

 さて、そろそろ終幕といこうか。


「貴様、御前であるぞ!」

「控えよ犯罪者!!」

「黙れ」


 俺は威圧を少しだけ解放する。

 すると、宰相が怯えたように声を詰まらせた。

 将軍は、さすがというべきか少し耐えた。でも顔が青いな。


 大丈夫か? この程度でびびってたら国を守れないぞ。


「やってもいないことを、やったと決めつけられるのは不愉快。帰らせていただく」

「さ――させるかッ!!」


 将軍が叫ぶと同時に、近衛が俺を取り囲んだ。

 うん、まあこうなるよね。


 ちょっとだけ暴れていい?

 視線だけで王に許可を取る。


 返答はないものと思っていたが、少し……僅かに王の瞳に光が灯った。

 それも、俺も大好きな――悪戯っぽい光が。


 次の瞬間、王が立ち上がり叫んだ。


「この無礼者! 勇者が証言しておるのに、聖女を殺害したと一向に認めようとせぬ恥知らずめ!」


 おい待てジジィ!

 なんで俺が聖女を殺したことになってんだよ!

 勇者が言ってたのは『拐かした』だ。

 殺害したなんて言ってねぇ!


 てか、もう少しマシな演技しろよ……。


「貴様のような悪の貴族は、余が自ら成敗してくれるー!」


 次の瞬間、謁見の間に魔力が荒れ狂った。

 うげっ、このジジィすげぇ魔力だな。


 魔力を練り上げ、王が魔法を放つ。

 風魔法が俺に向かい、途中で不自然にカーブ。

 周りにいた近衛を巻き込み、吹き飛ばした。


 吹き飛ばされた近衛が、貴族たちを巻き込み転がる。


 あちゃぁ……。


「テ……抵抗するデナイ」


 おい棒読み!

 それになに『あっ、やり過ぎた』みたいな顔してんだよ!

 ちゃんと最後まで演じきれよ!


 しゃーない。

 完全に予定外だが、せっかくお膳立てしてくれたんだ。

 ここは王様の悪巧みに合流させてもらおう。


「……くっくっく。バレてしまってはしょうがない。陛下がおっしゃる通り、ファンケルベルクは悪の貴族だ。しかし今ここで捕まるわけにはいかぬ。サラバダ!」


 俺は軽く王とアイコンタクトを躱す。


(おい小僧。お前、アドリブド下手くそだな!)

(ほっとけ!)


 うん、このじいさんとは仲良くなれそうだ。

 窓ガラスに向かって走る。


「待つノジャー」


 後ろから棒読みが聞こえ、風が背中にぶつかる。

 その余波で、窓ガラスが綺麗に割れた。


 おっ、ナイスアシスト!

 そのまま風魔法に載って、窓の外へ。


 お礼とばかりに、ポケットから丸薬を取り出し、ダーク・フレアで着火。

 謁見の間に投げ入れる。

 一瞬にして火が回った丸薬から、大量のスモークが噴出した。


 これでよし、と。

 あとは逃げるだけだ。


 落下?

 問題ない。

 ここは1階だからな。


 地面を蹴って城門へ。

 そのまま飛び上がり、城の外へ逃げ延びた。




          ○




 窓から脱出したエルヴィンを見て、勇者アベルは発狂しそうになった。


 何故だ!

 エルヴィンは今日、ここで処刑を言い渡されて首を跳ねられるはずだ。

 そういう運命(シナリオ)だったはずだ!


 なのに、何故逃げおおせられたんだ?


「ああ、そうか。原作より近衛が無能だったのか」


 理由はわからないが、プロデニではエルヴィンは逃亡出来なかった。

 なのに今回逃亡したということは、近衛がしっかり抑えられなかったからに決まっている。


 内心歯ぎしりをしながら、アベルは次の一手を考える。

 現状、すっかり原作からはずれてしまったため、なにをやって良いかわからない。


「なんとしてでも奴を連れ戻して、本当のシナリオに合流させるしか……」


 考え事をしていると、目の前の煙が少しずつ晴れてきた。

 この煙は逃亡のために使った煙幕だろう。元々こういうものを準備しているのか? 育ちの悪い奴だ。


 煙が完全に晴れると、これまで地面に横たわっていた貴族や近衛兵、宰相は将軍までもが一度、ぴたりと動きを止めた。


「……ん?」


 それは、奇妙な変化だった。

 だが十秒経った頃、全員の目が一斉にアベルに向いた。


「――ッ!?」


 ゾゾゾッ。

 まるでホラーゲームでもプレイしているような怖気が走る。


「おほん。そこの予言の勇者よ、前に出よ」

「あ、ああ」


 宰相に呼ばれ、わけもわからず謁見の間の中心まで歩み出た。


「して、先ほどの話は誠か?」

「先ほどの話、というと」

「聖女が拐かされたというものだ」

「ああ、間違いない。もう何日も姿を見てないからな」

「ふむ」


 おかしいな。

 不審に眉根を寄せる。


 当然のことながら、エルヴィンは聖女を拐かしていない。

 なぜならば、聖女は今アベルが借り上げている家の、地下室に閉じ込めているからだ。


 それもこれも、聖女が悪い。

 クラスメイトを操り、エルヴィンに嫌がらせをしていた時、あろうことか聖女は奴の肩を持とうとしたのだ!


 アベルは、己がやりたいことを邪魔されるのが一番嫌いだ。

 故に、自分の道を邪魔だてする聖女を監禁した。


(オレの言うことだけを聞いていればいいってのに。よりにもよってあのエルヴィンにケツを振りやがって。どんだけチョロインだよ!)


 おまけに、物語終盤で貰えるはずの力をくれといっても渡さないの一点張り。

 あれさえあればエルヴィンをぼっこぼこにしてやれるのに!


 ……しかし、まさかこちらの行動がバレたわけではないだろうな?

 そんな不安をかき消すように、アベルは大声で叫ぶ。


「あのエルヴィンがやったんだ! 奴は聖女を監禁している! 今すぐ奴の屋敷を立ち入り検査するべきだ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖女の監禁場所が勇者の家なのにエルヴィンの家を捜索しろと?聖女ってコインみたいに手の中に隠せるサイズでしたっけ(白目
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