63話 考え方
「昨日は違うアプローチって言ったけれど、こうやって集まってもなかなかいい意見はでないわね」
翼さんの言葉通り、プレハブ小屋に集まったメタガラスメンバーで頭を悩ませているのだが、めぼしい意見はなかなか出なかった。
「烏城さんの考え方を私達でシミュレーションしてみてはどうですか!」
と、先程から俺たちの会話のない議論を見ていたエイヴェリーさんがそう言った。
「つまり、俺たちが泉になった気持ちになって、泉ならどう行動するかを考えるということですよね?」
俺が確認するようにそう言うと、エイヴェリーさんは拍手しながら、言う。
「そうです! そうですよ! 傑さん! どうしたら烏城さんを見つけられるという考え方から、烏城さんならこう行動すると予測をしてそれに対して行動するという考え方に変えるのです!」
エイヴェリーさんの言葉に俺はなるほどと思った。そりゃそうだ。同じ人間とはいえ、相手はあの泉だ。俺たちの常識が通じないところがあるかもしれない。
「あの子がどう行動するかといえば、きっと」
翼さんがそう言ったところで、俺の脳裏にはある言葉が浮かんだ。それはどうもこの場のみんなが考えていたことのようで、次にはある言葉が重なった。
「「「引きこもる(わね)」」」
自分たちの言葉に昨日までの捜索が意味のないことだったと俺達は悟った。
というか……俺たちの常識が通じないところがあるかもしれないとは? 一体?
*
「となると、更に捜索が難しくなるわけね」
泉が引きこもっているという前提で俺たちは考えることにしたのだが、となると、彩が言うように捜索はさらに難航することが予想された。
「ねえねえ! 引きこもるってことは、宅配便で食料とか日用品とかを届けてもらってるってことだよね! 宅配業者のトラックを例の監視カメラハックで追ったりできないかな!?」
と、梓が珍しくしっかりとした意見を出した。
「そうですね。宅配業者のトラックをカメラで追うことは技術的にはそこまで難しくないです。食料品を運んでいる前提であれば冷蔵車に限定して追えばいいですし」
と、そこでエイヴェリーさんは言葉を止めて少し表情を曇らせた。
「しかし、監視カメラハックは地域全域をカバーできる訳ではありません。というより、カバーできていない地域が大多数です。また、宅配トラックが立ち寄る建物の数は膨大な数になるはずです」
その言葉に梓は残念そうに頷いた。
「泉さんを見つけられると思ったのに……」
突破点になるかもしれないと思ったあとにそれが叶わないとなってみんな思考が停止してしまった。
俺たちはどうにかならないかとしばらく無言で考える。
「ねえ、翼さん、泉さんだったら頼みそうなものってなにかないの?」
梓の言葉に翼さんはちょっとまってねと言うと、おでこに手を当てて思い出すように考え始めた。
「パソコンのパーツだったり、女装に使うための衣服。それに電子パーツなんかもよく発注していたわね」
どれも普通の宅急便で送るような荷物で特に突破口になりそうもなかった。と、翼さんが付け加えるように言った。
「あ、そうだ。あの子そばが好きだからよく出前を取ってたわ。でもどこで取っていたかはちょっと分からないわ。私はそこまでそばは好きじゃないし」
翼さんがそう言うと、大塚ちゃんが言った。
「前に泉さんとそば屋に行ったとき、自慢するように言ってたぞ。一週間に一度はここで出前を取ってるって」
大塚ちゃんの言葉に俺たちの言葉はハモった。
「「「それだ!」」」




