46話 ものを探すときは足元から
「うむ、見つからないですなあ」
スーパー周辺の捜索開始から3日が過ぎていた。今日も日が落ちたので俺たちは手分けして探していたのを切り上げて、翼さんの車に回収してもらっていた。
なにしろ、人力での捜索である。あまりにも見つかる想像がつかなかったので、おばさんの予想顔写真を使って聞き込みすることも考えたが、自分の顔写真を使って聞き込みされたときの気持ちを考えるとどう考えてもするべきではいという彩の尤もな意見もあってそれは実行されていなかった。
「私も捜索しながら、ここらへん一帯の地図データと、人流のデータを使って遭遇可能性の高い地域をピックアップすることをしてみたけれど、今のところはすべて空振りに終わってるね」
乙女モードの泉がノートパソコンを開きながら、そう言った。
ブルーライトカットのメガネが知的な印象で、いつもの黒髪ショートのメガネなしも良かったが、これはこれで……俺は一体、何を考えているんだろう?
泉は初日こそは歩きでの捜索をしていたが、あまりにも体力が無くすぐへばってしまったので、呆れた翼さんによって回収されて今は二人一緒に捜索を行っていた。
「俺もお前からもらったデータをもとに可能性の高い地域を重点的に探してみたが、やっぱりそれらしい人物は見つからなかったぞ」
「そうね、私も楓さんからもらったデータをもとに調べたけど見つからなかったわ」
俺と彩がそう言うと、泉は考え込むように目を閉じた。
「もしかしたら、別の視点で考えるべきなのかもしれないね。そのおばさんは逆に人の少ないところに住んでいるのかもしれない。そう考えると、今現在も私の部屋で監視カメラを解析しているパソコンから新しい通知が来ないことも理由があったことになるかな」
そう言われて、翼さんも頷いた。
「楓の言うように、明日からは少し考え方を変えて、探してみましょう。でもまあ、今日はホテルに戻って休みましょう」
翼さんはそう言うと、車を出そうと、キーを回した。
「あ、ホテル行く前になにか買っていく?」
ちょうど、目の前にコンビニがあったので、翼さんがそう聞いた。
昨日まではホテル近くのコンビニに行っていたのだが、地味に遠い場所にあるので俺は今のうちに買い物を済ませてしまおうと思って言う。
「俺、買ってきますよ。みんななにか買いたいものとかあるか?」
「拙者はカップラーメンを5つばかり」
食いすぎだろ……。
「私は、なんでもいいから炭酸飲料をお願い」
「私はヨーグルトをお願いするわ」
泉と翼さんの頼みを聞いたあと、俺はなにか買うものはないかと彩の方を見た。
「私も傑と一緒に行くわ」
まあ、二人で行ってもいいかと思ったので、俺は彩とともに、コンビニへと向かっていった。
*
こんなにスーパーから近くてもやっていけるもんなのかなとか考えながらコンビニに入ると、俺は、頼まれたものを思い出しながら、かごに詰めていった。
彩はなにか買いたいものがあるのか、ひとり別行動で店内を回っている。
「さてと、これで全部かな」
俺が確認するようにかごの中身を確かめながらレジに向かうと、彩もちょうど買いたいものを手に取ったのか、一緒のタイミングでレジについた。
「一緒に会計するか?」
俺が尋ねるように彩に言うと、
「そうね、お願いするわ」
と彩もうなずいてかごの中に大量のカリカリ梅を入れた。
「お前、それ好きだよな」
俺が昔から彩が好きだったことを思い出しながらそう言うと。
「ちょっと恥ずかしかったから自分で買いに来たの」
と可愛いことを言ってくれた。
「まあ、俺に知られたところで今更だからな。あとで一粒くれよ」
俺がそんなことを言っていると、彩は仕方ないというように笑うと。
「仕方ないから一粒あげるわ」
と、言った。
俺はそのままレジにかごを出すと、財布からいつも支払いに使うデビットカードを取り出してぼーっとレジの精算画面を眺める。
と、彩が俺のシャツの裾を引っ張っていることに気がついた。
「どうしたんだ?」
俺が、確認するように振り返ると。彩は、
「前を見て」
とよく分からないことを言ってきた。なんだろうさっきから前を見てたのだけれどと思いながら訝しげに前を見ると、そこには。
「あ」
「はい?」
この3日間探し続けていたあのおばさんが店員スマイルで接客をしていた。
……「ものを探すときは足元から」という、いつかおばあちゃんから聞いた話はどうやらとても役立つ情報だったようだということを俺は今理解した。
誤字報告ありがとうございました。
言われたらなぜ気づかなかったのかと自分でも思う間違いだったりするんですが、自分で確認するときは勝手に脳みそが修正してしまうのかなかなか気づかないんですよね。
本当に助かります。




