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√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道 悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ  作者: 萩鵜アキ


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30/92

残念……

「今日、ここで叩き潰してやる」

「……はあ。じゃあ、やろうか」


 この三ヶ月で、こいつがどれくらい強くなったかは気になる。

 勇者がどうこうとか、魔王を倒すとかそんな先のことはどうでもいい。

 処刑台に送られることすら、今はそんなに気にしてない。


 それよりも、以前戦った時の勇者が、俺は猛烈に気に食わない。


 勇者が弱いと、俺のプレイヤーとしての思い出とか、プロデニを作った人の思いとか、そういうものが踏みにじられている気がするのだ。


 まあ、勝手な思い込みだけどな。

 だからこれは、ただの八つ当たりだ。


 開始の合図とともに、勇者が突っ込んできた。

 前と同じ速度。剣速も、同じ。


 ――まるで成長していない。


 勇者の成長率はこんなもんか。

 がっかりだ。


 木剣を握りしめて、攻撃しようとした瞬間だった。

 勇者が、歪に笑った。




 ――かかった!!


 憎きクソガキ、エルヴィンとの訓練が始まった。

 アベルは、彼がただ普通に構え、反撃に移ったのを見て、自らの作戦の成功を確信した。


 この三ヶ月間、アベルは血のにじむような努力を重ねた。

 権力者たる勇者としては、あるまじき泥臭い日々だった。


 一体、毎日〝何分〟練習したか……。

 一瞬で出来ないくそったれな才能を嘆いた。

 こんな中途半端な能力しか与えてくれない神を恨んだ。


 こういうものは、試したら簡単に成功するもんじゃないのか!?

 そして「あれ、オレまたなにかやっちゃいましたか?」って決め台詞を吐くもんだろ!


 なんでオレが努力なんてしなくちゃいけないんだ……。


 悪いのは全部、エルヴィンだ。

 奴が、勇者としての輝かしい学園生活を奪った。


 だから、この一撃にかける。


 アベルは体内の魔力を活性化。

 この三ヶ月、毎日五分も努力して身につけた、ライトニングボールを発動。

 それを全力でエルヴィンに叩きつけた。


「はーっはは、どうだ参った――」


 なにか、黒いものが顔面に激突。

 瞬間、アベルは宙を舞った。


「――ブゲラボグラッ!!」


 空中で五回転。

 ぐるぐる回って地面をころがり、訓練場の壁に激突した。


 全身の感覚がない。

 霞む視界で、自分がどうなっているのかを確認する。


 すると、手足が見たことのない曲がり方をしているではないか!

 感覚は……ない。

 命が危険だから、痛みをシャットアウトしているのだ。


 アベルをこんな体にした本人はというと、冷徹な瞳でこちらを見下ろしていた。


「お前、先生の忠告を聞いていなかったのか?」


 やめろ。そんな目で、オレを見るな。

 馬鹿にするな!!


「ニーナ。頼む」


 オレの聖女に命令するな!


 叫び出したい。だが、声が出ない。

 怒りなのか、酸欠なのか……頭が真っ白になって、そのままアベルは意識を失った。




          ○




 軽くパンチを入れたら、勇者の体がバッキバキに粉砕された件。

 うわあ、マジでびびった……。


 うっかり殺しちゃったかと思ったよマジで。


「チッ――死にませんでしたか」


 どこかから、覚えのある声が……。

 ハンナ、また侵入したのか。


 仕事が忙しい、人手が足りないって聞いてたけど、暇なのか?

 だったらやって貰いたいことが……あっ、気配が消えた。


 チッ、逃げ足の速い奴め。


 完全に致命傷だったアベルの怪我は、無事ニーナの奇跡によって完治した。

 うん、お見事。


「え、エルくん、大丈夫ですの?」


 小走りで近づいて来たラウラの顔からは、悪役令嬢としての仮面が消えていた。

 この呼び方、すごくいいな。


「問題ない」

「でも、魔法が……」

「ああ、うむ。大丈夫だ」


 なんてったってメンタル、お化けだからな。

 あの程度の魔法は効かないんだわ。


 施術が終わったニーナが近づいてきた。


「こいつなら大丈夫よ。昔っから魔法が効かない体質みたいだし」

「効かないわけじゃないぞ」

「あらそ? じゃあ、治療してあげるわ」


 そう言うと、ぽっと小さな光が放たれ、体を包み込む。

 うん、お見事。

 何千、何万とヒールを繰り返し使い続けてきた努力が感じられる。

 さっきの勇者のつたない魔法とは雲泥の差だ。


「ありがとう」

「どっ、どういたしまして」

「それにしても、勇者(こいつ)は訓練場で強化以外の魔法は禁止って聞いていなかったのか?」


 使ったら停学か退学って、先生が繰り返し忠告してたのにな。

 耳の穴、マジで鼓膜に繋がってないんじゃね?


「しばらくは謹慎ね」

「それだけで済めばいいけどな」


 命に関わるルール破りだ。

 最悪、放校もあるかもしれない。


 俺としては、放校に期待。

 だって処刑ルートから外れるからな!


 結局、この後勇者は一ヶ月間の停学になった。

 ……残念。


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