最期のアドバイス
「では行ってくるわ」
明るい空色のドレスを着た私は、お泊まりのために用意したトランクを手に、馬車へ乗り込む。クリスタの屋敷に泊まるので、侍女は留守番となる。
「アドリアナ、気をつけて」
見送りをしてくれるリアスは、私とお揃いのような色合いのセットアップを着ていた。
(リアス、大好きよ……)
その姿を目に焼き付けるように。
じっと見つめてしまう。
「アドリアナ、どうしたの?」
「何でもないわ。行ってくるわね」
(今が正念場。ここはちゃんとやり切らないと!)
今できる最大限の笑顔をリアスに向け、御者に出発するようお願いした。さらにレイノルズ侯爵邸を出て、しばらく進むと、私は行き先の変更を指示する。
「ザックライン男爵邸へ向かってちょうだい」
ヒロインには事前に手紙を書いてある。
そして今日訪問をする予定は伝えてあったが。
「今さら何なんですか! 協力すると言っておいて、その協力は全くうまく行かなくて。もう何もしないでいいとお願いしたら、急激にカミュ第二王子殿下と仲良くなりましたよね!? いったい何を考えているんですか!?」
応接室で私を迎えたヒロインであるマーガレット。彼女が切れ気味になっているのは、よく理解できる。ジャスパーたちは別として、みんな忖度して何も言わないが、同じことを考えていると思う。
「これには理由があるの。でも秋休みが終わったら、状況が変わるわ」
私の言葉に、パステルピンクのドレスを着たマーガレットは、怒りを押さえて尋ねる。
「状況が変わる……!? それはどういうことかしら?」
本来敵対するマーガレットとアドリアナであるが、ダッグを一度組んでいる。その際はいろいろと苦労を共にしているのだ。よってここ最近、私とカミュ第二王子が登下校を同じくしていること、頭には来ていても、それ以上にいろいろ知りたくてたまらないのだろう。
(全てを話すことはできないわ。それでもヒントを与えておくことはできる)
よってこう答えることになった。
「ごめんなさい。詳しいことは明かせないわ。でも秋休みが明けたら、大きなニュースが新聞の一面を飾るはず。それを読んだらきっと、私が何を言いたかったのか。分かると思うの。でも今は話せない」
そこで一旦言葉を切り、真剣な表情でマーガレットを見る。
「私はあなたに幸せになって欲しいと思っているわ。これまでいくつか案を練って実行に移した。でもことごとく失敗しているわ。そこは本当に申し訳なく思っているの。ごめんなさい」
言葉と共に、頭も下げる。
「なっ、そんな! 頭まで下げる必要はないでしょう! 手伝う義理なんて本当はないのだし……」
(そんなことを言うところは、さすがヒロインね)
「でも今回はこれまでとは違う。絶対に効果があるはずよ」
「いったい何をするつもりなのですか!?」
「ごめんなさいね。そこは明かすことが出来ないの。ただこれだけはして欲しいの」
そこで私は言葉を紡ぐ。
「秋休み明け、カミュ第二王子殿下は、とても大きなショックを受けると思うの。そんな殿下に寄り添い、まずは彼の悲しみを理解し、共感してあげて。そして、『無理はしなくてもいい、いつでも辛い時は話を聞く』と、味方になってあげて。そうすることで、これまでより、心の距離が近くなるはず。あとはタイミングを見ながら、少しずつ、彼への好意を伝えていくの」
私が真剣だったので、マーガレットも真摯な表情で話を聞く。そこから察するに、きっと私がカミュ第二王子に、ガツンと好きではないと言う可能性、そんなことを考えているように思えた。
「とにかく私の言葉を覚えていて。そして忘れずに実行してね」
「分かったわ……。でも、相手は王族なのだから、ほどほどにした方がいいと思う」
「ええ、ありがとう」
ちゃんとマーガレットには伝えることが出来た。これできっと上手くいくはず。
マーガレットの屋敷を出ると、今度はクリスタの屋敷へと向かうことにした。
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続きは明日公開します























































