閃く
「ほ、本当に!? リアス様と呼ぶのをやめれば、助けてくれるの!?」
「ええ。リアス様ではなく、レイノルズ侯爵令息ってちゃんと呼んでくださるのなら、協力します」
「分かったわ! リア……レイノルズ侯爵令息って呼ぶから!」
取引成立だ。
この取引がフィフティ・フィフティかと言うと、違う気がする。でもいいのだ。ヒロインが「リアス様」と呼ぶのを聞く度に、私はイライラしてしまう。それがなくなるだけで、心の平安を取り戻せる。
こうして私はヒロインであるマーガレットに協力することになったのだけど……。
「応援すると言っても、何をすればいいのかしら?」
「それは……カミュ第二王子殿下に『あなたのことは嫌いです。大嫌いですから』と言っていただくとか」
「決闘でもないのにそんなことを言ったら、不敬罪になるわ」
私の言葉にマーガレットは「ふけいざい? そんな経済問題になることですか!?」と言い出す。
(王族を好きなのに、不敬罪を知らないなんて……)
呆れつつも不敬罪について簡潔に説明する。
「そんな……。それではどうしたらいいのですか!? カミュ第二王子殿下は、決闘の後でも、『それでも僕は彼女を諦められない』と言っていたんですよ!」
これには「えええっ!」と驚くことになる。
(ううん、違うわ。ここはビックリする必要はないのよ!)
ゲームの強制補正がかかり、カミュ第二王子は何としても私を手に入れたい=婚約したいになっているだけ。ここでヒロインであるマーガレットがカミュ第二王子へ急接近し、告白まですれば、この世界はそれを止めるわけがない。強制補正も解除されるはず。間違いなく、マーガレットとカミュ第二王子は結ばれる。
そう、絶対に二人は上手く行く。
(このゲームの世界はそれを望んでいるはずなのだから!)
そう考えると、別に私がサポートしなくても、マーガレットが告白するだけでいい気がする。
「カミュ第二王子殿下に、改めて気持ちがないと、言うまでもないわ。ザックライン男爵令嬢が告白したら、絶対に上手く行くのだから!」
「!? なぜそう思うのですか!? 何か根拠でもあるのですか……?」
「それは……ここが乙女ゲームの世界で、あなたはヒロインだから。この世界は全力であなたの幸せを願っているの。この世界はあなたのために存在しているのよ。だからカミュ第二王子殿下に告白したら間違いなく上手く行くわ」と答えたくなるが、そういうわけにもいかない。
ならば!
「だってザックライン男爵令嬢、あなた、とても可愛いわ」
「えっ……!」
「そのストロベリーブロンドも、本当に甘い感じで素敵」
「えっ……あ、そ、そうですか……」
「それにその瞳。ローズクォーツみたいよね」
「まあ、そんな……」
「それに小柄だから、男性からしたら守りたくなる存在よ」
「そ、そうなんですね……!」
「何よりも笑顔がいいわ。あなたの笑顔を見ていると、元気になれる」
「……!」
とにかく思いつくままに褒め殺しにしたところ……。
「……私、サンフォード公爵令嬢のこと、誤解していました!」
「いいのよ、そこは気にしないで。それよりもこれだけザックライン男爵令嬢は素晴らしいのよ。告白して上手く行かないわはずがないわ」
「それは……」
そこでマーガレットは考え込む。
これだけ褒められたら、気分良く「そうですね。私、告白してみます!」になると思うのだけど。
だがマーガレットはそのまま五分近く考えに考え、こんなことを言い出す。
「もし告白をして、ダメだったら、それで終わりですよね!?」
「終わり……そんなことはないわ。そもそもザックライン男爵令嬢が振られる事態は起きないと思うもの」
「それでは答えになっていませんよ、サンフォード公爵令嬢! もし告白をしてお断りされたら、もう二度と告白できないし、近寄れなくなります。告白以降、進級まで、自分を振った相手と同じクラスなんて……。耐えられません!」
それを言われてしまうと困る。
なぜならそんなこと、あり得ないからだ。
私は悪役令嬢、そしてあなたはヒロイン。
間違いなく、ヒロインはハッピーエンドになる!
(でも乙女ゲームの件も話せない。「大丈夫です、絶対に上手くいきます」だけでは、あまりにも説得力がないわ)
そこで閃く。
「行動する前に振られることを考えるのは……やめた方がいいのではないかしら? そんなことをしていては、上手くいくことも、上手く行かなくなる気がするわ」
「そんなことはありません! もしもを考えるのは重要なことだと思います。サンフォード公爵令嬢もいつもそうされていますよね!?」
さっきは不敬罪のことを不経済だと思っていたのに。急に賢いオーラが……。
(かくなるうえは、やはりここが乙女ゲームの世界である件、話してしまおうかしら? そもそも乙女ゲームとは何であるか。そこから説明する必要があり、そうなるとかなり長丁場になるけれど……)
その時、私はさらに閃いてしまう。
(あ、こうすればよかったんだわ)
お読みいただき、ありがとうございます!
ギャグ回でした(笑)
続きは明日、公開します~
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