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√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道 悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ  作者: 萩鵜アキ


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29/92

悪役ポジション……変わろうか?

 決闘の一件について、教師からちょっとだけお小言を貰った以外は、特に目立った罰則は受けなかった。


 どうやら勇者の奇行については教師の耳にも入っているらしい。


「なんとか決闘だけは避けられなかったのか?」

「さすがにアレの相手は無理です。言葉が通じません」

「……そうか」


 そう言うとあっさり引き下がったので、間違いない。


 学校から出ると、ハンナが小走りで近づいてきた。

 その目が、少々血走っている。

 もう何言うかがわかるな。


「消――」

「さない!」


 ほらな。

 なんでもすぐ消そうとするんじゃない。

 人間はパソコンじゃない。

 一度消したら、再起動出来ないんだぞ。


「事故を装えば――」

「ヤろうとするなってば……」


 ずいぶんと好戦的だな。

 勇者といい勝負だ。


「それにしても、圧勝でしたね。攻撃をかすらせることもありませんでしたね」

「……見てきたように言うな?」

「見てましたから」

「…………」


 えっ、あの場にいたの?

 忍び込んで?


 ファンケルベルクの筆頭使用人、すげぇな。

 全然気づかなかったわ。


「そういえば、何故攻撃されなかったんですか?」

「……触れたら壊れるぞ、あいつ」


 うん、正直になろう。

 めっっっっっちゃくちゃ弱かった!


 なんだアイツ。

 これまでの人生、どんだけサボったらあんなに弱くなれるの!?


 正直、弱すぎて引いた。

 戦う価値もないって、格好付けや煽りの台詞じゃなくて、本当に実在する感覚なんだな……。


「あれでも一応は、聖皇国公認の勇者だ」

「見逃すのですか?」


 その時、ハンナの瞳から光が抜け落ちた。

 ぞっとする程深い闇。


 やばっ。

 そういえばこいつ、ファンケルベルク一筋だったっけ。


 家を馬鹿にされてんのに放置したなら、俺の背中に穴が空きかねんな……。


 あっという間に落命の危機。

 背中に冷たい汗が流れる。


 頭をフル回転させて、出て来た言い訳は。


「いや、泳がせる」

「……と、言いますと」

「今は弱すぎて話にならん」

「?」

「お前は、子犬に吠えられただけで消すのか?」

「なるほど、今はヤる気にならないと。よくわかりました」


 くっ、消すとかヤるとか、ファンケルベルク語かなんかなのか!?

 なんで穏便な言葉じゃ伝わらねぇんだよ……。




          ○




 この一件を境にして、勇者がプロデニの基本シナリオからはずれ――孤立していった。

 いやマジでどうなってんだ?


 シナリオはずれすぎだろ。

 プロデニ本編だと、結構取り巻きがいて、ワイワイ談笑してるシーンいっぱいあったぞ?


 なのに今の勇者くんときたら……。

 教室の中央にぽつんと一人座ってる。

 周りには誰もいない。


 近づいたら絡まれると思ってるんだろ、きっと。

 うん、俺でも思うよ。


 だってめっちゃ絡まれたし。

 いきなり決闘だ! とか言う奴の近くに寄りたい奇特な人なんてこの世におるんか?


 ――あ、いた。


 ニーナだけは勇者の近くにいるんだな。

 まあ……内心仕事仕事!とか思ってそうだが。


 あれで平常心を保ててる勇者がすご――。


「――ッ!!」


 勇者がギロッと俺を睨んだ。

 うん、全然平常心じゃないな。

 怖い怖い。

 俺も近づかないでおこーっと。


 三ヶ月もすると、もう勇者は空気になっていて、誰も動向を気にしなくなっていた。

 これっていじめに入るのか?

 危ない奴に近づかないって判断は、いじめになるのか?


 よくわからん。


 最近勇者がおとなしくて平穏が保たれてるが、時々怖くなる。

 どこかで暴発するんじゃないかって。

 あるいは、爆発する場所を待ってるのか……。




 入学して初めての訓練授業。

 はい、二人一組になって剣術のお稽古をしましょー、なんて緩い授業じゃなくて、ガチでぼこぼこになるまで殴り合う。


「どんな怪我をしても、国定回復士がいるから大丈夫だ」


 というのが、この授業担当の教師の言葉だ。


「でも、気を抜くなよ? 当たり所が悪けりゃ死ぬからな。実際、毎年何人かは死んでる。ハッハッハ!」


 何笑ってんだよ。

 事件だろ。

 まあ今年は国定回復士と一緒に、心強い仲間(?)もいる。


「アタシ、一応これでも聖女だし。心臓止まってなきゃ元通りに治せるわよ。みんな、心臓だけは止まらないように頑張ってね☆」


 いやその台詞はどうなんだ。

 逆にみんな腰引けてんぞ?


「念のため繰り返すが、この訓練ではファイアボールなどの放出系の魔法は一切禁止だ。あくまで肉体だけでぶつかり合ってもらう。追い込まれても魔法だけは絶対に使うなよ? 使ったら停学。最悪退学だからなッ!」


 人が集まってる中で素人が放出系の魔法なんて使ったら、どれだけ怪我人が出るかわからないからな。

 最悪、死人が出る。

 魔法はあくまで魔法の授業でしか使っちゃダメ、絶対。


 立てかけてある木剣を手に取る。

 さあて俺の相手は……って、まあ、探すまでもないか。


「よお、首洗って待ってたか?」


 初めから殺意マックス。

 殺る気十分のアベルくんが、俺の前に立ちはだかって顔を歪ませた。


 君のその顔、完全悪役なんだけど……。

 絶対俺とポジション変えたほうがいいよ。


 勇者と俺がやるってことになった途端に、みんなが一気に壁際に引っ込んだ。

 いいぞやれやれ、って感じじゃなくて、巻き込まれないように逃げただけだ。


「裏でクラスメイトを操ってオレを孤立させてんだろ?」

「……そんなことをして、俺に何の得がある?」

「裏でオレを嗤ってたんだろ!!」


 えっ、嗤うためだけに、クラスメイトを操ったって?

 やらねぇよそんなこと。

 手間に対してリターンが釣り合ってないだろ。


「今日、ここで叩き潰してやる」

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