昭和あるある!?
決闘の翌日、月曜日。
リアスは疲れをとるということで、毎朝の訓練はお休み。でも他のメンバーはみんな公園にやって来たのだけど……。
「アンバー、あなた今日は剣術やるの?」
「はい。リアスを見たら、僕も多少なりとも剣の腕はあった方がいいと思えました。飲み物はそちらに、タオルここに準備してあります」
執事ではないけれど、執事なアンバー。あれやこれやと世話を焼きつつ、自身も剣術の練習に参加するという。
さらに。
「セーブル、もう一回頼む!」
「もちろん! 自分も望むところだ」
ジャスパーとセーブルは、いつも以上に熱心に練習をしている。
(みんな、昨日のリアスに何だか触発されたみたいね。剣術歴が浅くても、ベテランに勝てると知ってしまったら、俄然やる気もでるというもの)
こうしていつも通りに練習を終え、学院に向かったけれど……。
学院は前世の高校のように、座席が固定されているわけではない。いわばフリーオフィスみたいに、席は自由。でも何となく定位置があり、そこにみんな座る。そして私物を入れるロッカーが各自に割り当てられていた。
でもロッカーと言っても金属製ではない。マホガニー材の大変高級な木製の一人用クローゼットに近い。扉はあり、鍵もかけられるようになっているが、扉の隙間から手紙をいれることは可能だった。
そして今朝、そのロッカーを開けると、封筒が見つかる。宛名はなく、差出人の名前もない。封蝋もないその封筒を開けると、便箋が一枚、そこに書かれていたのは──。
『放課後、中庭の東屋に来るように』というものだった。
(これは……昭和あるあるの上級生や不良に寄る呼び出し!?)
そう思うが、呼び出し文化がこの世界にあるわけではなかった。
(というか、誰の呼び出しなの……?)
封筒に薔薇の花のエンボスがあることから、女性からの手紙に思える。
(でも一体誰なの……?)
封蝋の紋章に見覚えはなかった。
つまり考えても答えは出ない。
「アドリアナ!」
声に振り返ると、そこにはリアスがいた。
昨日の疲れはなく、ブロンドの髪はサラサラで煌めき、その瞳は私を見て輝いている。
「リアス、おはよう! 疲れはとれた?」
私はリアスに尋ねながら呼び出しの封筒は鞄にしまう。
「うん。今朝は寝坊もしたし、すっかり元気だよ。それよりアドリアナに会いたかった!」
「昨日、会っていたのに?」
「うん! 出来ればずっと一緒にいたい」
瞳をうるうるさせるリアスは、朝から甘えん坊モード全開。月曜の朝から甘々なリアスに、悶絶死させられそうになりながら、教室へ向かうことになった。
◇
日中は滞りなく授業を受け、放課後を迎えることになった。
クラスが違うことで、やはりカミュ第二王子やヒロイン、そして攻略対象のメンズたちと会うことなく終わっている。
ただ、B組の生徒がこんな会話をしているのを聞いてしまった。
「A組のカミュ第二王子殿下は、休みの日に剣術の練習中に怪我をされたそうよ。本来は絶対安静らしいのだけど、バカンスシーズン前も休んでいたでしょう? だから今回は無理を押して登校されているそうよ」
「まあ、そうなんですの。お可哀想に。お怪我の具合はどうなのかしら?」
「痛みはあるのではないかしら? でもそこは王族として、威厳を保たれているそうよ。痛いなどと泣き言は言わなかったそうよ」
そこまでしてカミュ第二王子が学院へ登校しているのは……。
悪役令嬢である私と婚約できていなくても、ヒロインに選ばれた攻略対象なのだ。隣国の第二皇女との婚約は解消されている。現在、婚約者なし。これはヒロインにとってまたとないチャンスだった。
(ヒロインの攻略対象として、やはり強制補正が入っているのね。ヒロインとの仲を深めるようにと、怪我人でありながら、学院に来る運命……)
悪役令嬢の私だけど、モブとは思えない、まさにヒーローのようなリアスが守ってくれた。だがカミュ第二王子を守る人なんていない。近衛騎士はいるが、彼らはこの世界でモブに過ぎない。強制補正の前では、無力な存在に過ぎなかった。カミュ第二王子が果たすべく役割から、解放してあげることはできない。
(たとえ国王陛下でもそれは無理なのよね……)
「おーい、みんなー、帰ろうぜ!」
C組のジャスパーが姿を現わし、いつも通りでみんなで下校しようと促す。セーブルもアンバーも。リアスも帰る気で満々でいたが。
私はこう伝えることになる。
「実は先生から呼び出しを食らっているの! 小テストの件かもしれないわ。今日は私のことは気にせず、先に帰って」
この言葉にまず反応したのはリアスだ。非常に寂しそうな表情になり、私をうるうるの瞳で見上げる。
「そんな……僕は今朝、いつもの練習に顔を出していない。授業中はおしゃべりもできないし、放課後はアドリアナとお茶をしながら宿題でも一緒にできるのかと思ったのに……」
「ごめんなさいね、リアス。私もついさっき教師から言われて……」
「……僕、アドリアナの屋敷へ行ってもいい? アドリアナの帰りを待ってもいいかな?」
決闘の時はあんなに凛々しかったのに。今は完全に甘えたい乙女モードになっている。そんな時のリアスはそれはそれで大変愛らしくて愛い!なのだ。
「分かったわ、リアス。公爵邸で待っていて。私の婚約者なのだから、両親はいつでもリアスが来ることは大歓迎だから」
「……良かった! じゃあアドリアナ。君の帰りを待っているよ」
「ええ、分かったわ、リアス」
こうしてリアスだけではなく、ジャスパー、セーブル、アンバーとも別れ、私は中庭の東屋へと向かうことになった。
お読みいただき、ありがとうございます!
久しぶりに、私を呼び出すのは……どなた?な回でしたー。
続きは本日更新します!























































