けっとうだ!!
「……とりあえず、注文したらどうだ?」
「そそ、そうだ、ね」
料理を注文すると、また無言の時間が重くのしかかる。
くそっ、せっかく羽を伸ばしてたところだったのに……。
なんかすげぇ気疲れする。
さすがにこの沈黙は辛すぎる。
仕方ない。
頑張って学友と歓談するか。
「「あの――」」
かぶった。
畜生、なんだよこのテンプレ状況は!
ってか本当にこういうことがあるんだな。
日本でも、異性と話すタイミングが重なったことなんてねぇよ。
まあ、離せる異性なんていなかったんだけどなッ!
ちくしょう!
「先にいいぞ」
「う、うん。7年前に、助けてくれて、ありがとうって……ずっと、言いたかったの」
「お、おう。そうか」
「うん。本当に、ありがとう」
……なにか、裏があるのか?
素直に感謝して、俺からなにかを引き出すつもりか!?
くっ。
7年前から処刑台と、そこに送り出す奴らにビビリまくってきたせいで、聖女の言葉を素直に受けとれねぇ。
「次は、エルヴィンの番」
「む、ああ、そうだな。一つ聞きたいんだが、アベルは本当に予言の勇者なのか?」
今日初めて勇者に出会ったが、プロデニをプレイしてた俺の印象とあまりに違い過ぎる。
いくらエルヴィン視点だからといっても、これはキャラクター崩壊といっても過言じゃない。
もし世に出していたら、多くのプレイヤーが激怒しただろう。
勇者だって少し前まで操作キャラだったんだ。それを、あそこまで殴りたいキャラにされるのはあんまりだ。
どうか人違いであってほしいんだが……。
「あ、ははは。そうだヨー」
残念ながら、聖女が頷いてしまった。
やっぱり、あれが本物かあ。
この世界の勇者アベル、お前にはがっかりだよ。
「あれでも正式に教会の勇者なんだ。勇者って予言された以上、聖女としてはサポートしなくちゃいけない」
「……大変だな」
心底思う。
あれをサポートとか、俺には無理だ。
気づいたら後ろから絞めてそうだもん。
「ところで今日、アイツ――じゃなかった、勇者に連れ回され――食事をする予定だったんだけど」
「お前、相当キてるんだな」
勇者への気持ち(ヘイト)が飛び出してるぞ。
その殺気、しまえしまえ!
「レストランが軒並み満席だったのよ」
「へぇ、面白いこともあるものだな」
「これ、アンタの差し金なの?」
「そんなわけはない」
まったく身に覚えがない。
初手ブブヅケだったら俺のせいだけどな。
っていうか、強引な手を使ったら絶対俺に矛先向くだろ。
だってアイツ、俺を殺る気満々だったもん。
ああいう手合いは、一度標的と決めた相手には、全く無関係な出来事でも『お前のせいでこうなった!』って糾弾するんだよ。
風が吹いたら桶屋が儲かる的な。
きっと、割り箸が妙な割れ方しても俺のせいとか言い出すぞ。
「じゃあ、なんで満席って嘘をつかれたんだろ?」
「評判が落ちるから入れたくなかったんじゃないか」
「あ、それアタシも思った」
くっくっく。
ふふふ。
悪い笑いが個室を満たす。
それとほぼ同時に、注文の食事が到着した。
やれやれ。店員は気遣いが完璧だな。
食事のお代はもちろん、俺が支払った。
この一飯の恩で、処刑台送りはやめてくれないかな?
そんな願いを込めて。
○
「オレがレストランに入れなかったのはお前のせいだろ!! 決闘だッ!!」
うん、わかってた。
でもさ、君ちょっと喧嘩っぱやくね?
アベルに決闘を申し込まれたのは、登校してすぐのことだ。
本当に勇者かお前ってくらい目が血走ってる。
どうやら、レストランに入れなかったのが相当堪えたらしい。
にしても決闘はないわ……。
本編だと二人が初めて戦うのは三ヶ月後にある訓練の授業で、だろ?
シナリオスキップしようとすんなよ。
「アベル、いきなり決闘はないでしょ。そもそもエルヴィンがやったっていう証拠だってないのよ?」
「証拠がなくても俺にはわかる!」
「えぇ……」
「なぜならこいつらは悪の親玉だからだ!」
「……。あ、あのさ……証拠もなしに、決闘はよくないよ?」
「一度、立場の違いというものをわからせてやる」
ダメだ。聖女の言葉でも聞く耳がねえ。
てか、耳に穴あいてんのか?
会話になってねぇぞ。
ぱちり、と聖女と目があった。
(やっぱりこうなったろ?)
(うん、なんかごめん)
視線で会話すると、勇者がそれを見とがめた。
「ニーナ、まさかお前……グルだったのか!?」
「へ? そんなわけないでしょ」
「まあそれもそうだな」
「む?」
やけに簡単に引いたな。
ずいぶん聖女を信頼しているようで。
だったら少しは彼女の意見に耳を傾けたらどうかな。
いくら勇者でも、事が大きくなりすぎるともみ消せなくなるぞ。
「とにかく、今すぐ決闘だ」
「……はあ。やめておけ」
「怖いのか?」
おう、怖いぜ!
マジでシナリオスキップ発動してこのまま処刑台へGOってなったら、これまでの準備がマジでパァだからな!
あっ、でもこの煽ってくる勇者の顔はぶん殴りたいな。
どうしよう?
俺はラウラとニーナを見比べる。
どうやら二人は違う意見をお持ちのようだ。
ラウラ(意訳)「なんとか回避した方がいいんじゃなくて?」
ニーナ(意訳)「一発殴ったらおとなしくならないかしら?」




