53話 404エラー
大塚ちゃんの騒動も無事解決してこれからはみんなで会社を盛り上げていくんだと思っていた。
泉は俺たちのVの活動を足がかりにしてメタバースで世界に挑戦して、俺たちは泉の力も借りて、VTuberとして生きていく。
そう思っていたのに。
*
無事泉のデビューが成功して、俺は次の目標をマニア層以外にもチャンネルを視聴してもらうということに設定して活動することにした。
……以前マニア向けとか言われたからとかそういう理由ではない。
彩は女性視聴者の獲得、早苗さんはさらなる登録者の獲得、大塚ちゃんはCDのランキング上位というようにそれぞれが目指すべき目標を立てて活動を行っている。
今日は、目標を達成するために話し合おうということで俺たちは泉の仕事部屋に集まることになっていた。
「あれ、まだ泉はいないのか?」
俺が一緒に行くと言って聞かない梓を引き連れて泉の部屋にやってくると、そこには彩と早苗さん大塚ちゃんといった面々と田所はいたものの、翼さんと泉はいなかった。
これが泉だけいないというのなら女装でもしてるのかなとか思うのだけれど翼さんまで集合時間にいないのは珍しかった。
仕方ないのでしばらく雑談をして過ごしていると、疲れた様子の翼さんが部屋に入ってきた。
そしてその後ろには初めて見る金髪長身なイケメン外国人がいて。
「おお? もしかして新人Vですか? メタガラスENとか、流行りそうっすね~」
俺たちが突然の来訪に驚いていると、社会人経験のある早苗さんが落ち着いた様子でそう言った。
泉がいないのはこの外国人さんがいるから女装していたのかと俺が勝手に納得していると、翼さんが注意していないと聞き逃しそうなトーンで言う。
「あたらしい社長のエイヴェリーさんです」
「どうも、メタガラス新社長のエイヴェリーです。よろしくお願いします」
ニコニコイケメン顔の外国人はそう、流暢だけれどもどこか外国人らしさを感じる日本語で挨拶した。
*
「明日正式な発表があるけど、メタガラスはイギリスの企業に買収されます。エイヴェリーさんはそちらの企業から出向してきた社長さんです」
先程からずっとニコニコしているエイヴェリーさんが見ている中、翼さんはそう俺たちに説明した。
「泉はそれで良かったんですか? だってあいつこの会社を足がかりに世界を取るって言ってたのに。それに泉はまだ来ないんですか?」
俺がそう聞くと、翼さんは小さく息を吸ったあと言った。
「楓はもうこっちには来ないわ。籍はメタガラスに置いているけどね」
俺は翼さんの説明に自分が楽観的に考えていたことを悟った。
「楓さんはどうしてこっちに来ないんですか?」
俺が言葉を失っていると彩がそう翼さんに尋ねてくれた。
「みんなには正直に話そうと思うわ。私と楓の実家は全国規模の和菓子店を営んでいるのだけれど、そこの経営がうまくいかなくて、その赤字を埋めるために、楓はこの会社を売却したの。……楓はそのことに負い目を感じてるのかもしれないわ」
翼さんが最近疲れていたのはそういうことだったのだ。俺は主がいなくなって消えたままの部屋中においてあるディスプレイを見て、現実を悟った。
「俺はそんなこと気にしないので、なんとか泉に連絡取れませんか?」
俺がそう翼さんに言うと翼さんは頭を振りながら言う。
「実は私も楓の居場所を知らないの」
俺たちはその言葉に泉の本気を悟った。
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