開き直ったわ……
ヒロインであるマーガレットに「殿下のことが好きなのでしょう? それなのにリアスに懸想するなんて、絶対に許さないわ!」と伝えると、彼女はこんなことを言い出した。
「はぁ!? それはこっちのセリフです! そもそもここに呼び出した理由、分かっていますか!?」
そこで片眉をクイッと上げたマーガレットは、怒りの表情でこう続ける。
「サンフォード公爵令嬢は、リアス様と婚約している。それなのにカミュ第二王子殿下の心を捕らえて離さない……それって、大迷惑ですよ! 私は確かに初対面の殿下を見て、素敵だと思いました。しかもクラスメイト。大喜びでアプローチしたわ」
それは乙女ゲームとして正しい流れだった。
「でも殿下は婚約をしている。諦めるしかないと思ったら、婚約は解消になった。これなら私にもチャンスがあると思ったわ。でも違う」
ヒロインは拳を作り、テーブルをバンと叩く。
「殿下は婚約していた時もずっと、サンフォード公爵令嬢を好きだったなんて! しかも殿下を忘れようと好きになったリアス様は、こともあろうにあんたと婚約よ!」
リアス様と呼ばないでと言っているが、興奮しているので自制が効かないようだ。そしてヒロインであるマーガレットが、諦めるしかないと思ったことには驚きだった。
(何があっても諦めないのがヒロインのはずなのに……)
だがしかし、諦めたその理由が「殿下がダメでも別にイケメンを見つけた!」である点はいただけない。しかもそのイケメンがリアスなのだから! まさに聞き捨てならない、だった。
「リアス様がいるのに、騎士団の副団長の息子やクロノス王立アカデミーの学長の嫡男、それにクラスが違う法務大臣の次男まで侍らせて。昼休みはいい男に囲まれて、お楽しみじゃない!」
「別にお楽しみなんかではないわ。みんな幼なじみみたいなもの。友であり、仲間よ。リアス以外は。それにカミュ第二王子殿下とは、一度しか会ったことがないの。どうして私に執着しているのか、私自身が理解できないのよ?」
「そんなふうに言って。カミュ第二王子殿下も含め、リアス様も! 他の令息のことも虜にして! ズルいわ!」
まさかヒロインであるマーガレットの口から「ズルいわ!」なんて言葉が出てくるとは思わなかった。本日二回目の仰天事態ではあるが……。
私自身、リアスのことをリアス様と呼ぶヒロインには、頭に血が上りかけた。だがいろいろイレギュラーな発言をするヒロインことマーガレットにより、冷静になれたのだ。
「……それで、今日ここに私を呼んだのは、文句を言うためなのかしら? 文句を言われたところで、何も変わらないけれど」
するとマーガレットは「違うわよ!」と叫ぶ。
(文句を言う以外に何があるのかしら? まさか謝罪でもさせたいの?)
訝しげにマーガレットを見ると、彼女はこんなことを言い出した。
「リアス様と婚約していて、リアス様のことが好きなのよね?」
「そうです。だからあなたがリアスのことをリアス様と言うのは、とても不快だわ」
「リアス様ってずっと心の中で呼んでいるの。だから仕方ないでしょう?」
(開き直ったわ……。もはやリアス様と呼ぶのを止めるのは、無理な話なのかしら?)
「そ、それで、カミュ第二王子殿下のことはどうなのよ!?」
マーガレットがキレ気味になればなるほど、私は気持ちが落ち着く。
「私はリアスと婚約していて、相思相愛です。カミュ第二王子殿下には、微塵も気持ちがありません」
「……それは本心なのっ!?」
「本心です。だからこそ決闘だってしたわけで、カミュ第二王子殿下は、もう私に手出しは出来ないわ」
それはマーガレットも分かっているようで、一旦黙り込む。
たがすぐに口を開く。
「だったら、手伝ってくださいっ!」
「……手伝う?」
「カミュ第二王子殿下と付き合う気がないなら、殿下が私に振り向いてくれるよう、協力してくれたっていいですよね!」
こんなことを言われるとは思わないので、流石に驚いてしまった。でも理解できた。
(なるほど。ヒロインであるマーガレットのゴールは、攻略対象に選んだカミュ第二王子と結ばれることだった。そこをサポートするのは……間違ったことではないわ)
ヒロインが攻略対象とハッピーエンドを迎えれば、それはゲームクリアとなる。完全に私は悪役令嬢として、お役御免になれるはずだった。
カミュ第二王子は決闘の誓約書で、私に手出ししないことを明示している。もう私に対してどうこうはできないのだ。
(まさに傷心の今、ヒロインであるマーガレットが上手いこと寄り添えば、カミュ第二王子は攻略されるのではないかしら!?)
ということでマーガレットの意外な申し出には、イエスと答えることにした。
「分かったわ、ザックライン男爵令嬢。あなたの恋路を応援します。ただし、リアスのことをリアス様と呼ぶのはやめてちょうだいね。そこを守ってくださるのなら、全力であなたをサポートするわ」
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